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ルイの神話的起源譚《満点の呪い》第9話 「轟沈の高石、完全転落!待ち構える0点の嵐」

一体なぜ俺はここにいるんだ?ここは俺のステージじゃない。

事情徴収室にいる高石は、どこか現実味のない気分で壁を睨んでいた。その様子を監視カメラが捉えている。もしかして俺は…?ハマった…?????
まずいコンボが俺に炸裂しようとしているのか?????
えっ?だ、だってそんな、俺は、赤城瑠衣を倒しに…、ええっ???

まさかそんな、まさかそんな、俺は、

俺は、画面端にいるのかっ!!??

ま、ま、ま、ま、待ってくれ。話が違う話が違う、話が違う!!!
そうだ。これはいわゆる、バグだ。そうだろう。

「高石さん。あなたは何故、赤城瑠衣君に執着しているのですか???」
「しゅーちゃく…??…しゅうぅちゃく???…しゅうぅぅちゃく???」
あ、あれえ?言葉の意味が、解らねえぞ。ええと。ええと。
汗が滝の様に流れ落ちる。机の木目がうねうねと動き回る。

「……あれ?」と小さく呟く高石を見て、警察官は、高石の精神状態が尋常ではないと判断した。そして、警察官の手元の手帳のメモ欄に走るのは「異常」の二文字。

「わかりました。はい。なるほどね。」勝手に納得を深める警察官。
そして淡々と、高石の包囲網が狭まってゆく。もはや、彼の状況は、画面端で、ガードすれば投げられ、ガードを解けばボコ殴りにされる、初心者プレイヤーさながらの無惨な様相を呈していた。

「ち、ち、違う。俺は、ハイパーコンボを、そうだ、コントローラーを貸せ…。あれがあれば、俺は勝てるんだ…ワンコイン入れてくれ、コンティニューするんだ。」
高石は不穏な状態に陥っていた。

「大丈夫です。もうすぐあなたを助けるチームが到着しますから。」

そして到着する医療チーム。屈強な男たちが、4人がかりで、見苦しくもがく高石を引きずってゆく。

「俺は、教師だぞ…??へぇっ…???」声が裏返る。眼球がびくびくと動く。挙動不審この上なく、呼吸が荒々しくなる。「はっ、はあぁぁあ。あ。ああ。」体中がわなわなと震えている。だらしなく、肩が露出した、上着が、見る影もなく乱れている。足元には、学級名簿が落ちて、踏みしだかれている。

ずるずると廊下を引きずられてゆく高石は、廊下の角を曲がり、そのひっくり返った声だけを残して、姿を消した。

そして、川口警察署にたどり着いたヨリ子は、 泣きながら夫のために、接近禁止に関する誓約書へ判を押した。 夫は赤城家に対してドアを蹴る、大声を上げるなどの迷惑行為を繰り返し、 周辺住民からもストーカー行為として通報されていた。

初犯であり、精神状態の異常も認められたため罪には問われなかったものの、 ヨリ子にとっては耐えがたいほど恥ずかしく、涙が止まらなかった。

このあと夫は医療機関へ移送され、 ○○精神病院で本格的な措置入院となる見込みだった。

「ううっ……夫は、そんなにストレスを抱えていたんですか……? 私、気づいてあげられませんでした。子どもも幼くて……余裕もなくて……。 赤城さんのお宅にも、どう顔向けしたらいいのか……。」

意気消沈するヨリ子だったが、落ち込んでいる暇はなかった。

あらゆる社会的なつながりのある場所から、次々と職員が訪れ、 誰もが深刻な状況を強調した。 校長や教頭は逆上し、 「学校の顔に泥を塗った」と激しく責め立てた。 問い合わせなのか抗議なのか、ひっきりなしに鳴り続ける電話。 泣き出す一人息子。

ヨリ子は心が壊れそうになりながら、 夫の残した家を、なんとか守ろうと気を張っていた。

そして、家の時計だけが、 何事もなかったかのように、淡々と時を刻んでいた。

個室で、拘束衣を着せられ、ベッドに固定された高石は、 点滴を受けながら、静かに投薬治療を続けていた。 精神の安定を図り、危険行為を防ぐためには、 もはや避けられない処置だった。

――ここはどこだ。

彼の視界に入ってくるものは、 白い壁と、ひじきのように穴の並んだマテリアルの天井。 時計の音だけが、乾いた空気の中で規則正しく響いている。

誰も彼を恐れない。 誰も彼を必要としない。

ゲームの音がない。 自分の名前を呼ぶ声もない。

徹底的に静かな空間の中、 自分のうめき声だけが、薄い壁に吸い込まれていく。

そして、高石が二度と教壇というステージに立つことはなかった。 彼があざけった生徒たち、そしてその家族は、 彼に厳しい採点を下したのである。

――彼は、0点教師と呼ばれるようになっていた。 彼のしてきたことそのものが、 特大のブーメランとなって、静かに彼へ突き刺さったのだった。

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