【内省讃歌:009】年齢を理由に焦るのは悪手
どうも、プンです。
20代までに、こうならねば。
30代のうちに、これをやらねば。
40代では、こうあらねば。
子供の頃、誕生日は無条件に嬉しいものでした。
ケーキを食べ、プレゼントをもらい、「早く大人になりたい」と無邪気に願っていたはずです。
しかし、20代、30代、40代と歳を重ねるにつれて、誕生日は「得体の知れない焦りを連れてくる日」へと変貌します。
ふと鏡を見た時、あるいは同級生の結婚や出世のSNSを見た時、心臓がギュッと締め付けられるような感覚に襲われないでしょうか。
「20代後半になるけど仕事上手くいってない」
「もう30歳になるのに、自分はこれでいいのか?」
「40歳手前なのに、誇れるスキルも貯金もない。早く何者かにならなきゃ」
年齢というタイマーのカウントダウン音が耳元で鳴り響き、焦燥感で息ができなくなる。 私もかつて、この「年齢の呪い」に殺されかけた人間の一人です。
20代はがむしゃらに働きましたが特段強くはなれなかった。
そして焦っていた。
しかし、私は今、焦っていません。
なぜなら、「年齢を理由にして焦って行動すること」が、自分の人生を破壊してしまう、最も愚かで致命的な『悪手』であると、身をもって痛感しているからです。
今回は、年齢という数字に追い詰められ、焦りで自分を見失いそうになっているあなたへ。
なぜ「もう〇歳だから」という思考があなたの人生を狂わせるのか。
そして、その焦りをエンジニア的視点で修正し、自分だけのペースを取り戻すための思考のアーキテクチャをお話しします。
社会が強制実行する「年齢のCronジョブ」の罠
なぜ私たちは、自分の意志とは関係なく、ある年齢に達すると急に焦り出すのでしょうか。
それは、社会という巨大なシステムが、私たちの脳内に「Cron(クロン)」を勝手に仕込んでいるからです。
ITの世界に詳しくない方のために説明すると、「Cron」とは、システム開発において「決まった時間や日時に、特定のプログラムを自動で実行する機能」のことです。例えば、「毎日深夜0時に、データのバックアップ処理を実行する」といったタイマー機能です。
私たちが生きる社会にも、このCronジョブが強力に設定されています。
「22歳になったら『就職活動プログラム』を実行せよ」
「30歳になったら『結婚・マイホーム購入プログラム』を実行せよ」
「35歳になったら『管理職・年収アッププログラム』を実行せよ」
私たちは生まれた時から、この「年齢ベースの自動実行タイマー」を親や学校、メディアから無意識のうちに脳へ叩き込まれています。
しかし、ここに致命的なエラーの原因があります。
社会が用意したこのCronジョブは、昭和から平成にかけて作られた「レガシー(旧式)システム」の仕様のままなのです。
終身雇用が約束され、皆が同じ方向を向いて生きていた時代に作られた、古臭いタイマーです。
現代を生きる私たちのハードウェア(心身の状態、多様な価値観、経済状況)は、30歳になろうが40歳になろうが、人それぞれ全く違います。
それなのに、自分のスペックや準備が全く追いついていない状態で、年齢というタイマーだけをトリガーにして「さあ、30歳になったから重い処理(結婚、出世、成功)を強制実行しろ!」と社会から命令される。
当然、処理能力が追いつかず、脳はパニックを起こします。
「周りはみんな正常に処理を完了しているのに、なぜ自分はできないんだ」と焦り、無理やりプログラムを回そうとする。
これが、私たちが年齢によって感じる「焦り」の正体です。
そして鬱などにも繋がるのです。
焦って「オーバークロック」した私の末路
この「年齢のCronジョブ」に抗えず、焦りに支配されてシステムを破壊したのが、過去の私です。
23歳から26歳頃、私の脳内には強烈なアラートが鳴り響いていました。 「もうすぐ20代が終わってしまう。もっと結果を出さなきゃだめだ。稼がなきゃダメだ。同年代の優秀な奴らに置いていかれる。早く『年齢相応の立派な大人』にならなきゃ」
自分の内面(ソフトウェア)はまだポンコツで、自分が本当に何をしたいのか、どんな働き方が心地よいのかという「要件定義」すら終わっていない状態でした。
にもかかわらず、私は「30歳」に向かう年齢の焦りから、とにかく様々な仕事をしては、様々な副業をして、自分の体に鞭打って焦って動いていました。
結果全部が中途半端で結果なんて出ませんでした。
パソコンのCPUを、本来の安全な性能限界を超えて無理やり高速で動作させることを、エンジニア用語で「オーバークロック」と言います。
私はまさに、年齢への焦りから、自分自身をオーバークロックさせました。
自分の本当のキャパシティ(仕様)を無視して、年齢というタイマーに急かされるまま重い処理を回し続けた結果、私の心身は水面下で焼け焦げていました。
「〇歳だから、これくらいやらなきゃ」 この焦りは、あなたに一時的なブーストをかけるかもしれません。
しかし、自分の内なる準備が整っていないのに、年齢という外部要因で自分をオーバークロックさせれば、確実に人生の基盤は焼き切れます。
私は20代後半でこの思考を切り離し、人生が上手く生き始めました。
年齢に合わせて自分を焦らせることは、百害あって一利なしの最悪の手なのです。
年齢による焦りが引き起こす「3つの致命的バグ」
自分の本当のスペックを無視して、年齢の焦りから無理やり人生を先に進めようとすると、システムには必ず歪みが生じます。
具体的に、焦りは私たちの人生にどのようなエラーを引き起こすのか。
私は大きく分けて「3つの致命的なバグ」が存在すると考えています。
① 技術的負債の蓄積
焦っている時、人は必ず「ショートカット」を選びます。
「もう35歳だから、一から勉強している暇はない」
「早く稼げる手っ取り早い副業をやらなきゃ」。
ITの世界では、目先のリリース(成果)を優先して、コードの整理や根本的な設計(基礎工事)を後回しにすることを「技術的負債(テクニカルデット)」と呼びます。
焦って手に入れた「薄っぺらいノウハウ」や「妥協した仕事」は、その場しのぎにはなりますが、後から必ず巨大な負債となって自分に襲いかかってきます。
40代、50代になった時、「自分には何の積み上げも、本質的なスキルもない」という事実に直面し、システムは完全に身動きが取れなくなります。
焦るほど、実は長期的な首を絞めているのです。
② 他人のソースコードのコピペ
「30歳までにやるべきこと」
「40代で差がつく習慣」。
焦っていると、ネットや本に転がっている他人の「成功のソースコード」を、そのまま自分にコピペしようとします。
しかし、他人の環境で動いたプログラムが、あなたの環境(性格、体力、家族構成)で正常に動く保証はどこにもありません。
自分の内面(要件定義)を見つめる作業をすっ飛ばして他人のコードをコピペするから、「言われた通りにやっているのに苦しい」「なぜかうまくいかない」というエラーを延々と吐き出し続けることになります。
③ 現在地(今この瞬間)の喪失
これが最も悲しいバグです。
「30歳までに」「40歳までに」と、未来の年齢という「まだ存在しないデータ」ばかりにメモリを奪われていると、目の前にある「現在処理中のデータ」をすべて見落としてしまいます。
今、目の前で笑っている子供の顔。
今日、自分が新しく学べた小さな喜び。
そうした「今この瞬間」の美しいデータを味わうためのCPUが、未来への焦りで完全に占拠されてしまうのです。
生きているのに、心はいつも「まだ届かない未来」を彷徨っている。
こんなに虚しいことはありません。
時間を「UNIXタイムスタンプ」として捉え直す
では、この呪いから抜け出すにはどうすればいいのか。
まずは、「年齢」や「時間」というものに対する解釈を、エンジニア的に書き換えてみます。
プログラミングの世界で時間を管理する際、「UNIXタイムスタンプ」という概念がよく使われます。
これは、「1970年1月1日午前0時0分0秒から、現在までに何秒経過したか」を表す、ただの無機質な数字の羅列です。(例:1716680000 のような数字です)
コンピュータにとって、時間とはただの「経過した秒数のデータ」でしかありません。
そこに「もう30歳だからヤバい」とか「40歳なのに恥ずかしい」といった感情や意味づけは、1ミリも存在しないのです。
私たちも、年齢をこのUNIXタイムスタンプと同じように捉えるべきです。
あなたが今30歳だろうが、45歳だろうが、それは単なる「地球に生まれてから経過した秒数」というデータに過ぎません。
社会は「そのデータが一定の値を超えたら、立派な大人になっていなければならない」と勝手な意味づけを押し付けてきますが、そんなものは無視して構いません。
人間のハードウェア(肉体)は、確かに経年劣化するかもしれません。
しかし、ソフトウェア(思考、生き方)は、年齢という数字に一切縛られません。 30歳でも、50歳でも、70歳でも、あなたが「変わろう」と思ったその瞬間に、最新バージョンへと書き換えることができるのです。
年齢は、あなたの考え方や生き方の限界を決める変数ではありません。
「時間駆動(タイマー)」から「イベント駆動」へアーキテクチャへ
年齢というタイマー(Cron)を脳内から削除し、時間をUNIXタイムスタンプのように無機質に考えるようになったら、次にシステムの「動かし方」そのものを変更します。
これからの人生は、年齢で動く「時間駆動(タイマーベース)」ではなく、「イベント駆動(Event-Driven)」のアーキテクチャに切り替えてください。
イベント駆動とは、「何時になったら動く」のではなく、「システム上で『特定の事象(イベント)』が発生した時に初めて動く」という設計手法です。 例えば、「ボタンが押されたら画面を切り替える」「エラーが起きたら通知を出す」といった仕組みです。
人生におけるイベント駆動とは、こういうことです。
「30歳になったから(時間)結婚して転職する」のではありません。
「内省を繰り返して、自分が心からやりたい仕事が見つかったから(イベント発生)、転職する」。
「大切な人が病気になったから(イベント発生)、働き方を根本的に変える決断をする」。
外部の時計に急かされるのではなく、「自分の内側で起きた感情の変化」や「目の前で起きた現実の事象」という『イベント』だけをトリガーにして、自分のペースでプログラムを実行していくのです。
遅すぎることはない。今日から修正すれば良い
「もう〇歳だから」。
この言葉を口にするたびに、あなたは自分自身の可能性というメモリを物理的に破壊しています。
周りの同級生が立派な役職に就いていても、SNSで年下の起業家が何億も稼いでいても、焦る必要は全くありません。
彼らは「彼らのOS」で、「彼らのタイマー」に合わせて走っているだけです。
あなたがそこに参加して、無理やり自分をオーバークロックさせれば、待っているのはシステムクラッシュ(鬱と絶望)だけです。
年齢という、社会が勝手に設定した狂った時計を見るのは、もう終わりにしましょう。
あなたが目を向けるべきは、時計ではなく、「あなた自身の内面のソースコード」です。
自分のポンコツな仕様を認め、何が好きで何が嫌いかを内省で洗い出し、自分のペースで一行ずつコードを書き直していく。 その作業に、「遅すぎる年齢」などこの世に存在しません。
焦らなくて大丈夫です。
どうか今日から、他人のタイマーで走るのをやめ、あなただけのイベント(心の動き)に従って、自分自身の人生のソースコードを、ゆっくりと、しかし確実に書き換えていってください。

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