「主体性のある新人」は、どうすれば育つのか?――「エージェンシー」を精神論にしない新人育成の設計
「もっと自分から質問してほしい」
「指示を待つのではなく、自分で考えて動いてほしい」
「研修が終わっても、自分で学び続けてほしい」
新人育成に関わっていると、こう感じる場面があります。
そして、新人が動かなければ、
「主体性がない」
「受け身である」
「成長意欲が低い」
と評価したくなります。
しかし、本当に新人本人だけの問題なのでしょうか。
研修では、講師が目標を決める。
講師が学ぶ内容を決める。
講師が進め方を決める。
講師が正解を示す。
講師が評価する。
新人は、説明を聞き、指示された問題に答え、決められた手順を覚える。
このような環境で学んできた新人に対して、現場へ出た瞬間に、
「今日から主体的に動いてください」
と求めても、簡単には切り替わりません。
もしかすると、新人に主体性がないのではなく、主体性を発揮する機会が研修の中に設計されていなかったのかもしれません。
今回の記事では、OECDの「ラーニング・コンパス2030」で重視されているエージェンシーという考え方を、新人育成や企業研修へ置き換えて考えます。
この記事は、こんな方に向けて書いています
この記事は、次のような悩みを持つ方に向けた内容です。
* 新人が指示を待つばかりで、自分から動いてくれない
* 「分からないことは質問して」と伝えても、質問が出てこない
* 研修中はできていたのに、現場では自分で判断できない
* 新人へどこまで任せ、どこまで支援すべきか迷っている
* 主体性を求めることが、精神論や本人への責任転嫁になっていないか不安がある
* 講師、OJT担当者、現場管理者の関わり方を見直したい
* AI時代に必要な「自分で考え、選び、行動する力」を育てたい
特に、新人育成担当者、研修講師、OJT担当者、現場リーダー、管理職の方に読んでいただきたい記事です。
新人の主体性を本人の性格や意欲だけで判断するのではなく、育成する側がどのような環境と機会を設計できるかという視点から整理します。
この記事の知識を、どのように活かせるのか
この記事を読むことで、「もっと主体的に動いてほしい」という曖昧な要望を、研修やOJTで実行できる具体的な設計へ変えられます。
例えば、現在の研修に次のような改善を加えられるようになります。
新人が学ぶ目的を理解できる伝え方へ変える
新人自身が小さな目標を選ぶ機会をつくる
答えだけでなく、判断した理由を確認する
安全に選び、試し、失敗できる演習を設計する
一人で抱え込まず、適切に支援を求める力を育てる
振り返りを感想で終わらせず、次の行動へつなげる
研修とOJTで、新人へのメッセージを一致させる
記事の後半では、現在使っている研修を見直せるチェック項目や、明日から取り入れられる具体的な方法も紹介します。
エージェンシーという言葉を知識として理解するだけではなく、新人が自分で考え、選択し、行動を修正できる育成環境をつくるための実践知識として活用していただけます。
エージェンシーとは何か
OECDは学習者のエージェンシーを、自分で目標を設定し、振り返り、変化を起こすために責任を持って行動する力として説明しています。
誰かに動かされるだけではなく、自分から働きかける。
誰かに形を決められるだけではなく、自分も形づくる側になる。
他人が決めた選択をそのまま受け入れるのではなく、責任を持って判断する。
これがエージェンシーの中心にある考え方です。
ただし、ここで大切な注意点があります。
エージェンシーは、
* 好きなことだけを選ばせること
* 本人へすべて任せること
* 自由に発言させること
* 一人で何でもできるようにすること
ではありません。
OECDの資料でも、エージェンシーは単なる自律性、発言権、選択肢の言い換えではなく、固定された性格特性でもないと説明されています。
周囲の支援によって育てられる、学習可能なものです。
つまり、
「主体性がある人と、ない人がいる」
と人を分類するのではなく、
どのような環境であれば、その人が自分で考え、選び、行動しやすくなるのか
を考える必要があります。
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