そうやって死んだ人を私は何人も知っている(南米クソチャリ旅Day8:コロンビア編)
2026/03/08@Armenia→Tulua🇨🇴
「この国でまともにビジネスをやろうたって無理な話よ。例えば食堂を開いてみようとしたら、オープン二日後にはどこからともなくテッポウを持ったチンピラがやって来て、売り上げの半分を寄越せ、ミカジメ料を払えっていうの。それを突っぱねたらその場でズドン。そうやって死んだ人を私は何人も知っているわ。」
「セニョリタ、それホンマの話でっか?」と僕は間抜けな相槌を打つ。
「別にここじゃ珍しい話じゃ無いわ。コロンビア人の人間性を一言で表すとしたら”ショートカットが好きなズル”よ。何もしないで楽して稼ごうって輩が多すぎるのよ。」
僕をウチに泊めてくれた42歳の英語教師ジゼルは、自国に対する不満を熱く語った。
パソコンに向かってゲームばかりしているほとんど無口の長男、IQが140もあるというまだ幼い次男は絶えず家中を走り回っていて、彼らは異父兄弟だという。しかし、父親の姿は見当たらない。
それに無気力を振り撒く彼女の妹、も恐らく彼女とはどちらかの親を異にしているように見えた(聞くに聞けなかったけど)、そして彼女本人は最近、アスペルガーだと診断されたという。
皆いい奴なんだけれど、何ともいえない倦怠感と微妙なバランスの上に成り立つ家族、の中に放り込まれた異邦人、僕。
彼女の語りは続く。
「あとね、日本では女に養われる男って普通?なんて呼んだかしら、ああ言うの。働きたくない働きたくないって駄々をこねるだけの男。」
養ってくれる女性こそ持たぬけれども、目の前にいる男こそまさにソレその人であるぞと思いながら、僕は
「ジゴロとか言うんじゃない、日本にはあんまりいないけどね。」
と返す。
「コロンビアでは、そんなのがそこら中にいるのよ。はっきり言って私はこの国に住むのが苦痛で仕方ないのよ。」
異父兄弟を子として抱えながら、シングルマザーで、妹を養いつつ、ジゴロな彼氏と暮らす母親にすら仕送りを送っているという彼女の境遇は確かに同情に値した。
世界を巡る中で、僕を少なからず驚かせたのは自国を、母国を、愛さない人がままいるという事実だ。
一方で81カ国を訪れた僕が辿り着いたのは、日本こそ最強最高、万歳三唱、四唱、八唱、六十四唱であり、あんなにええ国はないぞ、という真っ直ぐな自国礼賛、あまつさえ天皇陛下万歳と叫ぶことすら厭わない、愛国精神剥き出し人間だったからこそ、そのコントラストは色濃くに僕に迫って来た。
30歳独身無職を嘆きながら母国を想って旅を続ける僕、自国を呪いながら仕事に子育てにテンテコ舞いするジゼル。
人生色々やなぁ、と僕にできるのはそんな風に黄昏た表情をお見舞いしてみせることくらいなのだった。

