見出し画像

冷めないうちにと思っていたホットケーキの夜に


深夜の住宅街は、
ある時間を過ぎると急に静かになる。

昼間、
中学生達が集まって立ち話をしている向かいの駐車場も、
夜9時を過ぎる頃には、
まるで最初から誰も居なかったみたいに静まり返る。

遠くで、
車のタイヤが乾いたアスファルトを撫でる音だけが時々聞こえる。

共有廊下の窓からは、
二軒隣のコインパーキングが見える。

ご予約のお客様は、
だいたいそこへ停められるので、
私は時々そこを眺める癖がある。

その夜もそうだった。

カウンターには、
焼きたてのホットケーキ。

前回ご来店された時、

「美味しい。
次もお願いしていいですか?」

そう言って、
少し嬉しそうに笑われていたので、

「はい、喜んで。
ちゃんと用意しときますからね」

そう約束していた。

四角いバター。
ハチミツ。
アールグレイ。

少し遅い時間だったので、
甘さは控えめにしていた。

モンクとチェット・ベイカーが、
小さな音で流れている。

クロだけが、
退屈そうに尻尾を揺らしていた。

定刻を15分ほど過ぎた頃、
私はホットケーキへ静かにラップを掛けた。

これ以上置くと、
少し固くなる。

LINEは未読のままだった。

まぁ、
今日も遅れるか、
難しくなったのだろう。

今に始まったことでもない。

そう思いながらも、
つい窓の外を見てしまう。

来ないだろうなと思いながら、
それでもどこかで、
車のライトを待っている。

クロ
「旦那」


「ん?」

クロ
「本日は、
我々側にも深刻な機会損失が発生している」


「来客があった日しか、
チュール出ないからねぇ」

クロは前足を揃えたまま、
少し不満そうに尻尾を左右へ揺らした。

その時だった。

――コン、コン。

「まだ起きてるー?」

聞き慣れた、
町中華のおばちゃんの声だった。

ただ、
いつもの
“リズミカルに三回”
ではなかった。

来客中のはずなのに、
下駄箱に靴が無い。

電気は点いているのに、
店の空気が妙に静か。

たぶん、
おばちゃんなりに
“何か変だ”
と思ったのだろう。

控えめに開いたドアの向こうには、
ブルージーンズにクロックス、
エプロン姿のおばちゃんが立っていた。

「来客中か思たけど、
靴ないやん」

この街の人は、
距離感が少し近い。

おばちゃんは、
下駄箱の上へ置いていた回収用の器を、
慣れた手つきでレジ袋へまとめ始める。

「そういや今日、
すみれのママ来とったで」

平野で長く店をやっている、
スナック“すみれ”のママさんだ。

「“今日そっち行こう思てたのに〜”言うてたわ。
でも先約入ってるみたいやから、
“ほなまた今度にしとく〜”って残念そうやったで」

私は曖昧に笑った。

来たかった人は居た。

でも、
その時間はもう埋まっていた。

「この前やってもろた小顔矯正いうの?
“目尻の小じわ薄なった〜”って喜んどったで」

「お、良かったです」

「まぁ私にはよう分からんかったけどなw」

「それ老眼ですからやんw」

「そうとも言うw」

おばちゃんはケラケラ笑いながら、
エプロンのポケットを探り始める。

「あ、そうそう。
可哀想なクロちゃんにこれw」

煮干しを見た瞬間、
クロの尻尾がぴたりと止まった。

一度こちらを見て、
匂いを確認し、
床へ置かれるのを待ってから静かに食べ始める。

クロ
「……この惑星の魚類加工文化は悪くない」

「現金な猫やねぇw」

おばちゃんが帰ったあと、
また店の中は静かになった。



その夜、
連絡が届いたのは、
定刻を大きく過ぎた頃だった。

「今仕事終わりました。
遅くなったので今日は諦めます」

私はホットキャビンの電源を落とした。

おしぼりを片付け、
少し冷めたホットケーキを冷蔵庫へ入れる。

勢いよく閉めると、
ドアポケットのポン酢の瓶が傾くので、
そっと閉める。

空調を止め、
カップを戸棚へ戻す。

散らかったままだと、
何となくだらしない気がしてしまうので、
片付けは、
気持ちを引き締めるための儀式みたいなものだ。

最後に音楽を止める。

すると急に、
部屋の広さだけが残る。

静かになった店の奥から、
クロがこちらへ歩いてくる。

前足で、
チョン、チョンと膝を叩く。

もう寝よう、
という催促だ。

エアコンの電源も確認する。

以前、
切り忘れて朝まで動かしっぱなしになり、
少し損した気分になったことがある。

最後にもう一度だけ、
LINEを確認する。

やっぱり行きます、
の連絡が入っていないか。

以前、
怖くなって一度帰ったあと、
戻って来られたお客様も居たので。

でも、
通知は増えていなかった。

こんなことなら、
取り込んだ洗濯物も畳めたなぁ。

そう思いながら、
洗い物を片付ける。

朝、
シンクへカップが残っていると、
まだ昨日が終わっていない気がして、
少し気が重くなるから。

クロのごはんも確認しておこう。

洗濯物も、
明日すぐ畳めるよう玄関へ寄せておこう。

そうやって生活へ戻っていくうちに、
少しずつ今日が遠ざかっていく。

早く休んで、
今日という日を終わらせよう。

深夜の待つ側にも、
静かに流れている夜がありますので。

【まだモヤつくあなたへ】

「少しだけ話してみたい」
そう感じたときのために、

連絡先を出さずにやり取りできる方法もご用意しています。

こちらで静かに待っております

(※外部サービスのため有料でのご案内となります)


少しだけ話してみる、という選択も
思っているより悪くないかもしれません。



【公式LINEのご案内】

ご予約・ご相談は公式LINEより承っております。

ご不安な点があれば、
事前に丁寧にお答えいたします。

無理なご案内はいたしませんので、
安心してご連絡ください。

<公式ラインはコチラから>


――――――――――

※施術内容の詳細は、
エキテンのメニューページにも掲載しております。

ご不安な点がございましたら、
事前にお問い合わせくださいませ。

<エキテンはコチラ>


大阪市平野区にある男性セラピストによる オイルトリートメントのリラックスタイムは24時間営業で 出張にも対応しております。
どうか、あなたに戻る時間をご家庭でも・・。




【ハッシュタグ】

#平野区
#大阪メンズセラピスト
#深夜営業
#オイルトリートメント
#深夜の駆け込み寺
#癒しの時間
#女性の疲れ
#自律神経
#夜職女子
#人間関係に疲れた

いいなと思ったら応援しよう!