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necogourmand
経済的自立を、静かに始めることにした
妻の不倫を知ってから、いくつかのことが変わった。
そのひとつが、お金だ。
俺が仕事を始めて病院に勤めて、それなりの年数が経つ。収入は安定している。でも、それだけだった。
毎月の給料が、静かに消えていく。
それが普通だと思っていた。
独立を考えたことが、ないわけじゃなかった。
ただ、考えるだけだった。
いつか。そのうち。タイミングが来たら。
そういう言葉で、ずっと自分をごまかしてきた。
今回は違った。
決意してから、動いた。
医療従事者が副業を考えると、だいたい同じ答えが出てくる。ライター、土日に別の職場で働く、そういうものだ。
理にかなっているとは思う。
実際に稼いでいる人もいるだろう。
でも、俺には向いていないと思った。
自分が得意なのは、人の話を聞くことだ。対話することだ。
そして、施術にもそれなりの自信がある。
だったら、それを使えばいい。
自分なりに考えて、構想していたのが訪問リラクゼーションだった。
自分の技術を、自分の足で届けに行く仕事だ。
施術の内容、時間、料金。
頭の中にあるものを、一つずつ紙の上に置いていった。
同意書を作った。料金表をまとめた。
今まで一度もやらなかったことだった。
地元の先輩に相談したら、生涯学習の講師の話をもらった。
躊躇った。
でも、これを逃したら次はないと思った。
受けることにした。
チャンスというのは、準備ができてから来るわけじゃない。
準備しながら、受け取るものだと最近は思っている。
経済的自立という言葉は、少し前まで遠かった。
今は、少しだけ近い気がしている。
