縦縞の白シャツの話
この春の良品週間の通販で、私は襟なしの白地にグレーの縦ストライプのシャツを買った。
今流行りのシアー素材の薄手のシャツで、中に同じく良品週間で買った長袖Tシャツを着たら、暖かさがちょうどよさそうだった。
届いてすぐに着てみると、まあまあ、うん、それなりに、似合っているんじゃないかと思った。
特に、丸みのあるシルエットのデニムと合わせてみると違和感がない。
デニムの裾を少し巻いて、色の鮮やかな靴下を合わせたらきっと可愛い。
胸元にブローチも付けてみたらいいかもしれない。
価格的にも高くはないし、手軽に着れるし、早く身に着けて出かけてみたくなった。
テンションが上がる。
試着できなかったわりには、いい買い物をしたと思った。
たとえ、今期購入した縦縞の白シャツがこれで2着になったとしても。
良品週間の通販で注文した数日後、私はイオンモールに入っている衣料品店でウィンドウショッピングをしていた。
春の服というのは何を着ていいか毎年分からない。
羽織れば暑いし脱げば寒い。
重ね着すればいいのだろうけど、ズボラでおしゃれセンス皆無の私は、できればカットソー一枚でなんとか様になるようにしたかった。
先日無印でシャツを注文したけれど、それ一枚では心もとない。
というわけで、久しぶりに来たお気に入りのお店で、あれこれ見繕っていたわけだ。
残念ながらカットソーは好みに合うものがなかった。
というより、流行りの服は重ね着を前提として作られているようで、着こなせる自信がなかった。
私はおしゃれな方ではないし、カジュアルな服のほうが得意だ。
そこで、ふと気になったのは羽織もの。
色展開は2、3色だったと思う。
リネンの白いシャツ。
それも、襟なしの、細い紺の縦ストライプのもの。
とりあえず手に取って鏡の前で合わせてみる。
ふむ。悪くはなさそう。
店員さんに声をかけて、試着させてもらう。
うん。やっぱり悪くない。
………………買っちゃう?
しかしここで頭に浮かんだのは、良品週間で注文したシアーシャツのことだ。
もうすぐあれが届くのに、今ここで似たような服を買って無駄にはならないのか?
いやでもあれが届くまで半月くらいかかるし、その間私は何を着ればいいのか?
というか、試着しないで買ったものが似合う確証はないし。
もし似合わなかったら?
一枚も買い足さずに、この春を乗り切れる自信は???
……。
…………。
………………。
私はシャツの入った袋を下げて店を出ていた。
確かカットソーを買おうと思って店に入ったのに、先日注文したのとさほど変わらない縦縞白シャツを手にして帰ろうとしている。
自分の判断に呆れてしまい、見えないところでふっと自嘲する。
私、なにやってんだろう。
なぜなら家には、数年前に買った、縦縞リネンの襟付き白シャツがもう一枚あるのだから。
10年くらい前、東京グラフィティという雑誌をよく読んでいた。
ヴィレッジヴァンガードや大きな書店で買える雑誌で、原宿的なカルチャーや流行のネット記事なんかが載っていて、田舎者の私には光って見えていた。
その中に、何の特集だったか「白シャツは何枚持っていてもいい」という一文があった。
白シャツはいろんなメーカーが出していて、どれも似ているようでいて微妙にデザインが違う。肌触りも異なるし、似合う服だって違う。
けれどシンプルゆえに着やすいし、何枚あっても困らない、ということらしかった。
さすが都会のおしゃれ番長たちは言うことが違う。
私はさっそく真似してみようと、まずユニクロで一着買ってみた。
しかし私はその一着さえまったく着こなせなかった。
試着室で見たときはまあまあだと思ったのに、家に帰ると手持ちの服のどれにも似合わない。
自分のセンスのなさに絶望した。
えっ、これ、どうやって着るのが正しいやつ???
手持ちのスキニーに合わせても芋っぽくなるのはなぜなんだい???
白いシャツは難しい。
それが私の出した結論だった。
しかし今や私は、3着もの白い縦縞シャツを所持している。
それらを希望観測的に見ると、おそらく、たぶん、着こなせている。
私に似合うのは白シャツではなく、縦縞シャツだったらしい。
おお。
自分に似合う服が見つかるって嬉しいんだな。
新しい縦縞シャツを下ろし、るんるんで出かけようとした私に放った母のひと言。
「あんたそれ、この前着てたのと似てない?」
私のテンションが上がるので、これでいいことにしてください。
