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がん治療中の食事

 ステージ4がんの告知を受けたときに主治医から出た救いの一言は「食事に制限はないので好きなものを食べてください」だった。そのときは、先が長くないから言っているのかなと思ったが、糖尿病で糖質制限した食事をしていたので、それを解禁されたと考えることにした。
 あとからわかったのはそうではなく、進行胃がんでは、栄養状態そのものが治療継続率や生活の質(QOL)に大きく影響するため、栄養管理は化学療法と並ぶ重要な治療の一部と考えられているという理由だった。
 悪液質という通常の栄養補給だけでは十分に改善しない、骨格筋量の持続的な減少を特徴とする多因子性症候群があり、これは単なる「やせ」や「栄養不足」ではない。がんによって体内に慢性的な炎症が起こり、筋肉が分解され続けることで、体重や筋力、体力が低下していく全身性の代謝異常である。
 悪液質は、6か月以内に5%以上の体重減少、または、筋肉量減少を伴う体重減少がみられる。私は昨年8月から今年2月までに体重が10Kg減少していた。倦怠感が続き、筋力、体力も減少していた。この段階で、がんが著しく進行したり、治療効果が期待できない場合は難治性悪液質となるが、幸いなことにそこまではいかなかった。悪液質の改善には、まずがん治療が重要であり、それを栄養管理や運動が支えている。
 悪液質を防ぐ食事の基本は、「筋肉を守ること」である。現在の研究では、特定の食品やサプリメントだけで悪液質を防げることは証明されていない。一方で、十分なエネルギーとタンパク質を確保し、運動と組み合わせることは、最も科学的根拠のある予防法である。
 最も重要なのはタンパク質で、欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)は、がん患者では体重1kg当たり1.2~1.5g/日のタンパク質摂取を推奨している。体重80kgなら、96~120g/日が一つの目安となる。良質なタンパク質としては、サバ、サケ、マグロなどの魚、鶏肉、赤身肉、卵、牛乳、ヨーグルト、チーズ、豆腐などになる。
 治療が奏功し、今年の2月くらいから体重が増え始め、食欲も戻ってきた。悪液質の状態からは改善したように感じている。化学療法がよく効いたことが一番の理由だが、十分なエネルギーとタンパク質を意識した食事を続けたこともよかったのだろう。
 銀座まで歩いて行けるので、週に2、3回、平日のお昼においしい店を巡った。一般的な健康食とは異なり、体重維持を優先して十分なエネルギーを摂るようにしていた。
 がんの予防を含めて健康的な生活をするために節制した食事がネットなどで推奨されているが、がん治療中、とくに体重減少がある場合には、一般的な生活習慣病予防とは優先順位が変わる。タンパク質を十分に摂りながら、体重維持・回復を意識した食事を続けている。
 がんが根治または寛解したら、食事は健康的なものに戻すことになるが、ステージ4がんは根治せず、長期間病勢が抑えられた状態が続けば、臨床的には寛解とみなされることもあるとすれば、この先、数年はタンパク質を十分に摂りながら、体重維持・回復を意識した食事を続けることになる。寛解する前に再増悪して、化学療法が効かなくなって、終末期を迎える可能性もある。
 つまり、この先、私が健康的な食事をする可能性は低い。糖質を制限したり、健康によい食材、例えば玄米・雑穀米・オートミールなどを食べるのではなく、糖尿病とのバランスには気を付けながらも、現在は体重維持を優先して白米も無理に避けなくてよい。節制しなくてよいと思うだけで幸せになる。
 


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