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アメリカ帰りの血液内科医、手作り患者会で紡いだ12年の絆 

アメリカ留学から帰国し、一人で血液内科を立ち上げた頃、日々の回診で患者さんの言葉を少しでも拾い上げようと努めていました。しかし、どうしても時間に追われ、患者さんはなかなか質問できなかったのではないかと思います。看護師さんが私の言葉足らずな点を補ってくれましたが、患者さん個々にはもっと聞きたいことがあったはずです。

後日、患者さんから「先生の機嫌をうかがいながら、質問しようかどうか考えていました」という言葉を聞き、私は衝撃を受けました。「こんなこと聞いていいのかな?」「恥ずかしいな」「医療に関係ないことを聞いたら怒られるかな…」と、患者さんは遠慮がちに考えていたようです。

血液内科の患者さんが同室に複数いると、自然と親しくなり、「今日は先生、元気だったね」といった会話から、私の細かい性格まで情報交換し、互いに励まし合っていることを知りました。当時はSNSもなく、医療情報が簡単には手に入らない時代です。

私は、この患者さん同士の繋がりを治療に活かしたいと考えました。きっと互いに治療の助けになるはずだと。患者会は今でこそSNSなどを利用して簡単に開催できますが、当時は準備だけでも大変な作業でした。

まずは手作り感満載の、主治医と患者さんが病気について学ぶ会を、院内の小さな会議室を借りて開催することにしました。治療中の方、治療を終えた血液内科の患者さんに手紙を書き、参加者を募り、人数を調整。会の当日は、私と事務の方、数名の看護師さんとで会場設営から準備まで行いました。

内容は、私が病気について講演し、その後、患者さん2名ほどに体験談を語っていただきました。休憩時間には簡単なお菓子を用意し、患者さん同士が交流できる場も設けました。

患者さんが本当に求めているのは、患者さんの"本音"なのだと実感しました。血液疾患は重く、抗がん剤治療も強いものが多く使われます。特に当時は、血液の悪性疾患(悪性リンパ腫、急性白血病など)と診断された場合、ほとんどの方が脱毛するような強い治療を受けていました。告知を受けた時、まず頭に浮かぶのは<死>という恐怖でしょう。

しかし、それだけではありません。副作用による免疫低下からくる高熱、感染症、便秘、手足のしびれ、味覚の変化、経済的な心配、体力の低下、退院後の仕事のこと…本当に様々な不安があるはずです。それを実際に体験した人が語ることは、何よりも意味があると思いました。そして、<自分だけじゃない>と思えることが、どれほど力になることか。<自分よりもっと辛い思いをした人がいる。でも、その人が元気になっている!>という事実は、何よりも希望を与えてくれるはずです。

こうして血液患者の会は、3~4ヶ月に1回のペースで開催され、合計30回以上も回数を重ねました。私の体調の問題で間隔が空いた時期もありましたが、12年近く続いたことになります。

講演は、私以外にも僧侶の方をお招きして、がんを抱える人の心の持ち方を話していただいたり、ハンドマッサージの専門家をお呼びして、講演と実践をしていただいたり、何度参加しても飽きないような工夫を凝らしました。

初回から開催を応援してくれた事務の方は、本当に気が利く人で、大企業の秘書としても十分に通用するほどの事務能力と知性を持ち合わせていました。彼女とは20年以上経った今でも交流があります。

この患者会は、血液内科に新しい常勤医が入職して以降、患者さんが一つにまとまることが難しくなり、惜しまれつつも幕を閉じることになったのです。

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