急変を見逃さないために―「正常値」の裏で進む変化をどう見るか―
血圧は正常。
SpO₂も保たれている。
会話もできている。
大きな異常値はない。
それでも、
その後、患者さんが急変することがあります。
では、
急変する前の患者さんは、
本当に「正常」だったのでしょうか。
もちろん、
バイタルサインは重要です。
血圧。
脈拍。
呼吸数。
SpO₂。
体温。
どれも、
患者さんの状態を判断するために欠かせない情報です。
だから、
正常値を信用してはいけない、
という話ではありません。
問題は、
「正常値だから大丈夫。」
という一つの情報だけで、
患者さん全体の安全まで証明しようとしてしまうことです。
例えば、
SpO₂は97%。
数字だけを見れば、
大きな異常はないように見える。
でも、
呼吸数は増えている。
肩で呼吸している。
会話の途中で、
息継ぎが増えている。
横になることを嫌がり、
座っていた方が楽そうにしている。
SpO₂は、
まだ保たれている。
でも、
患者さんは本当に、
「変わっていない」
のでしょうか。
血圧も同じです。
血圧は、
まだ保たれている。
でも、
脈拍が速くなっている。
末梢が冷たい。
CRTが延長している。
尿量が減っている。
血圧という数字だけを見れば、
「正常」かもしれません。
しかし、
その正常を保つために、
身体が頑張っている可能性があります。
急変の前には、
必ず分かりやすい異常値が並ぶとは限りません。
大きな異常が現れる前に、
小さな変化が先に現れていることがあります。
呼吸数。
姿勢。
表情。
返答。
活気。
末梢循環。
そして、
「何か変。」
という違和感。
一つ一つは、
決定的な異常ではないかもしれません。
でも、
それらを時間の中で並べると、
患者さんがどちらへ向かっているのかが、
見えてくることがあります。
だから、
急変を見逃さないために、
私が持っている問いは、
「異常値が出たか?」
だけではありません。
「異常値が出る前に、
何が変わっていたか?」
30分前と、今。
最初に見た時と、今。
報告する前と、報告した後。
処置する前と、処置した後。
患者さんは、
本当に同じでしょうか。
急変を見逃さないために必要なのは、
異常値を早く見つけることだけではありません。
異常値になる前の変化を、
どう捉えるか。
そして、
変化に気付いた後も、
どう考え続けるか。
ここから先では、
私が患者さんを見る時に大切にしている、
5つの視点を整理します。
・数字と患者さんは一致しているか
・身体が「正常」を保つために無理をしていないか
・前回から何が変わったか
・次にいつ、何を見るのか
・対応した後も、リスクが残っていないか
「「正常値だから大丈夫。」
で終わらせず、
「ここからどうなるか?」
を考えるための5つの視点です。
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