なぜ私はUPI(Universal Power Interface)を考えているのか
エネルギー業界では、いつも同じことが繰り返されている。
EVにはEVのコネクタ。
住宅用蓄電池には住宅用蓄電池のコネクタ。
可搬電源には可搬電源のコネクタ。
建設機械や農機、ロボットにも、それぞれ独自のコネクタがある。
メーカーが違えば、電圧も通信方式も違う。
その結果、「つながらない」という問題が、何十年も続いている。
USBが普及する前も同じだった。
携帯電話メーカーごとに充電器が違い、
デジカメもPDAも、それぞれ専用ケーブルだった。
USBが変えたのは、コネクタだけではない。
「誰でもつながる」という考え方だった。インターネットも同じである。
LANケーブルを挿せば、メーカーが違っても通信できる。
だから世界中につながった。
エネルギーは、まだそこまで到達していない。
EVメーカーはEVだけを考える。
住宅メーカーは住宅だけを考える。
蓄電池メーカーは蓄電池だけを考える。
結果として、「部分最適」ばかりが増えていく。
私が考えているUPI(Universal Power Interface)は、
コネクタを統一したいわけではない。
本当に統一したいのは、
「電気を安全につなぐための共通言語」
である。
電圧が違ってもいい。容量が違ってもいい。メーカーが違ってもいい。
重要なのは、
「私は48Vです。」
「私は150Vです。」
「今は充電してください。」
「今は放電できます。」
「最大20Aです。」
このような情報を、お互いが理解できることである。
つまり、USBがデータを運ぶ共通言語なら、
UPIはエネルギーを運ぶ共通言語になる。
もちろん、これは一社ではできない。
自動車メーカー、
住宅メーカー、
電力会社、
電機メーカー、
建設機械メーカー。
多くの企業が参加して初めて意味を持つ。
だから私は、「UPIを自社規格にしたい」
とは考えていない。むしろ逆である。できるだけオープンにし、
誰でも利用できる形を目指したい。
エネルギーの世界は、これからEVだけではなく、
・住宅用蓄電池
・可搬電源
・ロボット
・建設機械
・農業機械
・船舶
・災害用電源
など、あらゆるものが「電池」で動く時代になる。
そう考えると、今必要なのは新しい蓄電池ではない
それらを"つなぐ仕組み"である。
私は、その一つの答えがUPIだと考えている。
UPIが目指すものは「電池をつなぐこと」ではない
UPI(Universal Power Interface)が実現すると、最初に変わるのは、自動車と可搬式バッテリーの関係である。
多くの人は、「電池をつなげるだけ」と考えるかもしれない。しかし、本当の価値は、その先にある。
例えば、自動車のジャンプスタート。
現在でもバッテリー上がりは珍しくないが、そのたびにボンネットを開け、重いブースターケーブルを接続する。これは自動車が誕生してから100年以上ほとんど変わっていないユーザーインターフェース(UI)である。
UPIがあれば、車内や車体側の共通コネクタへ可搬式バッテリーを接続するだけで、安全にジャンプスタートができるようになる。
ほんの少し便利になるだけと思うかもしれないが、実際には「100年間変わらなかった不便」を変えることになる。
さらに、その可搬式バッテリーが約1kWh程度あれば、普段は車に積んでおき、停電時には家庭へ持ち込んで照明や通信機器、冷蔵庫の一部などへ電力を供給できる。
つまり、一台のバッテリーが「モビリティ」と「防災」の両方の役割を果たすようになる。
さらに、UPIによって電池の利用履歴や充放電履歴を共通に管理できるようになると、新しい経済の仕組みも生まれる。
現在、多くの会社で支給される通勤費は、ガソリン代や公共交通機関の運賃が中心である。
しかしEVでは、充電した場所や時間、電力量がすべてデータとして残る。
さらに車両の利用履歴や走行距離と組み合わせれば、電気代だけではなく、メンテナンス費用やバッテリーの減価償却まで含めた「実際の利用コスト」をより合理的に算出できる可能性がある。
地方では、自動車はぜいたく品ではなく生活インフラである。
もし車両データを活用して、企業が合理的に通勤コストを補助できるようになれば、地方で働く人の負担軽減につながり、都市部との経済格差を縮める一つの手段にもなり得る。
将来的には、企業が福利厚生としてEVを貸与し、その利用データをもとに通勤費や維持費を適切に精算するような仕組みも考えられる。
さらに未来を見ると、充電そのものが「診断の時間」になる。
現在の充電器は、電気を流すことが主な役割である。
しかしUPIのような共通インターフェースが整えば、充電中に車両側の自己診断を実行し、バッテリーや車両状態を自動車メーカーが継続的に把握できるようになる。
すると、異常の早期発見や予防保全が進み、「まだ交換しなくても大丈夫」「この部品だけ先に交換しましょう」といった提案ができるようになる。
将来的には、こうした診断データを活用して、車検や定期点検のあり方そのものを見直すことも視野に入るだろう。
私は以前から、「充電器は自動車メーカーがもっと主体的に取り組むべきだ」と考えている。
その理由は単純である。
ユーザーが本当に知りたいのは、「電気料金が何円安くなるか」ではない。
「このクルマはあと何年安心して乗れるのか。」
こちらの方が圧倒的に関心が高い。
その安心を保証できるのは、充電器メーカーではない。
自動車を設計し、品質を保証している自動車メーカーだからこそ提供できる価値なのである。
実際に、Teslaが高く評価されている理由の一つも、車両・充電・ソフトウェアを一体として捉え、継続的な診断やアップデートを提供している点にある。
私は、UPIを単なる新しいコネクタにしたいとは思っていない。
目指しているのは、「電気をつなぐ規格」ではなく、「サービスをつなぐ共通基盤」である。
電気が流れるだけでは価値は生まれない。
その上に、メンテナンス、防災、通勤、保険、カーシェア、エネルギーマネジメントなど、さまざまなサービスが育っていく。
日本は、自動車産業でも電機産業でも世界をリードしてきた国である。
だからこそ、次の時代は「クルマをつくる国」だけではなく、「電池とサービスをつなぐ文化をつくる国」を目指すべきではないか。
私は、その第一歩がUPIになると考えている。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします!頂いたチップでもっといい記事を書くための情報収集(本・オンライン課金)に使わせて頂きます!