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This is a snowscoot. 変わり者たちの世界戦

スノースクートは相変わらず「変わった乗り物」

今年も「変わってるね」と言われる。
たぶんそれは、いまだに流行っていないからでもある。

それは少し、もどかしい。
もっと広がってもいいのに、と思う日もある。
でも、ここまで来るとそれは案外幸せなことなんじゃないかとも思う。

もしスノースクートが大バズしたら、それはそれで最高だ。
でも、数年後にはきっと
「まだやってんの〜?」なんて空気も生まれるだろう。
現在もスクートはじっくり熟成されている。
流行ではなく、少数派の熱量で。

そんなスノースクートだから
仲間に出会えるスクートトリップはやっぱり最高なんだと思う。

腕前も国籍も関係ない。
「これ」に乗っている。
たったそれだけで、仲良くなれるから。

各地のスノースクート愛好家に会いに行く。
遠くの大会へ出かけて、一緒にセッションする。
同じぐらいスクートを愛している人がいて、滑り、語る。

地元から離れた場所に行って滑るだけで、その旅は人生の1ページになる。

そして、いつかは日本を飛び出して、世界のライダーと滑りを通じて交流する。
最後は笑ってハイタッチする。

そんな旅を、スノースクートは本当に作ってくれる。

ローラ付きの黒いスクートケースの中には、
パッキングしたスクートと予備の板。
工具、ネジ、ヘルメットにリキッドワックス。
ケースの隙間にはブーツとウエアまで押し込める。
背中には日用品を詰め込んだバックパック。

スクート旅だから滑る道具と着替えさえあれば十分だけど。
旅は、オシャレも楽しまないと。
足元は履き慣れたスニーカーか、サンローランのレザーブーツ。
細身のジーンズにサングラス。白いシャツも持って行こうか。

ゴロゴロと異様な存在感を放ちながら、空港を歩く。
いよいよ荷物検査。
超過料金を節約してヘルメットは機内で被る。

ほら、検査員さんの訝しげな顔。

「これはなんですか?」

「This is a snowscoot!」

そんなことを言いながら、僕はスノースクートと一緒にいろんな国を旅してきた。

ニュージーランドでのカタログ撮影。
韓国でのジブデモンストレーション。
フランスでの水上スライドとハウツービデオ撮影。
そしてコロラドでのスクート修行旅。

どれも昨日のように思い出せる。

でも、強い「目的」を持ったスノースクート旅といえば、やっぱりこれだろう。
世界各地で持ち回りで開催されるチャンピオンシップ。
そう「スノースクート世界戦」だ。

少し昔の話になるけれど、毎シーズン行われる大会に、当時は日本からスノースクート選手団が集って大会遠征に出かける時期があった。

今ほどSNSどっぷりの時代じゃなかった。
だからこそ、各国のライダーたちの動向や滑りを、日本代表の選手たちが実際に現地へ行って競い、交流しにいくこと自体がとても貴重だった。

それが、スノースクートチャンピオンシップだった。

「今年は日本からは誰が行くんだろう?」
「去年の大会のあと、ホテルで事件あったらしいよ」

そんな話題も含めて、冬の大きな楽しみだった。

カナダでの世界大会の会場はケベック地方。
カナダの東側はフランスとの縁も深く、スノースクートライダーも多い。

成田から出発!日本からの選手団でツアーが始まる。

乗り換え乗り換え珍道中。
現地に着けば、そこからはロングドライブ。
でかいバンに人も荷物も詰め込んで、ロータリー交差点で右往左往。

それでも数人のメンバーがいれば責任も分散されて、気持ちも少し楽になる。
困ったら相談できる仲間がいる。
ジャンプ好き、レース好き、国内では滅多に一緒に行動しないメンバーでも、「無事に会場へたどり着いて滑り切る」という共通の目的があるだけで、たった一週間の旅の中に、かけがえのない関係が生まれたりする。

現地に着けば、ホテルでパーティが始まる。
スクートブランドやディストリビューターがイベントを仕切っている。

初対面だけど、お互い存在は知っているライダー。
久しぶりの再会で、思わずハグしてしまうライダー。

海外ライダーと交流して毎回思うのは、
「どれだけスノースクート好きやねん」
ということだ。

海を渡って滑りに来ている自分たちが言うのもなんだけど、
本当にスクート愛がすごい。

細かなスペックに異常に詳しいオタク。
ミーハー気味に全ライダーと交流したいベテラン。
MTB上がりの気合十分な若手フリースタイラー。
年中ワックスをかけていそうなガチレース勢。
眉毛がやたら太い男前。
なぜか彼は「AV男優」というニックネームで呼ばれていた。

フルサスペンションマシンに乗るカナダの女性ライダー、イザベラは酔っ払いながら、
「明日このスクートでバックフリップするわよ。来シーズンは妊活だから」
と言っていた。
(本当にチャレンジした。低空スレスレの回転で)

その中でもひときわ異彩を放っていたのが、CXXXフランプトンボーイズだった。
ガレージで自作スクートを作り続けるアラン・クレメントと、息子のニコラス・クレメントを中心としたチーム。

ヨーロッパからの遠征組もやる気十分で、その存在感には圧倒される。
滑ればスピードレンジが違う。
ライディングスキルも分厚い。
インテリっぽさの中に、どこか狂気がある。
近寄りがたいのに、一緒に滑るとすごくフレンドリー。

スノーボーダーほどやんちゃにも見えない。
スキーヤーほど寡黙でもない。
でも、国境を越えてもスノースクートに乗る者だけが持つ独特の共通の空気がある。

各国のスクートライダーが集まるだけで、会場はもう特別な場所になる。
自分の国以外で独自の進化を遂げたマシンとライダーが、一気に目の前に現れるのだから。

そして、大会が終わる。

ファンライドで参加して満足気なライダー、優勝を逃して崩れ落ちるライダー。
結果は結果として、参加したライダーたちはみんな充実感に満ちている。
緊張がほどけて、連絡先を交換し、再会を誓う。

記念写真を撮って、また会おうと言い合う。
そのときニコラス・クレメントが
「君にこれを渡したかったんだ」
と、自作のミニチュアスノースクート(しかもサス付き)と、赤いハンドメイドのビーニーをプレゼントしてくれた。

日本とカナダの外れ。
地球の端と端みたいな場所で、お互い今日もスノースクートを滑っている。
ただそれだけで友達になって、思い出が生まれる。

なんかあっという間の一週間だったな

帰りの飛行機で、少し目頭が熱くなった。

それから月日が流れ、ニコパパが亡くなったことを知った。

僕は遠いケベックに向けて、静かに黙祷した。

久しぶりに当時の写真を見返した
そうだった、カナダの雪面は硬く、タフだ。
だからローカルライダーたちは、そんなアイスバーンにも負けないハイパワーでエッジコンタクトの強いマシンを好んでいた。

ニコパパアランが最後に生み出そうとしていたスノースクート
それはストレートパイプをベースにした意欲的なジオメトリーだった。

「あとは、、頼む!」

アラン氏がSNSで残した投稿だった。


スイスでの世界戦は、日本屈指のクロスレーサーM夫妻との三人旅だった。

現地の空港で待ち合わせした僕たちの荷物は航空会社の取り違えで、どこかへ飛んでいってしまった。
スクートなければただの人。
週末のレースに本当に出られるのかと不安になりながら、それでも前夜祭へ向かった。

イベントを仕切るのは、スノースクートの生みの親フランク氏。
ヨーロッパは合理的なのかおおらかなのか、本当によくわからない。
フランクはその象徴みたいな人で、前夜祭の時点で早くも「会場が変更になるらしい」「でも新しい会場はまだ未定」みたいな噂が流れていた。

パーティでは純国産スクートDVD『スクートキル』の試写会をやってもらい、世界のライダーたちから拍手をもらって、こちらが恐縮した。
夜更けまで、酔っ払ったスクートライダーたちは、仲間やライバルとのスクートトークで盛り上がっていた。

もちろん、AV男優も来ていた。

その夜、M夫人は届かない荷物の中にメイク道具をすべて入れてしまっていて、乾燥した空気の中、お肌は完全にノーガード。
追い詰められた夫人は、僕が持っていた馬油を顔に塗りたくり、顔面だけ異様なツヤを放っていた。

レース中に告白してフラれたライダー
一ミリもセッティングを崩したくないと荷物検査で駄々をこねるレーサー
停電して氷点下の夜を過ごしたホステル
一人飯で何を頼んでもスープしか出てこなかった朝
コンテスト中に裸で滑って翌日のフランス新聞のトップを飾ったこと
若手ライダーへ団体行動重視せよと説教タイム
(外人に年功序列という言葉を教える意味の無さ)

非日常の中だからこその張り詰めた空気
そんな状況で起こるトラブル。
当時は真剣だけど、帰ってから思い返すと笑える話が沢山ある。

翌日、無事に我々のスクートを含めた荷物は空港に届いた。
ピックアップして組み上げ、そのまま大会スタート。

競技はクロスレース、スラローム、フリースタイルジャンプ。
完全プロテクター装備したライダーのフルサスペンションマシンをリジットスクートが追い抜いたりするのがやっぱり面白い。

ジャンプセクションはカリカリのチョモランマのように尖ったキッカーで
現地のライダーも「あれは飛んじゃいけない」なんて引いてた。
結局はみんな飛んで盛り上がるんだけど。。

ヨーロッパの選手層はぶ厚い。
イタリア、オランダ、ドイツ、スイス、フランス。
ベテラン勢を中心に、スクートマニアが集結している。
ニコラスピリン、デュシャン、エルベにマニュとブルース。パッチェ。
憧れのライダー、アップカマー
チェコやフィンランドのライダーも、みんなナイスガイだった。

そして別れ際、みんな口を揃えて言う。

「来年こそ日本で開催してくれよ。そしたらみんなで日本に滑りに行けるじゃないか」

結果も大事だけど、みんなスクートを通じて世界を旅したり交流する口実を探しているんだなと思った。

大会といっても、特別な参加資格がいらないものも多い。
スノースクートと自分の気持ちがあれば、誰でもエントリーできるレースもある。

もちろん、そこで活躍するには滑りの技術が必要だ。

でも、勝ちに行かなくたって。

世界のライダーと交流すること。
スノースクートで海外の大会に出るという目標を持つこと。
自分の滑りのレベルを腕試しすること。
そのために準備して、実行すること。

エントリーフォームを埋めて、エンターキーを押す。
パスポートを更新する。
飛行機代とにらめっこしながら、それでも行くと決める。

あとは、磨き込んだスノースクートがあればいい。

それは単なる観光とはまるで違う。
目的を持ったトリップだ。
大会という場があるだけで、その移動は特別な意味を持ち始める。

せっかくスノースクートに乗っているなら、もう十分に変わり者だ。
でもそれは、悪い意味じゃない。

変わっているからこそ見える景色がある。
変わっているからこそ会える仲間がいる。
スノースクートで世界を旅する権利がある。

だから、各国で行われる大会にエントリーしてみるのはどうだろう。
世界規模の大会でもいい。
ローカルレースでもいい。

青空にどっしりとした圧雪バーン
スクートブランドのバナーとテントが並ぶ
ゼッケンを付けて会場にいる姿が目に浮かんでくる。

やっべ〜緊張してきた。みんな身長でかいな〜

でもさ、ほら。
動画で見たことのあるようなライダーが、目の前から近づいてくる。

「Hey! 君は日本から来たの? 歓迎するよ。レース前に一本滑ろうぜ」

流行っていないから、まだ自由。まだ遠くへ行ける。
スクートを転がして世界をトリップすればもっと好きになる。

そして、、

世界で出会ったライダーたちに日本のパウダーを案内して、夕暮れまでセッションして大笑いしないと!

沢山のライダーと約束したんだから

それが僕らのスノースクートコネクションって。















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