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5億3,235万円は、誰に届くのか――兵庫県「不登校児童生徒支援員」全校配置を予算書から読む

「不登校対策に5億円」と聞いても、それだけでは何が変わるのか分かりにくい。

兵庫県が令和8年度当初予算に計上したのは、不登校児童生徒支援員の配置を支える事業だ。事業費は5億3,235万円。中学校では従来から進めてきた全校配置を継続し、小学校では「2校に1人」だった支援を全校配置へ拡充するとしている。

このお金は、子どもや保護者の口座に直接振り込まれるものではない。県が市町に補助を出し、学校で子どもに関わる人を配置するためのお金だ。

だから予算書を読むときは、「5億円を使うのか」ではなく、この5億円が、どの学校の、どの子どもに、どんな時間として届くのかを見なければならない。

何に使う予算なのか

兵庫県の資料によると、この事業は校内サポートルームなどで、不登校の児童生徒を支える体制を整えるものだ。

配置の想定は、原則として小中学校に各校1人。勤務時間は週20時間で、教員免許の有無は条件にしていない。地域の人材を登用する想定だという。

ここで大事なのは、県が直接すべての学校に人を雇うわけではない点だ。仕組みは、国・県・市町がそれぞれ3分の1ずつを負担する補助事業である。県の予算がついても、市町が実際に採用し、学校の中でどう役割を置くかによって、子どもに届く支援の姿は変わる。

同じ「全校配置」でも、毎日サポートルームにいるのか、限られた曜日だけ相談を受けるのか。担任やスクールカウンセラーと情報を共有できるのか。そこまで見なければ、予算の効果は判断できない。

届くのは「不登校の子」だけではない

直接の対象は、不登校状態にある、または学校に行きづらさを抱える子どもだろう。ただ、支援員の配置は担任や養護教諭など、学校側の負担にも関わる。

教員が一人で抱え込みやすい状況で、別の大人が子どもの居場所づくりや見守りに関われるなら、相談の入口が一つ増える。そのことは、本人だけでなく、保護者や学級全体にも影響する。

一方で、支援員を置けば不登校が直ちに解消する、と考えるのも違う。不登校の背景は、いじめ、学習のつまずき、心身の不調、家庭環境、人間関係など一人ひとり異なる。支援員は万能な解決策ではなく、学校の中に「担任以外にもつながれる大人」を増やすための土台と見るべきだ。

予算があっても、まだ分からないこと

この予算で確認したいのは、少なくとも次の4点である。

  • 市町ごとに、実際に何人を配置できたのか

  • 週20時間を、どの曜日・どの場所で使うのか

  • 支援を受けた子どもや保護者が、相談先につながれたのか

  • 出席日数だけでは測れない「安心して過ごせる時間」が増えたのか

予算書は、行政が何を課題と見て、お金をどこへ向けたかを示す。だが、予算が成立した時点では成果までは分からない。

小学校での全校配置を掲げた今回の予算は、少なくとも「不登校の増加傾向に対し、学校内の支援体制を広げる」という判断を形にしたものだ。次に必要なのは、各市町と各学校で、その人が本当に子どものそばにいる時間へ変わったかを追うことだろう。

予算は数字で終わらない。学校の中で、困ったときに話せる大人が一人増えるかどうか。その地点までたどって初めて、「誰に届く予算か」が見えてくる。


出典


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