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株式公開のメリット・デメリット

 先日オーバーラップ吸収合併のニュースについて書いた。
 オーバーラップはIPOを目指しているとも聞いていたが、私は正直コンテンツ産業は公開株にしない方が良いと思っている。
 その理由をつらつら書いてみようかと思う。

株式公開のメリット

 株式を市場公開すると何が良いのか?
 一番は株主がキャピタルゲインを得られることだ。市場で売買されるようになれば、その株式を求める人が増え、結果株価が上がり、元の株主はそれを売却することで大きな益が得られる。
 多くのベンチャー企業はこれを目指す。
 これは悪いことではないが、そこで働く人や取引企業、関係産業で働く人にとって見ると基本的には関係ない話で、株主がどれだけ儲けても、それが還元されることは無い。

 次に、会社が株式を新規発行して、市場から資金を調達しやすくなるというのも1つのメリットだ。だが、実際にはそういった資金調達はたまに行われる程度だ。
 なぜなら、上場できるほどしっかりと基幹事業を持っている会社は、基本的には運転資金はある程度賄えていることが多く、新規で事業を起こす、工場を作るといった際でもなければまとまった投資の資金は必要ない。
 そして逆に新規株式を発行してしまうと、株式の流通量があがり、需要と共有の関係から株価が下がるため、既存の株主はそれを嫌がる。基本的に新規株式発行に伴う手続きは株主総会の承認が必要なものが多いため、安易な新規発行は反対されがちだ。

 そして、最後に信用のメリットがある。金融機関からお金を借りる、社債を発行するという手段が資金調達としてはむしろ一般的だが、上場企業はそれがしやすい。なぜならば最終的には市場調達するという手段があり、お金を貸したほうの回収のリスクが少ないから。

 他にも企業ブランドが上がり、採用がやりやすいとか細々メリットはあると思うが主にこの3点が株式公開のメリットだろう。非上場企業だって企業ブランドの高い会社はいっぱいある。

株式公開のデメリット

 一方のデメリットだが、まずは、会社体制の整備と、上場を維持するコストが跳ね上がることがあげられる。
 上場企業は、市場や株主に対して適切な四半期に1度、開示をする必要がある。きちんと会計を締めて、開示情報をまとめる必要があるが、これがまずハードルとなる。

 そもそも会計においても、しっかりしたルール(会計基準)にのっとった会計をする必要がある。非上場の中小企業では税務のついでに会計をやっているような形をとっているところも珍しくは無く、税務と経理は似ているようで結構違うため、ちゃんと会計基準にのっとった処理をしようとすると、結構いろいろとやり方を変えたりする必要がある。

 例えば、現在、上場企業には新収益認識基準が適用されているため、委託取引は純額処理をしなければならないが、上場企業以外はどちらを採用しても良いことになっていたりする。
 原価対応だって、基本的には売上と原価は対応させなければいけないため、電子書籍のように実体のないものの販売をする場合、その制作にかかったコストは仕掛品計上しておき、売上が上がってから、売上に応じて原価計上をしなければならない、というのが原則論になる。
 実際には売上計上してから、過去実態から算出される販売期間で期間按分をするケースが多いが、非上場企業は下手をすると仕掛計上すらせずに、支払い時に費用計上しているケースだって多いだろうと思われる。

 そうやって会計を何とか整えたとしても、事業をセグメント分解して開示する必要があるし、必須ではないが、それぞれの事業の状況をわかりやすくするために、KPIなども合わせて開示し、説明する必要がある。
 事業を分解するには、事業をどういう形で区切るのか、間接コストをどう各事業に割り振るのか、といったことも決めて計算する必要があり、大抵の場合は、組織を軸にセグメント化するので、きちんとした組織構成と、管理会計を敷かなければ難しい。
 KPIにしてもその情報をどこからどうやって吸い上げるかを決めて仕組みを作らねばならない。それは結構な手間暇のかかることで、大抵の場合はきちんとした商品マスターや、取引トランザクション処理のシステム化やDB化などがワンセットになる。
 書店商売で、顧客の年齢層をKPIにしようと思ったら、レジ打ちの際に想定年齢を入れる、とか、顧客にポイントカードを発行してそれで処理してもらうかといった処理が必要だということだ。
 

 グループ会社があればそこも同じようにやってもらわねばならないし、連結会計もしなければならない。
 さらに、各種規則や規程をしっかりと準備、運用し、コンプライアンス遵守のための各種研修等を行って社員を教育するなども必要だ。
 ガバナンスをきちんと担保できる仕組みも必要で、社内の意思決定も誰がどの権限でどんなことが意思決定できるのかを整備しなければならない。
 年1回、多くの株主を集める株主総会開催し、説明することも必要だし、株価を上げるための各種資本政策だって必要になってくる。 

 はっきり言って、死ぬほど手間暇がかかり、それのために必要な人員も仕組みも多くなる。会社の規模や上場する市場にもよるが、グロース市場なら年間数千万、スタンダード市場なら年間1億程度、プライム市場だと年間数億はコスト増になるようなイメージだ。
 正直それだけのコストや労力をかけて上場を維持するメリットが、なかなか得にくいと思うのがコンテンツ企業だ。
 特に、出版事業は、個々の商売は小ぶりで、投資額もそれほど多くなく、自社で工場を作るわけでもない。大きな新規資金調達需要があまりないため、上場のメリットが生かせない。
 ゲーム開発とかであれば、開発予算規模が数十億円とかって規模になるので、まぁまだわかるのだが、今度は逆にバクチ要素が強すぎて、常に成長することを求める市場の要望に逆に応えられなくなるので、そちらはそちらであまり向いていない。
 コンテンツ制作は基本的にはバクチだ。作っているものが面白いかどうかと売れるか否かは別だし、時代によって、その時々の雰囲気によって、売れるもの、人気の出るものは変わってくる。
 夏アニメ「しかのこ」があんなにバズると予想できた人はあまりいないだろうし、「ロシデレ」も1月放送開始に入っていたとしたら人気は変わってきただろう。

 なので、COVERやANYCOLORが上場した際、私は非常にびっくりしたし、辞めとけばいいのにとも思った。
 創業者は大儲けできるが、そこで働いている社員やライバーの人たちは、窮屈に思う機会は増えるだろうし、マネジメント会社が上場したからといって大したメリットは無いのだから。
 もし、コンテンツ企業で働いていて、上場を目指すぞと言われたら、悪いことは言わない、やめておいた方がいい。心底からの忠告だ。

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