網膜AI:心血管リスク評価
眼科領域では、"診断補助として実用化済"とのことで、米国FDA承認されているツールもあるとのこと
ここでは、表題の如く網膜AIで心血管リスクを評価し介入を試みようとしている最近の試みで一定の結果が報告されつつあるようだ
SNSでの最近の動向
Dr. Luciano Trindade がCLAiR試験を紹介: 「AIが網膜画像から10年心血管リスクを感度91%で算出。非侵襲・無痛でハイリスク患者を早期発見」と解説
UAEではReti-CVDプラットフォームを導入。眼科検査で動脈石灰化・プラーク蓄積を推定し、CVDリスク評価に活用
BioScan AIは「oculomics」を提唱。網膜画像から数千の血管バイオマーカーを抽出し、5年以内の心筋梗塞リスクを約70%の精度で予測と発信
ポイントまとめ
非侵襲性: 採血不要。既存の網膜カメラで実施でき、眼科・薬局・プライマリケアに展開可能
早期発見: 網膜は血管を直接観察できる唯一の臓器で、心血管イベントの数年前に変化が出る可能性
課題: 過大/過小評価が年齢・性別で変動。あくまで「確率スコア」で確定診断ではないと専門家も指摘
規制状況: 欧州・英国は承認済み、米国はFDA Breakthrough Device指定で審査中
CLAiR trialは「眼科検査を心血管スクリーニングの入り口にする」ことを目指す代表的な研究で、QUARTZやオーストラリア試験など同分野の検証が2024-2026年に複数出ています。特に無症状の40-50代を拾い上げるツールとして注目されています。
CLAiR AI trial (NCT06808334) CLAiRとはToku社が開発したAIプラットフォーム。網膜画像の微細な血管変化を解析し、血液検査なしでリアルタイムにCVDリスクを評価する。既にCEマーク・UKCAマークを取得し、欧州・英国で使用可能。米国では未承認だがBreakthrough Device指定。
AIによる網膜画像解析を用いた心血管リスク評価:前向き多施設試験(CLAiR AI trial: https://clinicaltrials.gov/study/NCT06808334)の再構成
背景
心血管疾患の一次予防において、10年ASCVDリスク評価は脂質低下療法導入の重要な判断基準である。従来は2013年のAmerican College of Cardiology / American Heart Associationガイドラインに基づくPooled Cohort Equations(閾値7.5%)が用いられてきたが、近年はより低い閾値(5%)を採用するPREVENTスコアへの移行が進んでいる。
一方、網膜血管は全身血管病変の反映であることが知られており、AIを用いた画像解析により非侵襲的に心血管リスクを推定する試みが進んでいる。
目的
網膜画像解析AIアルゴリズムの心血管リスク推定能を、従来のASCVDリスクスコアと比較し、その臨床的有用性を検証すること。
方法
研究デザイン:前向き多施設ランダム化試験(CLAiR AI trial)
対象:
ASCVD既往なし
脂質低下療法未施行
重度眼疾患なし
登録数:847例
施設:米国の眼科・プライマリケア施設10施設
評価項目:
網膜画像AIによるリスク推定
従来の10年ASCVDリスク(Pooled Cohort Equations)
追加データ:血圧、脂質プロファイル
結果
1. リスク分布26.3%がASCVDリスク7.5%以上
→ 未治療の一般集団でも高リスク者が一定割合存在することを示唆
2. AIアルゴリズム性能感度:91.1%(95%CI 87.4–94.4)
特異度:86.2%(95%CI 83.5–88.6)
陽性的中率:70.2%
陰性的中率:96.4%
AUC:0.96
→ 従来リスクスコアとの高い一致性と識別能を示した
3. 技術的特徴94%以上の画像が解析可能
散瞳不要
撮影時間:約20秒
非侵襲(放射線・採血不要)
考察
1. 本研究の意義多くのAI研究が後ろ向きデータであるのに対し、本研究は前向き設計
多施設・多様な人種構成を含む点で外的妥当性が高い
プライマリケアや眼科診療の現場でスクリーニングツールとして実装可能
2. 臨床的インパクト
本技術は以下の利点を持つ:
非侵襲的スクリーニング
外来診療で即時実施可能
未治療ハイリスク患者の早期同定
→ 特に「未治療だが治療適応のある集団」の発見に有用
3. 限界と今後の課題
より大規模な検証研究が必要
リスク推定にとどまらず、
冠動脈プラーク
心筋梗塞発症リスク
などアウトカム予測への発展が求められる
結論
網膜画像解析AIは、従来のASCVDリスクスコアと高い一致性を示し、非侵襲かつ迅速な心血管リスク評価ツールとして有望である。特に一次予防領域において、未治療高リスク患者の同定に寄与する可能性がある。
Take-home message
網膜AIは**“血管の窓”としての眼底を活用した新しいCVリスク評価法**
感度・特異度ともに高く、臨床導入の現実性あり
今後は「リスク推定」から「疾患予測」への進化が鍵

