(書評)第33回「蛇にピアス」(金原ひとみ 著)☆史上最年少の芥川賞受賞作。舌にピアスをする話☆
第130回芥川賞の受賞作です。著者のデビュー作であり、綿矢りさの「蹴りたい背中」と並んで、史上最年少の芥川賞受賞となりました。
芥川賞の選評では、細部描写の秀逸さと、派手な道具立ての裏にある物語の純粋さが評価されました。舌ピアスと入れ墨による身体改造、濃密な性描写と内容はグロテスクですが、不思議と読後感の良い作品です。

生きている実感がなく、あてもなく渋谷をふらつく19歳のルイ。ある日訪れたクラブで、眉と唇にピアス、背中に龍の刺青、蛇のように舌を二つに割る「スプリット・タン」を持つアマと出会い、ルイの人生が一変します。アマの刺青とスプリット・タンに魅せられたルイは、サディスティックな刺青師シバが施術を行なっている怪しげな店を訪ね、舌ピアスを入れ、背中に麒麟と龍の刺青を入れて、身体改造にのめり込むんでいきます。舌にピアスを開けた時感じた痛みと、ピアスを拡張していく過程に恍惚を感じるルイ・・・
刺青の代償としてシバはルイに体を求め、2人は刺青を入れていくたびに体を重ねるようになります。

一方でルイは、恋人のアマが暴力を振るって暴力団員が死んだというニュースを目にします。アマが捕まってしまうことを危惧したルイは、アマの髪をアッシュに染め、刺青が見えないように長袖を着るよう言いつけます。その事実を全く知らないアマは何の疑いもなくルイに従います。
ルイが開けた舌ピアスは徐々に拡張していきました。刺青の完成と同時にルイは自らの生きる意味を見失います。自分が生きていることを実感できるのは、痛みを感じている間だけだと気づいたルイは、アマとシバ、どちらが自分を殺すのだろうかと想像を巡らせるようになります。

そんな中、警察からシバの店に「龍の刺青をした、赤毛の客を教えて欲しい」という連絡が入ります。ルイはしらを切り通しますが、不安に襲われながら日々を過ごすことになります。ある夜、アマは突然行方不明になり、ルイは呆然とします。警察に捜索願を届けようとしますが、ルイはアマの本名すら知りませんでした。数日後、行方不明となっていたアマの無残な死体が発見されたと警察から告げられたルイ。アマの遺体には無数のタバコを押し当てた痕があり、陰部にはエクスタシーというお香が差し込まれていました。警察官から「アマはバイセクシャルだったか」と尋ねられ、アマが何者かによってレイプされていたことを察するルイ。アマを殺した犯人が見つからないことを激しく糾弾します。
アマの死後、生きる気力を完全に失っていたルイのことを受け入れたのはシバでした。シバの家で暮らす日々の中で、ルイはアマの陰部に差し込まれているお香がシバの家に置いてあること、そしてアマの体に押し当てられたタバコが、シバが吸っている銘柄と同じであることに気がつきます。
最後は「アマを殺したのがシバさんであっても、アマを犯したのがシバさんであっても大丈夫」と締めくくられます。
ルイは舌のピアスを拡張するのをやめます。スプリットタンは完成せず、ただ舌には大きな穴が残り、ルイは一人、ピアスと刺青が自分にとってどのようなものだったのか、その答えを知るのでした。

舌にピアスをする人々の日常の断片が、余計な解説抜きで一気に描かれていて潔いです。繰り返し出てくるセックス描写も、いやらしさを感じさせません。最後は少しだけ生きる片鱗が見えたかのような終わり方で、希望をもらったような気がしました☆

