英語のリスニング力を上げるには読む訓練も大事
リスニング力は「耳」だけの問題ではない
英語で会話をしたい。海外のテレビ番組やラジオ、ポッドキャストをもっと聞き取れるようになりたい。
そう思ったとき、多くの学習者にとって壁になるのがリスニング力です。
学校英語では、読む・書く訓練に比べて、英語を聞く訓練はどうしても少なめになりがちです。そのため、英語学習をある程度続けてきた人でも、「読むことはできるのに、聞き取るのは苦手」という悩みを持つ人は多いのではないでしょうか。
英語が聞き取れないとき、多くの人はまず「もっと英語音声を聞かなければ」と考えます。
もちろん、それは間違いではありません。英語の音に慣れること、発音やイントネーション、音のつながりに慣れることは、リスニング力を伸ばすうえで欠かせません。
ただ、私自身の経験から言うと、リスニング力は「耳」だけの問題ではないと思っています。
なぜなら、「聞き取れない」という状態の中には、音そのものが聞こえていない問題だけでなく、聞こえた英語を処理するスピードの問題も含まれているからです。
洋書を読み慣れてから、リスニング力の向上を感じた
私自身は、2020年頃からKindleで電子書籍を読むようになり、それをきっかけに英語の洋書を本格的に読むようになりました。
それまでは一冊の本を丸ごと英語で読み切る経験はあまりありませんでした。英語を読み慣れていないのことによる、「長文アレルギー」もありました。
また、英文の読み方にもいわゆる「返り読み」のクセが残っていました。
日本語に訳しながら、英文を後ろから戻るように理解する読み方です。受験英語の影響で、この読み方が身についてしまった人は少なくないと思います。
しかし、洋書を読む習慣がついてくると、少しずつ変化がありました。
英文を前から順に理解する感覚が、徐々につかめるようになってきたのです。
一文ごとに日本語へ訳し直すのではなく、英語の語順のまま意味を取っていく。そういう読み方に少しずつ慣れていきました。
そのあと気づいたのは、英語の音声を聞いている時に以前より聞き取りやすくなっていることでした。
日本人学習者の壁になりやすい「返り読み」
日本人の英語学習者にとって、「返り読み」は大きな壁になりやすいと思います。
もちろん、文法を正確に理解するために、英文をじっくり分析することが必要な場面もあります。難解な英文を読むときには、構造を丁寧に確認する作業も大事です。
しかしそれが普段の読み方として固定されてしまうと、英語を英語の順番で理解する力がなかなか育ちません。
特にリスニングでは、この問題がはっきり出ます。
読む場合であれば、分からなければ前の部分に戻ることができます。文の後半を見てから、前半の意味を取り直すこともできます。
しかし、リスニングではそうはいきません。
音声は前から流れてきます。後ろから訳し上げることも、途中で止まって文構造をゆっくり考えることもできません。
だからこそ、英語を頭から順に理解する力が必要になります。
英文を頭から理解できるようになると、聞き取りも変わる
英語の読書を続けていると、英文を語順通りに理解する力が少しずつ鍛えられます。
最初はどうしても時間がかかります。
知らない単語も出てきますし、構文がすぐに取れないこともあります。気がつけば日本語に訳しながら読んでいることもあります。
それでも、ある程度の量を読み続けていると、少しずつ英文に対する反応速度が上がってきます。
英語を見た瞬間に、文の流れを前から追えるようになる。その流れを、日本語に並べ替えずに受け止める感覚が育ってきます。
これはリスニングにも大きく関係します。
リスニングでは、聞こえてきた英語をその場で処理しなければなりません。つまり、英文を前から処理する力と、意味を素早くつかむ力が必要になります。
読む速度が上がるということは、英語を理解する処理速度が上がるということでもあります。
そしてその処理速度は、リスニングにも効いてくるのです。
リスニング力を支えるのは、語彙・構文・処理速度
リスニング力というと、「音を聞き取る力」だけに注目しがちです。
しかし実際には、それだけではありません。
リスニングには、次のような力も必要です。
* 語彙を知っていること
* 構文を瞬時に取れること
* 英文を前から処理できること
* 意味を日本語に戻さず理解すること
* 一定のスピードで英語を処理できること
これらは、音声を聞くだけでなく、読書によってもかなり鍛えられます。
特に洋書を読むことは、語彙や構文に大量に触れる訓練になります。
何度も似た表現に出会い、英文の流れに慣れていく。その積み重ねが、英語を処理する土台を作ってくれます。
そしてその土台があると、リスニングでも「聞こえた英語を理解する」スピードが上がっていきます。
もちろん、読むだけでリスニングが完成するわけではない
とはいえ、読む訓練だけでリスニングが完成するわけではありません。
英語には音声ならではの難しさがあります。
音のつながり、脱落、弱形、イントネーション、話すスピード。こうしたものに慣れるには、実際に英語音声を聞く訓練が必要です。
文字で見れば簡単な英文でも、ネイティブスピーカーが自然なスピードで話すと聞き取れない、ということはよくあります。
ですから、リスニング力を上げるためには、当然ながら聞く訓練も必要です。
ただ、ここで言いたいのは、「聞くだけ」では不十分な場合があるということです。
読む訓練は、聞く訓練を支える土台になります。
英文を前から理解する力。語彙や構文を素早く処理する力。日本語に戻さず英語のまま受け取る力。
こうした力が育つことで、英語音声を聞いたときの理解も楽になっていくのだと思います。
まずは「頭から読める英文」を増やすことから始めたい
では、リスニング力のために読む訓練をするなら、何から始めればよいのでしょうか。
いきなり難しい洋書に挑戦する必要はないと思います。
むしろ、自分にとって少し易しめの英文から始める方がよいでしょう。
興味のある分野の本や記事を選ぶのも大事です。背景知識がある分野であれば、英文の内容も理解しやすくなります。
大切なのは、英文をなるべく頭から順に読んでいくことです。
分からない箇所があっても、すぐに日本語へ訳し直そうとするのではなく、英語の語順のまま意味を追ってみる。
その経験を少しずつ増やしていく。
私自身も、最初からきれいに返り読みをやめられたわけではありません。洋書を読みながら、何度も戻ったり、辞書を引いたりしながら読んでいました。
それでも量をこなしていくうちに、以前よりも英文を前から処理できるようになっていきました。
そしてその変化は、読む力だけでなく、聞く力にもつながっていると感じています。
耳を鍛えるためにも、まずは目で英語を前から処理する。
英語のリスニング力を上げたい人にとって、「読む訓練」は意外と見落とされがちな、しかしかなり重要な方法なのではないかと思います。
あとは「英語の処理能力」が上がることで「あ、以前より英語が聞き取れているかも」と感じられるようになるのを楽しみにしましょう。
