怪談百物語#85 羽
休日、部屋の掃除をしていると羽が落ちていた。
細くて小さなそれは、おそらく羽毛布団から漏れ出たものだろう。
学校から帰ってきて自分の部屋に入ると、また羽が落ちていた。
羽毛布団のどこかに穴が開いているのか調べたが、どこにも瑕疵は無い。
ダウンジャケットの羽毛なのだろうか。
冬も本番が近い。
衣替えの時にでも調べてみよう。
朝目が覚めると布団の中、足元に羽が入っていた。
やはりこの布団が原因だ。
足元を見るが穴もほつれもない。
何なんだ一体。
4限目が終わって学食へ向かう。
友人達に最近起きた奇妙な体験を話す。
まあそんなこともあるよな、と流される。
少しイラっとしたので友人の皿からから揚げを奪う。
ざらざらした異物感。
舌の上に乗せて指で摘まんでみると羽だった。
信じさせるためだろうと、こんな汚いものを見せるわけにはいかない。
トイレに行くと言って席を立った。
口内はまだざらざらする。
次から次に羽が、口から出てくる。
摘まみ出しても一枚。
うがいをしても一枚。
何をしても尽きずに出続ける。
おげっ、がっ。
嘔吐た。
胃液に羽が浮かんでいる。
いち、に、さん
数えるのを止めた。
最後にもう一度だけうがいをして食堂に戻る。
口内にはまたざらざらした感触。
友人に体調が悪いと伝え、職員室へ。
担任に体調が悪いことを伝えると早退の許可が出た。
母に迎えに来てもらうことになり、そのまま病院へと向かう。
気遣う母には悪いが早退の理由は話せなかった。
こんな話信じてくれないだろう。
放送で番号が呼ばれる。
母には待合室に残ってもらって、一人に診察室へ入る。
症状を伝えると医者は信じられないような顔でこちらを見た。
胡散臭いものを見るような。
証拠になるかはわからないが、羽を口から摘まんで出す。
次々と。
胃の中に異物がないかエコーで見てもらう。
全て吐き出した後だからか何も映らない。
横になっている今も、口の中には異物感があるのに。
番号を呼ばれて薬を受け取る。
うちじゃ手に負えないと言われた。
そうか。
心配そうな母に訳を話す。
母はしばらく物思いにふけると、とりあえず羽毛布団とダウンジャケットを捨てるようにと言った。
週末になると車に家中の羽毛製品を乗せてゴミ処理場へ。
手続きを済ませるとそのまま家具屋へ向かう。
家族分の分厚い布団を買って帰ると、寝具の準備を済ませる。
カバーをかけて試しに寝てみる。
少し寒いが不思議とぐっすり眠れた。
それからは部屋で羽毛を見ることも、口から出ることもなくなった。
念のために鶏肉を食べるのも止めた。
