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(書評)第102回「かわいそうだね?」(綿矢りさ 著)☆元カノとの奇妙な三角関係に悩む女性。痛快なラスト!☆

第6回(2012年)大江健三郎賞の受賞作です。お洒落で仕事もバリバリこなす樹理恵は、アメリカ帰りの隆大と出会い恋に落ちます。晴れて付き合うようになった二人でしたが、隆大には7年付き合ったアキヨの陰がちらつきます。どうやらアキヨは未だに隆大を想い、復縁を望んでいる様子。樹理恵はやきもきしています。そんな中、家賃滞納を理由に隆大の家にアキヨが居候することになり…。ブラックユーモアあふれる恋愛小説です。

百貨店でアパレルブランドショップの店員として、仕事もバリバリこなす樹理恵(じゅりえ)が主人公です。樹理恵は28歳。お洒落で派手な外見をしていますが、男性に尽くすタイプです。樹理恵はアメリカ帰りの隆大(りゅうだい)とバーベキューで出会い恋に落ちます。一人で黙々と肉を焼く隆大は目立つタイプではないですが、女の子に媚を売るようなチャラさはなく、大らかな中にも静かな強さを持つ男です。隆大は、アメリカ・サンフランシスコで大学まで暮らし、日本に帰国してからは価値観の違いに悩む日々を送っていました。大らかで責任感が強い性格です。隆大の方も美人でハキハキしている樹理恵を気に入り、二人は付き合うようになります。順調な交際をしていた二人でしたが、隆大が長年付き合っていた元カノ・アキヨの出現により、雲行きが怪しくなります。アキヨは30歳。垢ぬけないルックスで、家賃滞納で追い出されたことを理由に、隆大の家に転がり込んでいます。隆大とアキヨは7年もの間付き合っており、アメリカと日本の価値観の違いに悩んでいた隆大をそばで支えたのはアキヨでした。最後は家族のようになり、恋愛感情を抱けなくなった隆大が一方的にアキヨを振り、樹理恵と付き合うようになりましたが、アキヨは別れてからも隆大のことが好きで復縁を望んでいました。アキヨの気持ちを隆大は知っていましたが、今は樹理恵が彼女なので、樹理恵を大切にしつつも、元カノのアキヨを突き放すこともできませんでした。

アキヨと別れたものの、責任感の強い隆大は自分を頼ってくるアキヨを放っておくことはできません。就職先が決まらず、家も家賃滞納で追い出されたアキヨを見かね、隆大は一人暮らしをしている自分の部屋に来ることを提案します。それに待ったをかけたのは現・彼女の樹理恵です。隆大がアキヨを居候させると宣言すると猛抗議します。到底許せる話ではありませんでしたが、隆大の「アキヨには恩があるから助けたい。認めてもらえないなら樹理恵と別れざるを得ない」と言う言葉に樹理恵は躊躇します。納得できませんが、隆大とは別れたくありません。隆大は愛しているのは樹理恵だけだと説得し、樹理恵はしぶしぶ二人の同居を容認することにしました。職場の後輩や、通っている英会話スクールの外国人講師にも隆大と元カノ・アキヨの同居を相談するくらい悩んでいた樹理恵ですが、隆大は困っている人を助けたい親切心から言っているのであって、愛しているのは私なのだから気にすることはないと、自分自身に言い聞かせ、納得させようとします。樹理恵は、アキヨに対する同情と、自分の彼氏と同棲していることに対する不満とがせめぎあったまま日々を過ごしていくのでした。

アキヨの存在は引っかかるものの、隆大と付き合っていくことに決めた樹理恵は、アキヨが転がり込んだ隆大の家に偵察に行きます。対面したアキヨは地味でやぼったく垢抜けない女性でした。冴えないアキヨを前に少し余裕が生まれ、部屋の中がきちんと隆大とアキヨの仕切りができていることに安心した樹理恵は、就活中のアキヨをねぎらいます。アキヨは就職して家が見つかったらすぐに出ていくつもりだと樹理恵に言い、隆大は心の広い樹理恵に惚れ直したと言います。樹理恵は器の大きい彼女を精一杯演じました。隆大と交際を続けていた樹理恵ですが、間借りしているだけだと言っていたアキヨは一向に隆大の家から出ていきません。正月休みで隆大と二人で行った奥多摩の旅行先で、業を煮やした樹理恵は、隆大の携帯を盗み見してしまいます。そこにはアキヨからの大量のメッセージありました。内容は甘え口調でハートマークがたくさんついた他愛のないのメールでいっぱいでした。彼女の樹理恵には申し訳ないなどとしおらしい態度をとっておきながら、陰では隆大に積極的なアプローチをしていた事実を知り、樹理恵はついに堪忍袋の緒が切れます。

隆大とアキヨが同居している部屋に乗り込んだ樹理恵は驚愕します。以前訪れた時には仕切られていたものはなくなっており、二人の物がごちゃまぜになり、そこは同棲部屋のようになっていました。怒りが頂点に達した樹理恵はアキヨに食って掛かり、部屋を荒らしまわります。理解のある彼女を演じてきた樹理恵ですが、今まで我慢に我慢を重ねてきた鬱憤が爆発してしまいました。隠してきた関西弁でアキヨと隆大を罵ります。しかしアキヨは冷静でした。樹理恵の罵倒がおさまると、今の彼女は樹理恵でも、隆大はいずれ自分のもとに戻ってくる確信があると言い放ちます。アキヨの自信に満ち溢れた姿に、樹理恵はあっけにとられます。アキヨは虎視眈々と、隆大との復縁を狙っていたのです。自爆してまんまとアキヨの罠にはまった樹理恵は、部屋に一人にして欲しいと頼みます。自分が荒らした部屋を茫然と見つめる樹理恵でしたが、男の趣味が同じなら、きっとあるはずだとアキヨの私物を漁ります。探し物はありました。そこにあったのは樹理恵が愛用していたのと同じ銘柄のたばこです。残された部屋で樹理恵は一人で一服するのでした。

綿矢りさ

彼氏をめぐる元カノとの三角関係を描いた本作では、男には見抜けないであろう女の計算高く狡猾なバトルが繰り広げられます。女性受けはお洒落でサバサバ性格の現・彼女の樹理恵だと思うのですが、男性が最終的に選ぶのは、元カノのアキヨみたいな地味目でおとなしく、自分のあとについてきてくれるような女性なのでしょう。アキヨの従順なのは「ふり」ですが、本当に純粋無垢な子なら、彼女がいる元カレのところに居候する選択肢は、はじめから持たないはずです。こういう女にコロッと騙されて、責任感があって頼りにされちゃう俺に、酔ってしまう隆大の単純さに呆れました。樹理恵が勝ち誇ってすべての、しがらみから解放されたラストが痛快でした☆


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