2019 鳥取大学 地域学部 地域学科 地域創造コース 前期日程 小論文 模範解答

問一:
 レルフの「没場所性」とは、どの場所も、外見だけでなく雰囲気まで同じようになり、場所のアイデンティティが弱められた結果、同じような当たり障りのない経験しか与えられなくなることを指す。環境から個性的な場所や意義のある場所がなくなることと、そのような場所の意義を認めない姿勢の両方が、没場所性である。
 これに対して、「場所」とは、人間と自然が一体となって作るものであり、みずからの暮らしにリズムや意義を与え、アイデンティティをもたらす場所を作ろうと試み、そこに暮らすことによって生まれる人間にとって意義深い中心である。筆者も、こうしたレルフの評価を支持している。(277字)
 




問二:
 私の身近な地域では、古くからある個人経営の商店がなくなり、かわりに駐車場やコンビニエンスストアができるということが多く見られる。たとえば、通学路の途中にあった駄菓子屋は、50年以上続いており、私も小学生のころよく通っていた。限られた小遣いを使って、さまざまな駄菓子のなかからその日に買うものを選ぶのが楽しかった記憶がある。私が高校生になったあとも、近くを通りかかると、学校帰りの子供たちが集まっているのを目にすることが多かった。また、商店街にあった豆腐屋も、戦後まもなくに操業を開始し、長年培ってきた製法と技術で、ほかでは味わえないものを提供していた。
 しかし、どちらの店も、経営者の高齢化と跡継ぎの不在によって閉店し、残った土地は駐車場や大手のコンビニチェーンになった。その結果、以前のような放課後の光景は見られなくなり、どこにでもある都市の風景が取って代わった。ここには、没場所性が生じていると言える。
こうした現象には、二つの面があると考えられる。一方で、没場所性が引き起こす場所の均質化は、利便性と安心を与えてくれる。個人経営の商店では、店主の都合で急に休みになることもあるし、品ぞろえもまちまちである。しかし、コンビニは、年中無休で一定の商品を用意しているし、24時間営業であれば、深夜の防犯機能も担っている。
 他方で、こうした均質化した場所では、予想外のことは起こらず、多様性や刺激は経験できない。個人商店ならではの顔の見えるやり取りや世間話は、人々の日々の生活に彩りを与えていたが、没場所化したことによって、そうした経験は失われた。
 このように、没場所性が引き起こすプラスとマイナスの両面を注意深く吟味し、その場所が人間の社会生活にとって持つ意義を考え続けていくべきである。(738字)

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