中学バスケ時代を思い出した話。~『「組織のネコ」という働き方』を読んで~
『「組織のネコ」という働き方』を読んで
この本を読んでいて、中学校のバスケットボール部で過ごした三年間のことを思い出した。
本書では、組織の中にいる人を「ライオン」「イヌ」「ネコ」という動物にたとえている。ライオンは組織を引っ張る人、イヌは組織を支える人、そしてネコは人と人の間を行き来しながら新しいつながりを生み出す人として描かれていた。読み始めたとき、私は「自分はどれだろう」と考えた。でも、すぐに一つだけ分かったことがある。
私はライオンではない。
中学の頃から、みんなを引っ張るタイプではなかった。キャプテンのように前に立つことも得意ではないし、強い言葉で周囲を動かすことも苦手だった。だから最初は、この本は自分とは少し違う世界の話かもしれないと思った。しかし読み進めるうちに、だんだんバスケットボール部の景色が浮かんできた。不思議なことに、思い出したのは試合で活躍した選手ではなかった。
練習後に一年生へ話しかけていた先輩。
試合に負けた帰り道で、落ち込んでいる人の隣を歩いていた同級生。
練習中に空気が重くなった時、冗談を言って笑わせていた人。
当時の私は、その人たちを特別な存在だと思っていなかった。
むしろ、どの部活にもいる普通の人たちだと思っていた。
でも本を読んでいて気づいた。
私は、その人たちがいたから部活を続けられたのかもしれない。
今振り返っても、私が部活で覚えているのは試合の結果だけではない。練習前にみんなで話していた時間や、帰り道の何気ない会話の方をよく覚えている。
もちろん試合は大切だった。でも、勝ったから続けられたわけではない。上手かったから続けられたわけでもない。人との関わりがあったから、私はあの場所に通い続けていたのだと思う。
本書でいうネコは、そういう存在なのではないだろうか。ネコはリーダーではない。組織の中心に立っているわけでもない。だけど、人と人との間を行き来しながら、組織の中に見えないつながりをつくっている。
その価値はとても見えにくい。
試合なら得点が記録に残る。
会社なら売上が数字になる。
しかし、「あの人がいたから話しやすかった」とか、「あの人のおかげでここに居続けられた」といったことは記録に残らない。だからこそ、私は今までその価値に気づいていなかったのかもしれない。本を読んでいて思い出したのが、「デザインすることはギブすること」という言葉だった。私は以前、この言葉を読んだとき、何か新しいものを作ることがギブだと思っていた。
でも最近は少し違う気がしている。
誰かの話を聞くこと。
人を紹介すること。
輪の中に入りやすい空気をつくること。
そうした行為もまた、誰かへのギブなのではないだろうか。
大学に入ってから、私は対話の場づくりについて考える機会が増えた。映画鑑賞会や勉強会を開くこともある。そこで感じるのは、人は「話せるから安心する」のではなく、「安心できるから話せる」ということだ。
実際に場を開いていると、自分の意見よりも、自分の迷いや葛藤を話してくれる瞬間がある。
私はそういう瞬間が好きだ。
そして、そういう言葉が生まれる背景には、誰かが場を支えていることが多い。本書を読みながら、ネコもまたそういう存在なのだと思った。組織の中で目立つわけではない。しかし、人と人との関係を育てている。だから私は、この本を読んでネコを「つなぎ役」とは思わなかった。むしろ、人と人との間にある安心感や信頼を少しずつ育てている人なのだと思う。
中学時代の部活にも、大学のゼミにも、そういう人たちはいた。
そして私自身も、そういう人たちに支えられてきた。
『「組織のネコ」という働き方』は、これまで当たり前だと思っていた存在の価値に気づかせてくれる一冊だった。
