癖 #シロクマ文芸部
変わる時のその変な癖を直せ、とかあちゃんの声が飛ぶ。
「変わり身のたんびにソレかい?
そんな忍いやしない!」
たしなめながらもかあちゃんは修練の相手をしてくれる。
オレは術をかける一瞬、小首を傾げてしまう。
その癖がもうすぐ十になるというのになおらない。
かあちゃんの変わり身の術は
見事だ。なんたって里長の折り紙付きさ。
その辺の丸太と変わったかと思えば今日なんか
きれいな着物だった。
オレは丸太とすらうまく変われなくて、
うっかりするとかあちゃんのクナイが耳をかすめる。
「おまえのその癖でまるわかりだよ、しょうがないねぇ。」
そう言ってオレの頭をくしゃくしゃっと撫でる。
修練では容赦のないくノ一だけど、
そんなときのかあちゃんはただのかあちゃんだ。
その日の修練のしめくくりは「変わり身」だった。
かあちゃんはにっと笑いオレの癖をからかうように真似をした。
そしてあっという間に白いうさぎと入れ替わり、
それっきり帰ってこなかった。
峠の向こうで続いていたひどい戦が終わったらしい。
里は守られたが、老人と子供ばかりになってしまった。
それからだ、
オレが変わり身の修練をするたんびに
白うさぎがぴょこんと現れるようになったのは。
妙に人懐っこいそいつには
オレを見ると小首をかしげる変な癖がある。
#シロクマ文芸部 お題「変わる時」
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