BOUNDARY SPANNER|橋をかける人 #01 主な登場人物
本作では、異なる文化や組織のあいだに立ち、言葉や考え方のずれを調整する人を「バウンダリー・スパナー」、つまり“橋をかける人”として描いています。
ここでは、物語に登場する主な人物を紹介します。
李佳(佳佳)|この物語の主人公
中国人女性。日本企業の上海拠点に勤務している。
静かで慎重な性格で、会議では相手の言葉を最後まで聞き、すぐに結論を急がない。表情にはあまり出さないが、胸の内ではいつも、いくつもの前提や感情がぶつかり合っている。
相手は何を求めているのか。
どこまでが共有されていて、どこからが思い込みなのか。
その見えにくい差を、人知れず拾い集めながら働いている。
空気を読むことに長けている一方で、そのぶん自分の判断に迷うことも多い。「間違えたくない」という思いと、「期待に応えたい」という気持ちのあいだで揺れながら、少しずつ“橋をかける人”へと成長していく。
佐藤賢一
日本から赴任してきた四十代の駐在員。
誠実で責任感が強く、いつも整った言葉で話す。声を荒らげることはなく、場を乱さず、静かに仕事を前へ進めようとする人物である。
現地のスタッフを信頼し、できるだけ任せたいと考えている。けれど、その「任せる」という感覚そのものが、日本的な仕事観の上に成り立っていることには、最初はあまり自覚がない。
悪意はない。むしろ、相手を尊重しているつもりでいる。だからこそ、その誠実さや丁寧さが、思いがけず現地との小さなずれを生んでしまうことがある。
李佳にとって佐藤は、理解しようとしても簡単には届かない相手であり、同時に、やがて大切な役割をともに担っていく存在でもある。
趙美雅
中国にルーツを持つ女性。日本生まれ、日本育ち。
李佳の先輩的存在であり、日本と中国、双方の文化的な前提を深く理解している。同じ会社に所属しながら、日中双方のビジネス慣習や、言葉の温度差をよく知っている人物である。
話し方は穏やかで、感情を声に乗せすぎることがない。けれど、その言葉はいつも的確で、相手がうまく言葉にできない違和感に、静かに輪郭を与えていく。
曖昧なものを急いで断じることはしない。けれど、核心から目をそらすこともしない。
李佳にとっては、未来の自分の姿をかすかに映す存在であり、佐藤にとっても、数少ない相談相手の一人である。
山本宗介
日本人。日本本社の管理職。
率直で、判断が速い。曖昧な表現を好まず、何が論点で、何を決めるべきかを、短い言葉で切り分ける。
資料の一行を見ただけで本質に触れるような鋭さがあり、その正しさと速さが、ときに相手を追い詰めてしまうこともある。
感情で押す人ではない。むしろ、責任ある立場として、曖昧なまま物事を流さないことを徹底している。だからこそ、相手がその言葉をどう受け取るかにまで、意識が向かないことがある。
本社の論理を体現する人物であり、李佳にとっては、自分の言葉が本当に届くかどうかを試される相手でもある。
陳立
中国人男性。上海拠点の現地社員。
率直で、現場志向が強い。思ったことをそのまま口にするが、それは人を傷つけるためではなく、仕事を前に進めるためである。
議論が抽象論に流れそうになると、「で、現場はどうするんですか」と一言で本質へ引き戻す。理屈よりも実行を重んじ、机の上では整っていても、現場で止まってしまうものには敏感である。
根は誠実で、仕事への責任感も強い。李佳にとっては、考えすぎて見えなくなった現実を、もう一度足元へ戻してくれる存在であり、橋渡しが机上の理屈に終わらないための大事な支えでもある。
叶青
中国人女性。上海拠点の現地社員。
現地採用社員として長く勤務しており、業務処理能力が高い。日本語はほとんど使わず、主に中国語でコミュニケーションを取る。
小柄で身のこなしが軽く、明るく快活で、ぱっと見には愛嬌がある。けれど、その内側には鋭い判断力がある。
曖昧な表現や、「察してほしい」という空気にはすぐに違和感を示し、「つまり、何をすればいいの?」とためらいなく問い返す。率直で物おじしないが、それは反抗心からではなく、仕事を正確に進めたいからである。
感覚的に本質をつかむ力があり、場に漂う飾りや遠慮を、一気に剥がしてしまうような強さも持っている。
李佳にとって叶青は、自分が“橋をかける人”になる必要性を、もっとも鋭く突きつけてくる存在である。そして同時に、李佳の成長を大きく動かしていく重要な人物でもある。
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