【ちび創作大賞・テーマ「風」】「風」と聞いて、私が真っ先に思い浮かべたのは、この一曲だった。
ちび創作大賞のテーマは「風」。
歌好きの私が、このテーマを見て真っ先に頭に流れた曲。
それが、つじあやのさんの**『風になる』**である。
映画『猫の恩返し』の主題歌。
優しい歌声。
爽やかなメロディー。
春になったら無条件で聴きたくなる名曲だ。
しかし私は、ある重大な事実に気付いてしまった。
歌詞に猫が一匹も出てこない。
いや、待て。
映画は猫だらけである。
主人公。
猫。
猫王。
猫の国。
バロン。
ムタ。
もう猫密度120%である。
なのに歌詞を読んでも……
猫。
ゼロ。
「にゃー」すらない。
これはもう、
猫界から正式に抗議が来てもおかしくないレベルである。
さらに追い打ちをかける事実。
曲名は**『風になる』**。
歌詞を最後まで読んだ。
もう一回読んだ。
老眼を疑って三回読んだ。
「風になる」
も書いてない。
え?
タイトルって歌詞に出てくるものじゃないの?
こうなると職業病である。
原因究明を始める。
歌詞を分解。
分析。
考察。
昔、機械の設計をやっていた人間は、こういう時だけ無駄に本気になる。
すると見えてきた。
春風。
青空。
坂道。
自転車。
走り出す。
なるほど。
「風になる」とは書いていない。
でも、
風を感じる景色は、これでもかというほど描かれている。
つまり。
この曲は、
「私は風になります!」
と宣言する歌ではない。
聴いている人が、勝手に風になってしまう歌なのである。
……たぶん。
ここまで考えて、ようやく映画ともつながった。
『猫の恩返し』は、猫の映画だと思っていた。
でも、本当に描いていたのは主人公ハルの心だった。
人の顔色ばかり気にしていた女の子が、
最後は自分の意思で前へ進む。
その姿は、風のように軽やかだった。
だから猫を歌わなくても成立する。
いや、むしろ猫を歌ったら、
♪ にゃん にゃん にゃん ♪
で終わってしまう。
それでは名曲にならない。
……たぶん。

創作大賞のテーマは「風」。
私は最初、「風なんて目に見えないし難しいな」と思っていた。
でも『風になる』を考えていて気付いた。
風は見えない。
だけど、木は揺れる。
髪も揺れる。
カーテンも揺れる。
そして、ときどき人の心まで揺らす。
だから風は、見えなくても存在が分かる。
いい作品も同じなのかもしれない。
読み終えたあと、心が少し動いたなら。
その作品は
