荷物を減らしたら、心まで軽くなった話
朝、ポケットに手を突っ込んだとき。
「これだけでいいんだな」と、ふと思う。
出勤するとき、僕が持ち歩くのはたったふたつ。
iPhoneと

ポータータンカー(キーケース)だけだ。

でも、最初からこのスタイルだったわけじゃない。
今思えば、入職したばかりの頃の僕は、ずいぶんと“守り”に入っていたと思う。
当時の通勤スタイルは、リュックサック。

容量たっぷりのものを背負い、まるで一泊二日の旅行にでも行くかのように、いろんなものを詰め込んでいた。
財布、モバイルバッテリー、ノート、手帳、筆記用具、読みかけの参考書、目薬、ハンドクリーム、飴玉。
それに加えて、「念のため」のガジェット系小物たち。
不安だったのだと思う。
社会人になりたてで、何か忘れ物をしたらどうしよう、急に必要になったら困る、そんな気持ちでどんどん荷物が増えていった。
でも、ある日のことだった。
ふと上司に声をかけられた。
「それ、何が入ってるの?」と、リュックを指さして。
悪気はない軽い問いかけだった。
だけど、僕は少し焦った。
そして、恥ずかしかった。
中身を一つひとつ説明していくうちに、自分でも気づいてしまった。
——あれ?これ、本当に必要か?と。
ほとんどが「使うかもしれないから」と思って入れていたもの。
実際に使った記憶すらないものばかりだった。
そのとき、上司が笑いながら言った。
「必要なものだけで、十分なんだよ。」
たった一言だった。
でも、その言葉が心に刺さった。
次の日から、僕はリュックを開いて荷物を見直した。
一度、全部出して、ゼロから考え直した。
これは本当に今日使うか?
使わないなら、それは今日の僕には必要ない。
そうやって、削ぎ落としていった。
残ったのは、驚くほど少ない持ち物だった。
iPhoneと、ポータータンカー。
iPhoneについては、以前noteでも書いたことがある。
いまやスマホは、単なる連絡手段ではない。
キャッシュカードも、クレジットカードも、各種キャッシュレス決済も、すべてこの一台に収まっている。
財布は、もはや不要になった。
職場のコンビニも完全キャッシュレスに対応している。
小銭を取り出す手間も、レジでまごつくこともない。
iPhoneをかざすだけで、すべてが完結する。
とはいえ、万が一のために、ポータータンカーも持っている。
中には、鍵、免許証、社員証、小銭だけ。
本当にこれだけ。
それでも、出先で困ったことはほとんどない。
むしろ、荷物を持たないことで、忘れ物のリスクも激減した。
昔は「もしものために」たくさんの物を持っていたけれど、実際に「もしも」が起きることなんて、そうそうない。
そして、たとえ「もしも」が起きても、大抵のことはどうにかなる。
荷物を減らすことで、驚くほど心が軽くなった。
朝の支度も、圧倒的に速くなった。
出かける前に「何を持って行こう」と悩むこともない。
ポケットにiPhone。
ポータータンカーを手にして。
玄関を開けて、そのまま外へ出る。
それだけでいい。
たったふたつの持ち物で、生きていけるんだという感覚は、僕にとってちょっとした革命だった。
身軽になると、心も軽くなる。
心が軽くなると、毎日が少しだけ楽しくなる。
あの日、リュックの中身を笑いながら尋ねてくれた上司には、今でも少し感謝している。
そして、これからもきっと変わらない。
僕は、必要なものだけを持って、生きていく。
