怪談百物語#60 動画だよ
「おい、見ろよこれ。」
スマホを突き出した友人がニヤニヤ笑っている。
「なんだよこれ。心霊写真?」
「違うよ、この間撮ったあれだよ。心霊動画だよ!」
先週の日曜に、霊が出るという噂のトンネルに二人で行った時のか。
撮れてなかったらまた来よう、って誘われてたけど。
映ってて良かった。
自転車で山一つ越えるのはもうこりごりだ。
あの日だって昼から出かけて、着いたらすぐ取って帰ったのに。
家に着く頃には夜の7時。
家族にがっつり怒られたからな。
俺に見せつけた後、友人はクラス中に自慢して回ってた。
興味深そうに見ているやつもいれば、変なもの見せるなと怒り出すやつもいる。
それにしてもあの動画を見てから何か視界がおかしい。
目の端に変なものが見える。
黒い靄みたいな。
バイト代入るし眼科寄って帰るか。
次の日、登校した途端友人が話しかけてきた。
興奮しているようで息が荒い。
「この間の動画、やばい。」
何がヤバいんだよ。
とりあえず落ち着くように言い、話の続きを促した。
「あのな、あの動画見ると霊が見えるようになるんだ。」
「なんだよそれ。出鱈目言うなよ。」
「嘘じゃないって。動画を見れば見るほど霊がはっきり見えてきたんだよ。」
ほら見てみろよ、とスマホで例の動画を見せられる。
するとまた黒い靄が目の端にちらつく。
眼科では異常がないと言われたが、一日経ってようやく落ち着いたというのに。
「おいまさか。」
友人は満足そうにうなずく。
「そう、それだよ!お前の両隣にいるの見えるだろ?」
なんかもっとくっきり見えるもんかと思ってた。
これどうすれば見えなくなるんだ?
わかり切ってはいたが一応聞いてみる。
「わからん。」
一言でばっさり切り捨てられた。
どうするんだよこれ。
目の端に映る黒い靄が消えない。
友人はあの動画をSNSにアップしたらしい。
興味本位でやることじゃないだろ、と思ったが幸い誰も霊が見えるようにはならなかったらしい。
嘘扱いされて友人は相当凹んでいた。
いい薬になるといいが。
家に帰るとパソコンの電源を入れる。
友人にわからんといわれてすぐに、有名心霊系Youtuberの憑依タクトさんに相談したんだ。
詳細を聞かれたので、霊が出るというトンネルで撮影したこと、動画に霊が映っていたこと、その動画を見てから霊が見えるようになったこと。
全て話した。
すると「今日の配信で取り扱うから、良ければその動画を送って欲しい。」と返信が来た。
友人がアップロードしたSNSのアドレスを送ると、調べてくれると言ってくれた。
なにかわかるといいけど。
配信が始まった。
早速、俺の相談内容が配信画面に表示された。
「送っていただいた動画、確かに映ってますね。でもこれを見てどうこうということはありませんね。」
ほっとした。
やっぱりなんともないのか。
じゃあこの黒い靄はなんだろう。
別の眼科を探そうか、そう考えていると配信画面が変わった。
「この撮影したスマホが呪われてます。そのスマホで見たせいで見えるようになったんだと思われます。」
すぐに捨てて下さい、そう言って配信は次の相談に移っていった。
早速友人にメッセージを送るが返信が来ない。
電話をかけても応答がない。
そりゃそうだ、スマホが呪われてるんだもんあ。
出させるわけがないよな。
あいつ無事だろうか。
明日、学校に行くのが怖い。
