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怪談百物語#67 落ちる

落ちる夢を見たんだ。
みんなも経験あるかな、あのビクッとして起きるやつ。
あれ授業中にやっちゃうと恥ずかしいよね。
そんなよくある夢なんだけど。
落ち続けたことある?

長い間落ち続けてるとさ「あ、これ夢だ。」って気づいたんだよね。
覚醒夢?かな。
これは夢だって気づくと何でも自由にできるんだよね。
空を飛んだり有名人と遊んだり。
でも自由にできなかった。
空は飛べないし落ちるだけ。

そのまま落ち続けてると、ふわっと浮かぶ感覚があって。
地面に足が着いたんだ。
たぶんここは底なんだ、ってその時は思ったね。
ツルツルしてるけど滑らない地面のほか、周りには何もない。
せっかく自由に動けるんだから、何か見つかるまで歩いてみることにしたんだ。
何も見つからなかったね。
どれだけ歩いても疲れないことに気付いてからは全速力で走ってみたよ。
汗もかかないし息も切れない。
やっぱり夢なんだなって思った。

それでしばらく走ってると見えてきたんだ。
地平線みたいに見えるずっと遠くに壁が見えたんだ。
すごく大きくて山みたいな壁。
あそこまで走ろうとした思った矢先。
首元を後ろから摘ままれたような感触、痛みと共に目が覚めた。

何か摘まみ出されたような気がした。
変な夢を見たせいか、寝違えたみたいで首が痛かった。
首の筋を伸ばしながら痛む部分を手で押さえてみたんだ。
うなじが熱かった。
鏡でどうにか見てみると、左右から摘ままれたように赤くなっていた。

ただの夢だと思うんだよね。
落ちても怪我しないし、走り回っても息切れしないし。
でもさ、夢っておかしいよな。
行ったことのない場所へ行けたり。
会ったことのない人に会えたり。
あの首元を摘まんだ奴もたぶん会ったことがない奴だと思う。
夢の世界の住人、とかいうと馬鹿げてるかな。
今度同じようなことがあったら振り向いてみるよ。
多分大丈夫だろ。
どうせ夢だし。

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