【GSIクレオス】熊本城 1/144スケール
【積みプラ王国へようこそ 〜会話編 第八話〜】
三度、熊本城は建たず 〜箱なき城、箱ある城、特典ある城〜
● 登場人物
積みオジ(推定63歳)……積みプラをこよなく愛する求道者。座右の銘は「積みプラ王に、俺はなる」。本日は復興を願い、そして城を三つ積む。 滅ちゃん(莉央/20歳)……模型店のバイト娘にして、積みオジの遠い親戚。知識ゼロ・悪気ゼロのギャル。無自覚ツッコミの使い手。本日、ついに台車を持ち出す。決め台詞は「滅!」。
概要
本日の主役は、GSIクレオス(GSI Creos) が満を持して世に放った「神威(シンイ)/和・名城シリーズ No.1」——1/144スケール「熊本城」である。高さ295mm、全長400mmという堂々のビッグスケール。繊細な瓦、石垣、そして武者返し。プラモデルというより、もはや建築である。積みオジ曰く「熊本の復興を願って」。……のはずが、話は箱なし・箱あり・特典ありの三城体制へと転がっていく。そして本日、滅ちゃんの手には、なぜか台車が握られていた。

■ 一つ目 ─ 箱なき城、堂々の入城
積みオジ「今回はな、熊本の復興を願って、熊本城のキットを紹介しよう。ただの熊本城ではないぞ。GSIクレオスの傑作、1/144のビッグスケールだ! この部品量、この石垣、この瓦の彫刻を見よ!」
滅ちゃん「おお、たしかにすごい量……。ってあれ? おじサンにしては珍しく中身だけなの? 箱は?」
積みオジ「そうなんだよ。箱無しだからな、ヤフオクで破格の安さで出品があってな、思わず落札してしまった。早期購入特典の木製ディスプレイベースも付いていたしな」

■ 特典 ─ 木製ディスプレイベース同梱
滅ちゃん「へー、これが特典のベース? 木でできてて、460×300mm……でっか。城が丸ごと乗るサイズじゃん」
滅ちゃん「……ていうかさ、おじサン。いつも『積みプラは、箱が命だ!』って叫んでるくせに、珍しいね?」
積みオジ(遠くを見ながら)「……あのころは、やんちゃだったな……」
滅ちゃん「何いつもの必殺“遠くを見る技”を早速くり出してんのよ! 数年前の話でしょ! やんちゃな時代、直近すぎ! ……じゃあこれ、箱がないってことは、これは作る気なんだ?」

■ 二つ目 ─ 箱なき城に、箱を足す男
積みオジ「いや、積む! 箱無しでも積む! ……だが、やはり箱が欲しい。ということで、箱付きも購入した」
滅ちゃん「こんなバカでかいキットを2つも購入したの!? どうするのよこれ! 城が二つって、もう小大名じゃん!」
滅ちゃん「あっ! でも、このキットは早期購入特典のディスプレイベースが付いてないやつだ! ははは、失敗したな、オヤジ! せっかく箱買ったのに、特典なし! ざまー!」

■ 三つ目 ─ そう来ると思って
積みオジ(フッ)「……そう来ると思って、特典つきのキットも購入した」
滅ちゃん「…………は?」
滅ちゃん「馬鹿なの! ねえ! 馬鹿なの! 箱なし買って、箱付き買って、特典付きも買って——それ、ただの三重買いじゃん! ねえ、このキットいくらするのよ!」

■ お会計 ─ 城の値段
積みオジ「ふむ。定価は25,000円ぐらいだが……なにせ絶版キットでな。Amazonで4万ぐらい、メルカリだと2万から3万ぐらいかな」
滅ちゃん「…………」
滅ちゃん(そのとき、目がキラリと光った)(3つで、安く見積もっても6万……)
■ そして審判の刻 ─ 復興の願い、棚の上
滅ちゃん「ねぇ、おじサン。……これ売って、温泉旅行でも行こ? 熊本、いいとこだよ。阿蘇とか。黒川温泉とか」
積みオジ「駄目だ! これは熊本の復興を願って——」
滅ちゃん「……ねぇ、おじサン。作らないよね?」
積みオジ「ぐっ」
滅ちゃん「積むだけだよね? 復興の願いは、棚の上だよね?」
積みオジ「ぐ……ぐぐぐ……っ!」
滅ちゃん(北斗百裂拳の構えで、ビシッと人差し指)「お前は……既に、詰んでいる! 滅!」
積みオジ「ひでぶ〜〜〜っ!!」
滅ちゃん(すでに台車をガラガラと引き出し、城を三箱まとめて積載)「よし、積載完了! 積むならこっちのほうが有意義でしょ! 行くよ、熊本城! 温泉へ!」
積みオジ(涙を流しながら追いすがる)「まっ……待ってくれ! 城が!! 我が城が三つとも出陣していく!! せめて一つ! 一つでいい!!」
滅ちゃん(振り返らず)「一つも渡さないっしょ!」
(廊下を、台車が走る。城を積んで。追う男、泣きながら。——復興は、まだ遠い)
総評
本日のメーカーはGSIクレオス(GSI Creos/VANCE PROJECT)。「神威 和・名城シリーズ No.1」1/144スケール 熊本城、高さ295mm・全長400mm・幅200mmという堂々の大物である。加藤清正が築いた名城を、瓦一枚、石垣の一段に至るまで作り込んだ内容で、専用カラーガイドまで付属する本気の構成。早期購入特典の木製ディスプレイベース(460×300mm)を敷けば、完成品はもはや調度品の風格だろう。……そう、完成すればの話である。今回積みオジが購入したのは、箱なし(ヤフオク・特典付き)、箱あり(特典なし)、そして箱あり特典あり——同一キット3つ。「積みプラは箱が命」という自らの信条を「あのころはやんちゃだった」の一言で葬り去り、その舌の根も乾かぬうちに箱を買い足す。定価25,000円前後、絶版ゆえに市場価格はAmazonで4万円台、メルカリでも2〜3万円という代物を三城。合計、控えめに見積もっても6万円。そして本日、その6万円は台車に乗って温泉へと旅立った。熊本の復興を願う心は本物だと信じたい。ただ、その願いは今日も、棚の上で未開封のまま眠っている。
箱なき城を安く買い、箱ある城を買い足して、特典ある城でとどめを刺す。 「箱が命」の掟は、遠くを見るまなざしひとつで、数年ぶんの時効を得た。 定価二万五千、市場は四万、三つ束ねて六万の天守は、ついに一度も建たぬまま—— 台車に乗って、温泉へ向かって出陣した。 追う男の頬を伝うのは、汗か、涙か、それとも積みか。 ――積みプラ王に、俺はなる。(※ただし、城を建てるとは言っていない)
