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なぜ行政ではDXが進まないのか(1)「そもそもDXとは何かわかっていないから」

「なぜ行政ではDXが進まないのか」

このワードで検索すると、たくさんの記事がヒットします。
どの記事にも共通して挙げられている原因は、①職員のデジタル人材が不足、②予算、③前例踏襲主義・業務変革への抵抗感、④アナログ文化、⑤既存業務で手一杯のような趣旨の内容です。

どれも専門家の方が指摘されるごもっともな内容ですが、やっぱり外部の人からの視点なんですよね。
私は内部にいながら日曜プログラマでもあるので、行政職員としての視点とプログラマとしての視点の両方で地方自治体という組織を25年見てきました。

そんな私が出した結論は、
「なぜ行政ではDXが進まないのか。それは、そもそもDXとは何か分かっていないから」
です。


じゃあ、そもそもDXって?

DXとは読んで字のごとく「Digital Transformation(デジタル・トランスフフォーメーション)=デジタル技術による変革」であり、デジタルの力で社会と人々の行動様式に変革が起きた状態のことなのです。

1つのデジタルツールを導入したからと実現するものではなく、フロントヤード改革などの1つの事業完遂で成し得るものでもありません。

飛び級でできるものではなく、身近にある小さな一つひとつの不便に気付き、それをデジタル技術が起こす革新で解決していき、その革新が同時多発的連鎖的に起こったその先に実現する状態こそがDXなのだと思います。

デジタル技術を活用することは単なる手段に過ぎず、それによって「人々の行動がどう変容するか」「職員の働き方がどう変化するか」、そんな将来像=目的・目標を思い描くことがDX実現の第一歩だと考えています。

変革=トランスフォーメーションとは?

私が考える「変わる」ことのレベル

変わることにはレベルがあります。
最も身近で小さな個人レベルの作業が変わる「変化」、
自分だけでなく所属している部署で取り組んでいる業務の進め方が変わる「革新」、
所属部署だけでなく組織そのものの業務の在り方が変わる「変革」、
産業革命と呼ばれるとおり、世界の在り方さえ変えてしまう「革命」。

DXって、私にとってはレベル3。
たくさんの変化と革新を積み上げて初めて実現できるものだと思います。

行政は素人職員にいきなりレベル3を担わせる

行政は、DXといえば最新のデジタル技術を導入する、組織全体に及ぼすようなシステムを構築する、デジタル技術を活用してBPR=業務改革を起こす、そんなレベル3をいきなり導入しDXを実現しようとします。

規模が大きく、専門性も高い、そんなレベル3をいきなり導入しようとするから、デジタルの専門家ではない行政職員には荷が重く、腰が引けるのは当然だし、ついていけないから前に進めないのです。

しかも、そんな大規模な変革であっても当てがわれる人材は基本的に担当者1人だけ。

その担当者もデジタルに関する専門的な知識と技術は持ち合わせていないから、要件も定義できず、仕様も策定できないからベンダさんの言うとおりにするしかない。

なんならベンダさんだってよりよいモノにするため、もっと要件でも仕様でも要求して欲しいと思っているのに、行政側からは専門性の高いことは分からないからお任せしますと放り投げられて終わり。

これでは現実や実務に則したシステムなんてできるはずもなく、むしろ元より煩雑で不便になってしまうことなんてザラです。

「行政と開発側の対話が足りていない。」

そんな状況に陥ってしまう原因はこれに尽きます。

なぜ対話を深めないのか?

行政側だってベンダ側だって、最初は対話をしようとはするのです。
でも、同じ日本語でも、行政の発する言葉とベンダさんの発する言葉はもはや異国語であり共通言語ではありません。

いわゆる行政用語や行政の常識は民間に属する人には伝わらない理解できない世界だし、当然、システムを開発するようなエンジニアやプログラマの発する専門的な用語や概念は素人には全く通じません。

どちらが優れているとかそういうことではなく、やはり「住んでいる世界が違う=常識が違う」ことが、意思疎通がとれない原因であり、お互い歩み寄ろうとしてもそのための言葉と常識が分からないのです。

結果、対話を深めようにも、お互いに「コイツ何言ってるんだ?」状態になってしまい、それ以上、対話を深めることがないまま期限があるからプロジェクトを進めざるを得なくなるのです。

「行政と開発の架け橋となる翻訳者」

この翻訳者がいるかいないかで、出来上がるモノは全然違ってきます。

将来=目標を見据えていない

行政は、本来は手段に過ぎないデジタル技術の導入こそがDXであると思考停止しているので、その先に描くべき地域社会と人々の行動様式の変容にまで考えが至らず、デジタル技術を導入したその先をイメージすることができないのもDXが進まない一因です。

「未来=目的を見据えて、そこから現状=問題に向けて逆算的にアプローチし、適切な課題=ギャップを細かなステップに分けて設定する」

これが職員個人としても組織としてもできないから行政はDX実現に向けて前進することができないのです。
これは、長いあいだ行政職員を経験して私が常に感じてきたことです。

レベル1:直接効果=アウトプット
レベル2:間接効果=アウトカム
レベル3:波及効果=インパクト

業務や施策に取り組む以上、起こしたい未来としてこの3つの変化を意識して業務に邁進するべきなのですが、実際にこれらを意識している職員は私の体感では5%にも満たないと思っています。

まずはレベル1:変化から

とかく行政はすぐに成果を求めますが、冒頭に述べたとおりDXとは飛び級で一気に実現できるものではありません。

まずは職員ひとりひとりが身近な業務の不便さに気づき、デジタルの力でその不便さを解消することが始まりだと思います。

小さな変化の成功体験を積むうちに、次は革新を起こせるイメージを沸かせることができるようになります。
その革新のイメージを実現していくうちに、行政と開発の翻訳者にもなれるでしょう。

そんな人材を中長期的に育て、あちらこちらで革新が起きていくことで組織として変革を達成することができるようになると確信しています。

「人を育てずしてDXはならず」

人材を育てることなく、システムを入れれば、何か先進的な事業をすればいいと思っているうちはDXは実現はしません。

これが私が考える行政でDXが進まない原因です。

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