見出し画像

モモイロタンポポ


夜も更け、寝室に移動する。
肌触りの良いふわふわの布団を肩までかけ、電気を消す。
目を閉じる。


おばあちゃん家がある田舎の景色が目に浮かぶ。
次に浮かんできたのは、にっこり笑顔のおじさんとおばさん。


おじさんとおばさんと書いているが、血の繋がりは無い。
おばあちゃん家のお隣に住むご夫婦だ。


このおじさんとおばさん、私の顔を見ると、いつもにっこり笑顔。


私がたまに田舎に帰って、おばあちゃん家に寄ったついでにお隣のおばさん家まで顔を出すと、
「あら!あっちゃん!?帰ってきとったんね!」
と笑いかけ、しばらく世間話をする。
そのうち家の中からお菓子を持ってきて、「これ持って帰り」と渡してくれる。

たくさん貰っちゃったと思いながら、おばあちゃん家まで歩いて帰っていると、畑仕事が終わり、軽トラックで帰宅途中のおじさんとばったり出くわす。


おじさんは私を見つけ、トラックを止めて窓から顔を出し、「おぉ、あっちゃんやないか。帰ってきとったんか。」と笑いながら声を掛けてくる。

よく私ってわかったなぁと思いながら(他人から見ると私と私の姉はそっくりらしいので)
しばらく会ってないのに、一目見て私だとわかってくれたことがなんだか嬉しかった。



元気にしているだろうか。
もう数年会っていないかもしれない。


ある日を境に、おばあちゃん家に行くという機会がめっきり無くなった。

おばあちゃんが介護施設に入ったためである。

それからというもの、おばあちゃん家に行くのは、今では墓参りの時くらい。
だから自然とおじさんとおばさんに会う機会も無くなって、ふと元気にしているのかなと思いをめぐらす。


おばあちゃん家に行ってもおばあちゃんはいないという切なさと、介護施設に入って、会える機会が少なくなってでも長生きして欲しいという私のわがままと、
いつでも会えると思ってた人と、こんなに簡単に会えなくなるものかという驚きと寂しさがある。



体がズッシリ重たくなってくる。
意識が途切れ途切れになる。もうすぐ眠れそう。


私は恵まれている。
生まれてから今の今まで、そこかしこから愛をたっぷり受け取っている。

貰ってばかりで、与えないと。
おばあちゃんになってから与える側に、なんて悠長に思っていたけれど、自分がいつ死ぬかわからない。


要らないものは捨てて、空いたところに大切なものを収める。そして与える。



血が通っていないのではと心配になるくらい冷たい足先がジンジンする頃、ようやく眠りについた。




いいなと思ったら応援しよう!

藤井るり よろしければ応援お願いします!