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(書評)第97回「オーラの発表会」(綿矢りさ 著)☆「空気を読めない女子」の成長物語☆

著者のデビュー20周年の記念の小説です。他人の気持ちを読めない女子の、不器用で愛おしい恋愛未満の小説です。孤独を愛する主人公が、異性や同性の友だちと触れ合ううちに、徐々に社交性を獲得していく成長物語です。

主人公は、東京の中の中クラスの大学一年生、片井海松子(みるこ)です。一人娘で父は大学教授、海松子は将来教員を目指しています。塾講師のアルバイトをしています。他人に興味を抱いたり、気持ちを推しはかったりするのが苦手な、空気を読めない女の子です。趣味は凧揚げ、特技はまわりの人に脳内で(ちょっと失礼な)あだ名をつけることと微かな臭いをかぎ分けること、癖は「ですます調」で話すことと、風変わりな子です。友達は、高校時代からの付き合いの「まね師」というあだ名の祝井萌音(もね)ひとりだけです。大学は家からすぐのところにありますが、ある日、両親から「一人暮らしを始めます」と一方的に宣言されてしまいます。しかたなく、大学近くのアパートに引っ越す海松子でしたが、あまり社交的でない海松子を心配して、両親が手配してくれたのでした。

ある日、日本書紀の大教室に行くと、萌音はすでにグループと一緒に話をしていました。萌音は「まね師」のあだ名通り、他人の服装を真似る(パクる)のが特技でした。海松子が萌音に近づくと、なぜか邪険にされてしまいます。同じクラスの「あぶらとり神(滝澤)」が声をかけてきます。あぶらとり神が学食で八宝菜を食べたことを当てた海松子は、気味悪がられてしまいます。アルバイト先の塾でも、生徒に唾を飛ばしたことで叱られてしまいます。

萌音が大学のミスコンに出ることになり、海松子は萌音の友人から、萌音がどういう子かと聞かれます。萌音は過去の優勝者の服装とプロフィールをそっくり真似てエントリーして、炎上していました。海松子が久しぶりに実家に帰ると、両親に歓待されます。高校時代のクラスメイトの七光殿(森田奏樹)からエアメールが来ていました。奏樹は高校1年の時に「トワイライト・ジャーニー」という海外紀行文を出版していました。海松子は奏樹に返事を書きます。奏樹とはご近所でした。やがて、サワクリ兄(諏訪蓮吾)が訪ねてきます。サワクリ兄は父の大学の教え子で、不動産関係の仕事をしていて社交家でハンサムした。サワクリ兄は海松子に「しばらくは彼氏を作らないで」と言います。

ミスコンの予選会当日、海松子は萌音の応援に行きますが、萌音は落選してしまいます。海松子と萌音は、久しぶりに言葉を交わします。ある日、海松子は学食に行き、コスパの良い「すき焼き風煮定食」を食べます。そこで、あぶらとり神のグループに声をかけられ、みんなに紹介されます。みんなと食事をする海松子でしたが「あんまり群れないから一匹狼系なんだと思ってた」「片井さんておもしろいね」と言われます。食べ終わった頃、海松子は萌音に声をかけられ、再びテーブルに戻ります。萌音に奏樹から手紙をもらったと話すと「いますぐメッセージを送っていつ会うか決めな」と言われてメアドを教えられます。

大学近くの昭和レトロの喫茶店で、海松子は奏樹と会います。実は奏樹からは高校時代に一度告白されていたのでした。海松子は奏樹に、夏休みの旅行先を相談します。すると「与野島」を紹介されます。奏樹の父親が会員の古いホテルもあり、奏樹は海松子と萌音を招待すると言います。

ある日、日本書紀の授業で、海松子と瓜二つの萌音が入ってきます。萌音は海松子の服とメイクを完コピしたと話します。そして、高校時代と今の海松子を比べて「あんたはさ、高校卒業と大学入学の間に、いったい何があったの?」と言います。海松子が家を追い出されたことを話すと、高校時代の海松子のセンスの高さは、海松子の母が維持していたことが判明します。旅行に行く洋服を買うために、萌音に連れられて海松子はショッピングセンターを連れまわされます。予算1万円以内に収めて欲しいと要望する海松子に、萌音はみごと応えてくれます。

旅行出発の日、格安航空の飛行機に乗り那覇空港に着き、与野島行のプロペラ機に乗り換えて到着すると、奏樹が出迎えてくれました。白いワゴンで「ホテル碧海荘」に着きます。2階の部屋の窓からは、崖下にサファイアブルーの大海原が広がっていました。夕食前にさっそく泳ぎに行きます。翌日は赤端海岸に泳ぎに行きます。そして午後は浴衣に着替えて「ウル祭り」の花火を楽しむのでした。海松子は萌音に「ヤシガニ」を見せると、萌音はドン引きして声を荒げます。最終日、3人はグラスボートに乗って葵が浜へ向かいます。夜になり、海松子は奏樹と星空を見に行きます。海松子は奏樹と少し距離が近づいたのでした。

ある日、海松子は諏訪と待ち合わせして、家具を買いに行きました。夜一緒にアパートに戻って夕食を共にすると、諏訪にアプローチされます。「人を好きになる気持ちが分からないんです」という海松子に、諏訪は「じゃあ俺が教える」と言ってディープキスをしてきます。海松子は諏訪が帰った後、ひとりで思い存分自慰をします。

翌日、海松子は萌音に恋愛相談をします。海松子の部屋にやってきた萌音は「バチン」という大きな音を聞きます。その後もたびたび音が鳴ります。海松子は、自分の意志で「オーラ」が鳴らせると確信し修行に励みます。ある日、授業を欠席し続けている海松子を心配して萌音がやってきて、みんなの前で「オーラの発表会」をしようと海松子に持ちかけます。海松子の実家で「オーラの発表会」が開かれます。結局オーラは出せずに海松子は落ち込みます。海松子がひとりで部屋にいると奏樹がやってきて、海松子は奏樹に告白します。

年明けのある朝、海松子は萌音に「連だこ」を揚げるから見に来て欲しいと連絡します。しぶしぶ多摩川の河原に出かける萌音でしたが「連だこ」に感激します。萌音は「あけましておめでとう」と言って去って行きました。

綿矢りさ

海松子と萌音の会話が、ボケとツッコミのようで楽しめます。世間や周囲の人たちが勝手に抱いている普通や常識に、上手く乗れなかったり、ズレてしまった女子を、キレッキレの「綿矢節」でユーモアたっぷり肯定してくれます。この2人の付かず離れずの関係が、とても羨ましく感じました。萌音は悪役キャラだけど、本当はいいやつで、海松子にとってかけがえのない存在だと思います。ずっと主人公を応援したくなる作品でした。キレイな装幀もポイントです☆


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