怪談百物語#24 優しい人
家族が増えたので引っ越すことになった。
畳がある家がいいと言うので、和室のあるマンションを選ぶ。
いつでも手足を伸ばして寝転べる。
和室はやっぱり良いもんだ。
しばらく住んでいると畳に染みが浮かんできた。
敷金がっぽりとっておきながら、なんだよ。
欠陥住宅じゃないか。
畳を剥がすと案の定、湿気ていた。
管理人さんに電話をするととりあえず見に来るらしい。
荷ほどきがまだ済んでいない部屋。
あまり見せたくないんだが。
その週の日曜、朝からインターホンが鳴る。
管理人だ。
文句のひとつでも言ってやろうと、眉間にしわを作りながらドアを開ける。
「ヒィッ。」
そんなにビビるなよ、悪いことした気になるだろ。
被害者はこっちだっていうのに。
「すみません、部屋には上がれません。」
更に眉間にしわが寄り、目つきが鋭くなるのがわかる。
どういう事だ?
「あんた、あんたのせいじゃないか?畳の染みだよ!ふざけるな!」
急に叫び出すと、管理人は走って去っていった。
意味が分からない。
部屋を借りる際に利用した不動産屋に電話をする。
あいつおかしいんじゃないのか?
管理人に対する苦情と、次の部屋を探すよう依頼する。
「申し訳ございません。あの管理人たまにそうなるんですよ。本人に事情をたずねたんですが、なんだか『見える』そうでして。」
仕方がないらしいんですよ。うちも困るんですがね。
そうすまなさそうにいう不動産屋に、もういいと伝えて電話を切った。
なんだ、悪いことしたな。
月が変わり、新しい家に引っ越した。
また和室があるマンションを選んだ。
ここでもまた家族が増えそうだ。
天井、壁、畳。そして新たに浴室。
家族がにぎやかに話している。
彼らの死因は自殺。
恨み言が尽きるまで、私は一緒に居ようと決めている。
