見出し画像

美とは何か?21冠受賞の衝撃作『モナ・リザのニス剥ぐ』

この記事で紹介する本はこちらです。
※この記事にはAmazonアフィリエイトリンクが含まれています。

奈美 : 翔平くん、今日はポール・サン・ブリスの衝撃的なデビュー作『モナ・リザのニスを剥ぐ』を紹介するわね。これはルーヴル美術館を舞台に、世界で最も有名な絵画《モナ・リザ》(ラ・ジョコンド)の修復を巡って繰り広げられるアート小説よ。フランスで驚異の21冠を受賞した大注目の作品なの。物語の軸は、ルーヴル美術館のアイドル絵画である《モナ・リザ》を修復するという設定なのだけど、ここには「芸術とは何か」「美術館の役割とは何か」といった深い問いがいくつも含まれているわ。

翔平 : 《モナ・リザ》の修復ですか。そんな話があるんですね。500年も前の絵画を、今さらなぜ手を加える必要があるんでしょう? 世界の至宝なのに、失敗したらどうなるのか、想像もつかないプレッシャーですね。

奈美 : まさにそこがこの小説の導入部の魅力なのよ。主人公の一人は、絵画部門ディレクターのオレリアンという学芸員。彼は古きを愛する誠実でやや保守的な人物で、基本的に修復には反対の立場をとっているわ。彼にこの無茶ぶりを命じたのが、実利優先でやり手の新館長ダフネなの。彼女は美術館史上初めて、学芸員出身ではない外部から登用された女性よ。彼女の目的は、表面を覆う酸化して緑がかったニスを剥がし、本来の姿に蘇らせることで、壊滅的な打撃を受けた来館者数を回復させ、収益性を最大化することなの。つまり、これは美術業界における商業主義(SNS時代)と保存アカデミズムの鋭い葛藤を描いているのよ。

翔平 : なるほど、古き良きものを守りたいオレリアンと、実利と時代の要求に応えたいダフネの対立がまずあるわけですね。オレリアンが修復に反対しつつも、館長命令で動かざるを得ないのが大変そうだ...。それで、この「失敗が絶対に許されない仕事」を任せる人物は、見つかるんですか?

奈美 : オレリアンは渋々、信頼できる修復士を探し始めるわ。そして、候補者選定が難航する中で、彼はイタリアのフィレンツェへと向かうの。そこで天才修復士ガエタノ・カザーニとの接触を図るのよ。ガエタノは修復を単なる技術ではなく、感情や直感、そして作品との対話の物語だと考える、職人の才気に溢れた人物として描かれているわ。彼が《モナ・リザ》という巨大な存在に、どのように立ち向かっていくのか、前半の大きな見どころとなるわね。

翔平 : パリの美術館の政治的な駆け引きから、ルネサンス発祥の地フィレンツェへ舞台が移るんですね。天才修復士ガエタノの存在も魅力的です。

奈美 : そうよ。この小説は、オレリアンとガエタノの物語だけでなく、オメロという清掃員の物語も並行して描いているの。彼はルーヴル美術館で働き、いつしか《モナ・リザ》と恋に落ちてしまうという、とても特異なキャラクターよ。彼はキャプションや知識とは無縁に、本能的に作品を感じ取り、眠っていた彫刻群に息吹を吹き込むほどの至高体験を繰り返すの。彼の存在は、アカデミックな知識に縛られたオレリアンの生き方と鮮やかなコントラストをなしているわ。この小説は、服や髪、風景の描写に「セルリアンブルー」や「クラッシュラズベリー色」など、信じられないほどの多くの色が出てくる、本当に絵画みたいな小説なの。芸術と、色彩と、人間模様が豊かに描かれているわ。そして、この二人のまったく異なる人生を歩む人物が、物語のラストで交わり、思いもよらぬ結末を迎えることになるのだけど...、それは読んでみてのお楽しみよ。視覚情報に溢れた現代において、「美とは何か、本物とは何か」 を問いかける、非常に示唆に富んだ作品だわ。

翔平 : オレリアン、ダフネ、そして天才修復士ガエタノの「モナ・リザ」を巡るドラマに加えて、清掃員オメロという特殊な視点まであるんですね。特に、彼が《モナ・リザ》と恋に落ちるという設定は、純粋な芸術の享受というテーマを深掘りしていそうでとても気になります。

いいなと思ったら応援しよう!