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【読書感想】スローンはもう手遅れだから:ロマンス小説とホラー小説は同じセオリーで作られている

アメリカのロマンス小説を初めて読んだ。

大学に根を張る麻薬組織の売人と、その組織に潜入捜査している刑事、そして売人の〝虜〟にされている女子大生の、暴力的な三角関係の物語───という、ありがちな設定だったけれど、冒頭のスムーズさに引き込まれて読み出し、3日で読了。面白かった。460ページが200ページ相当にしか感じられなかった。

この作品で特筆すべきは、読者の認識のフレームがガッチリ固定されていたことだ。

登場人物たちとの距離(物理的にも感情的にも)だけでなく、作品世界そのものとの距離が、すごく近くになり続けるよう(=視野に大きな死角ができるよう)、作者によって徹底的にコントロールされていた。
映像に例えるなら、情景のロングショットになったり、手元のクローズアップになったり、被写界深度が変化したりせず、『肉眼で見た光景』の『半径1メートル以内』に、常にピントが合い続けている印象だった。50mmの単焦点レンズ一本だけで〝語り通した〟というところか。

フレームと奥行きを統一することで、この小説は『キャラクターの隣りで見ているような読書体験』を提供することに成功している(というか、ロマンス小説というジャンルのセオリーが、きっとそういうものなのだろう。ちなみにホラー小説も同じセオリーで作られる)。

一度この〝レール〟に乗ってしまえば、読者は作品から降りられなくなり、物語の結末へ向かって一直線に興味を加速させる。これを狙ってやってるコリーン・フーヴァーの言語感覚は凄いと思う。

別の作品でニューヨークタイムズのベストセラー1位となり、その年アメリカでもっとも読まれた作家となったのも、分かる気がした。

(Amazonのレビューでリアリティに関して最低評価を下されているけど、この話はこれで全然良い。ロマンス小説として加速することを妨げてしまうディティールは、極力排除して書くのが正しい。また「初めの頃は独特な路線で好きでしたが、だんだん力量が落ちてきたように思います」とあるが、本作は2012年に書き始められ、出版から8年の時間を開けて2024年秋に邦訳されたもので、まさに〝初めの頃〟の作品なのだった)

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