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まだ宙ぶらりんの自由

09/15
 亡き母の誕生日。私は明日この家を出る。1日違いではあるけれど、もしかしたらお母さんも協力してくれたの? と考えて、まさか、なんて思いながらも涙が出て来た。

09/16
 仮住まい住居へと引っ越し完了。今日は継父のショートステイの日で出かけたと同時に2階に置いていた荷物を取って来て、1階で詰めた。約束の時間が来てNPOの担当の方が来て下さり、ふたりで結構な荷物になってしまった旅行鞄やとにかく物が入ればいい、と100均で選んだ大型の紙袋やリュックなどを車に乗せた。きっと後で忘れ物とか気づくだろうな、と思いながらいざ用意して下さった民間シェルターの1室へ。
 最近リフォームしたばかりというその部屋は2LDKで私ひとりが住むのにいいのか!? と思うほど広い。ただその分電気のスイッチがそこかしこにあり混乱。居間をつけようとして玄関、とかトイレから出た瞬間すぐのドアにぶつかったり(いやこれは私がドジなせいで)、とりあえず荷ほどきをと思っても広い割に収納場所が少ない(失礼か)ので端っこに置いておき、衣類やタオル、ゴミ袋に食器に洗剤などちょこちょこ出した。しかしエアコンが付いていないので暑い暑い。顔が真っ赤になっていた。

 それから市役所に行って転居申請をした。疲れているけどまだ実感が湧かない。お風呂に入ってすっきりしてもまだこれは夢なんじゃないかと思う。明日はとうとう継父のいる施設へ赴き、私が既に家を出たことを伝えに行く。どうか上手く行きますように。もう今は怒ったり罪悪感的な情に溺れないよう正直に話をしたい。……さて! そんな訳で新居(仮)だ! 乾杯します!🍻

09/17
 時間よりかなり早めに姉が来てくれて継父のいる施設へ。緊張した。けれどケアマネさんや施設内での継父の行動をよく見て下さっている職員さん、そして姉が同席していたのでスムーズに進行。最初は話をするために借りた一室にご機嫌そうに「お嬢さん」とか言って入って来たので胸が痛んだ。
 けれど、結果的に言うことはたったひとつで。しかももう後日談になる。私が話すまでもなく、姉やすべてを知っているケアマネさんが話を通してくれた。施設側は継父の今後をきちんとケアして行く意向だと丁寧に伝え、私はひとりでも生活していけることを伝えた(私側は詳細を話してはならない)。大体話し終えると継父は施設で配られるクロスワードパズルのようなゲームが印刷された紙と鉛筆をポケットに忍ばせていたらしく途中から何かを書いていた。ほぼ意味はなかったと思う。
 そして「20年以上、お世話になりました」と言った。ついクセで「またね」と反射的に口から出てしまったがいいだろう。最後は施設の玄関まで見送ってくれてバイバイと手を振った。

 今は少し感傷的になっている。これを書いている時間が夕方というせいもある。けれどもしふたりきりで話なんてしたら母の遺骨やら何やらでまともに話せなかったと思う。第三者が入ってこそ冷静さを保てたやりとりになったと思うのだ。その分、継父はかなり言いたいことを抑えただろう。もちろんプライドがあるから弱音も吐きたくないだろうし私を責めるのもとどまったのだと思う。でもきっとそれでいいんだよ。言いたいことを全て話しても幸せにならないことはある。
 特に母が亡くなってから血の繋がりはなくてもかろうじて「親子」だった関係性を継父自ら壊してしまったのだ。当然そのことは私にとって傷として残る。けれど内面はどう考えているのか判らないけれど外見だけでも取り繕って静かに私を送り出してくれたことでもう悩まずに済む。継父の前からいなくなったことでぐるぐる思考する悩みから抜け出すことができる。私は今自由になったばかりの宙ぶらりんでいる。けれど継父だってこれから私に気を遣わずに好きなことができるんだよ。高齢だからもちろん制限はあるけれどそれでも自由に自分の人生を生きて行ったらいいと思う。きっと色んな道がある。

09/18
 目覚ましアラームが鳴ったのと同時に電話が来たらしく、設定していた音楽間違えたか? と思いながら止めると電話だったらしい。電話番号が市役所だったので慌てて折り返した。今日の午前中はずっと引っ越し関連の用事。備え付けの洗濯機を回そうとするも洗剤を入れる場所が見つからずスマホで調べた。何とかなるもんだねえ。昨日市役所の方と話していて、年が近い方なので色々と話が横道に逸れたのを思い出した。私たちの世代ってポケベルからガラケーからネット黎明期、スマホってすべて網羅してるから最強ですよ! と言っていた。私もそう思う。

 引き続き、荷物を整理していると必要だと思って持って来たものでもいざ確認してみると案外要らない物も見つけた。荷ほどき、というよりも荷を減らしたくなって来た。少しでも身軽に。自分らしさと本当に自分の「好き」を心から思い出したい。と、かっこつけて書いてみたものの引っ越し3日目にしてようやく米を購入したのに炊飯器のコードを引っ張ると思いの外短くて床置きになった。

09/19
 今日は午後からの用事がひとつあるだけなので、掃除洗濯の後ゆっくりしようと思ったのに昨夜どうにも眠れず今朝もぼんやり気味。眠れないからと音楽をかけてみるも、ここは戸建てじゃなかった! と思い出し慌てて小さくしたらほぼ聞こえなくなったのでやめて軽めの安定剤を服用した。
 そう言えば昨日さっそく継父から電話があったが出なかった。留守録にメッセージが入っていて文字起こしを読むとどうにも意味が判らない。普段からもにゃもにゃ喋るタイプだったので文字起こしの再現化が難しいのだろう。でも「俺買い物行って郭」は解読できた。ケアマネさんによると、既に介護ヘルパーさんと契約したそうだ。やらなければならない状況にぶち込まれたらやるしかないよね。

 用事を済ませる前にあまりにも眠かったので少しだけ横になると、やたらと登場人物の多い夢を見た。夢の中でも慌てていた。そこから用事を済ませ、軽く晩ごはんを作って食べた。引っ越してからあまり食欲がなく今の所、引っ越し祝い以外にビールも飲んでいない。いいことなんだろうか。慣れたらまた少し変化するかも。いや、しかしあまりビールを買う余裕がないのも確かだ。物価高ってやあねえ。

09/20
 今日は土曜日だし市役所の方も休みだから本当に何もない日(の筈)。今朝も就寝時間に対して早く目が醒めてしまってぼんやりコーヒーを飲んだ。この部屋にはある程度生活していける家電が揃っているのでありがたいと思いつつ、ケトルみたいなのがないと不便と言えば不便。鍋はステンレス製の16cmのミルクパンがひとつだけ置いてあるのでそれでお湯を沸かしてコーヒーを入れるのだが、毎度毎度自分でもコツを掴めよ、と思うくらいだーっと垂れてしまう。でも一瞬のことだからまあいいか、とにかくコーヒー飲もう、という感じです。
 周囲は閑静な住宅街(山や坂が多いが)なのでカラスとか鳥の声だけでほぼ音がしない。夕方になるとお隣さんや下の階のひとの生活音や料理の良い匂いが漂って来る。ただ割と皆さん、眠る時間が早い。10時を過ぎる頃には物音がしなくなる。私は宵っ張りなので午前になってから眠るけどたまに物を落として盛大な音を立てることもあり、若干焦る。

 ただ、とても守られている感覚はある。ドアスコープはないし平日は毎日各部屋の外玄関部についている照明の点検や階段、草木のチェックに人が入る。たまに子供たちの声もする。色んな事情を抱えたひとが住むアパートなので、出かけるのは自由だが一泊する時は絶対に連絡を入れて下さい、と言われていて、もし有事があった際に連絡する相手以外には絶対住所を教えてはならないという取り決めもある。

09/21
 雨の日曜日。意識的に休もうと決めた日。昨夜12時になったらすぐにお布団に潜り込み、昼の12時までぐっすり。良く寝た~。越して来て初めてぐっすり眠れた。夢の中で今の住所からスーパーに行こうとしていて現実と一緒で迷っている私がいた。そこに継父が登場。「そんなに迷うんなら俺も一緒に行く」というので「いや、絶対来なくていい!」と断って部屋を出ていた。うん、夢の中でも関係性は同じだった(笑)
 なぜか夢の中の私は上白石萌歌ちゃんになっていて、辿り着いたお店で猫のごはんを購入した。猫のと言ってもサラダみたいなやつの牛肉巻きといった豪華な物で猫のお墓にお供えに行くらしかった。お墓でも迷子になったが赤いリボンをつけた女の子に「猫の所ならこっち」と案内してもらい、懐かしき黒猫の写真が飾られた場所に着いた。写真の黒猫は目が吊り上がっていて細かった。多分個人的に一番亡くなり方を悔やんでいるななちゃんだろう。その写真の中のななちゃんは瞬きして挨拶をしてくれた。その瞬間私は、会いたかったよ、会いたかったよ、と言って号泣した。そしてごはんを一旦供え、帰りは私が食べながら現在の部屋へと戻った。もう既に成仏していると思うんだけど夢の中で私を慰めてくれたのかな。今思い出しても涙ぐんでしまう。不思議で、ありがたい優しい夢だった。

 何となくだけれど、転居後ひとりになってから喜怒哀楽が少し復活して来ている気がする。以前の家では継父に隙を見せたくなくて意識的に仏頂面をしていた。わざとムスッとした顔を作っていたので顎の肉が増えた(笑)もうそんなふうに敢えて自分を不細工にするような表情を作ることをしなくていい。これからは笑顔を増やしていきたい。世界は広い。


今週の日記エッセイはいかがでしたでしょうか。
やっと引っ越しました。まだ仮ではありますがなるべく早く本当の新居を探したいです。絶対外せない条件はエアコン付き。すぐのぼせやすい体質というのと、もうこれからの日本の気象では手放せないものだと思います。

※トップ画像はPixabayより
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