「さっきは大丈夫でした。」では、今はどうですか?
「さっきは大丈夫でした。」
医療現場では、
よく聞く言葉です。
「さっき測った時は、
血圧も保たれていました。」
「さっきは、
普通に歩いていました。」
「さっきは、
会話もできていました。」
どれも、
間違っているとは限りません。
さっきは、
本当に大丈夫だったのかもしれません。
でも、
一つだけ忘れてはいけないことがあります。
私たちが今見ている患者さんは、
“さっきの患者さん”ではありません。
患者さんの状態は、
時間とともに変化します。
病態も、
症状も、
代償する力も、
ずっと同じとは限りません。
だから、
「さっき大丈夫だった。」
という事実だけでは、
「今も大丈夫。」
とは言えません。
例えば、
30分前。
血圧は保たれていた。
SpO₂も正常だった。
会話もできていた。
その時点では、
緊急性は高くないと判断した。
しかし、
30分後。
呼吸数が増えている。
少し落ち着きがない。
末梢が冷たくなっている。
表情も違う。
それでも、
「さっき大丈夫だったから。」
という判断を残してしまったら、
私たちは、
今の患者さんではなく、
30分前の患者さんを見ていることになります。
初回評価は、
とても重要です。
でも、
初回評価は、
患者さんの未来を保証するものではありません。
トリアージも、
バイタルサインも、
アセスメントも、
その瞬間を切り取ったものです。
だから私は、
前回の評価には、“有効期限”がある
と考えています。
もちろん、
何分で切れる、
という意味ではありません。
患者さんが変化すれば、
その瞬間から、
前回の評価だけでは、
今を説明できなくなる。
という意味です。
「さっきは大丈夫でした。」
その言葉自体が、
危険なのではありません。
危険なのは、
その言葉によって、
今を見る必要がなくなってしまうことです。
では、
「さっきの評価」に引っ張られず、
今の患者さんを評価するためには、
何を見ればいいのでしょうか。
ここから先では、
前回評価を、
“安心材料”ではなく、
今の変化を見つけるための比較材料
として使う考え方を、
T-ACTの視点から整理します。
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