許せないのに、離れられなかった
妻に問いただして、
全部を知った夜。
怒りもあった。
憎しみもあった。
裏切られたという事実が、
頭の中で何度も反響していた。
その時の自分には、
離婚しかなかった。
それ以外の選択肢なんて、
正直、考えられなかった。
感情のままに、
離婚だと言っていた。
今思えば、
冷静ではなかったのかもしれない。
いや、
たぶん全然冷静じゃなかった。
話し合いは、ずっと平行線だった。
妻は離婚したくないと言い、
俺はもう無理だと言い続けた。
何を話しても、
埋まることはなかった。
そのあと、一人になって考えた。
静かになると、
余計にいろんなことが頭に浮かんだ。
妻の不倫は許せない。
過去は消えない。
怒りも、不信感も、
何ひとつなくなっていなかった。
でも、
嫌いになれない自分もいた。
それが、一番厄介だった。
愛した人だった。
長い時間を一緒に過ごしてきた。
妻であり、
子どもたちにとっては、
たった一人の母親だった。
簡単に切り捨てられるほど、
人はきれいにできていない。
自分に、
何か足りなかったのかもしれない。
寂しい思いをさせていたのかもしれない。
家計のこと。
子どもの習い事。
学校の行事。
気づけば、
いろんなことを任せすぎていた気もした。
もちろん、
それが不倫の理由になるなんて思っていない。
でも、
考えずにはいられなかった。
今までだって、
喧嘩はあった。
離婚、みたいな言葉が
一度も出なかったわけじゃない。
妻には妻なりの理由があったのかもしれない。
そう思おうとした。
でも、
結局、答えなんて出るはずがなかった。
許すことはできない。
でも、
別れることもできなかった。
再構築を選んだ、
というほど前向きなものじゃない。
正しく言えば、
結局、
何も決められなかった。
何も動けなかった。
そこにいたのは、
怒りながら、
立ち尽くしている自分だった。
だから、
まず一つだけ決めた。
相手には、
きちんと責任を取らせる。
とりあえず、
慰謝料請求に動くことにした。
