第1話|ママだけ、リビングに帰ってきました|家族パーティー、母からはじまる異世界冒険。
ショートシナリオはこれまでにも作ってきましたが、
長編小説としては、今回が初めての挑戦です。
何度も書き直して、読み返して、また直して。
ようやく連載として出せる形になりました。
タイトルは、
『家族パーティー、母からはじまる異世界冒険。』
全24話の予定です。
創作大賞2026に応募する作品として、今日から連載を始めます。
最後まで、お付き合いいただけたら嬉しいです。
あらすじ
もし、AIで作った家族の冒険者ステータスが、本当に動き出したら――。
ママ、パパ、りく、なぎ。
いつものリビングで笑っていた四人は、
ある日、見知らぬ異世界へとつながってしまう。
そこに待っていたのは、見えない何か、不気味な洋館、
そして助けを求める小さな声。
怖がりで、痛いのが大嫌いで、
勇者にはほど遠いママは、
家族と一緒に、日常アイテムを手に進んでいく。
やがて声の主との出会いが、
家族パーティーを思いがけない謎と冒険へ導いていく。
特別な勇者ではない家族が、
日常のあたたかさを武器に進む、
ちょっと怖くてやさしい異世界冒険物語です。
ここから第1話です。
第1話 ママだけ、リビングに帰ってきました
なんで、こうなった。
私は、リビングの床に座り込んでいた。
正確には、座り込んでいるというより、
落ちてきた、に近い。
さっきまで私は、
薄暗い洋館の前で、見えない何かに追い回されていた。
髪はほどけ、
七色に光る衣装はあちこち破れ、
膝には土がついている。
しかも、なぜか手には、
羽根みたいな飾りがついた杖を握っている。
いやいやいや。
ここ、うちのリビングだよね?
見慣れたソファ。
見慣れたテーブル。
見慣れたパソコン。
さっきまで飲みかけだったお茶と夕飯の餃子。
でも、私の格好だけが、完全におかしいよね?
ゲームの戦闘に負けたキャラみたいになっていた。
「え?何?どういうこと?」
なんでか、椅子は倒れて、
ソファのクッションは落ちてるけど、
でも、いつもの家だ。
いつもの匂い。
夕飯の餃子の匂いもする。
……いいにおい。
そう思った瞬間、安心しそうになった。
でも、違う。
パパは?
りくは?
なぎは?
さっきまで一緒にいたはずの三人が、
ここにはいない。
なんで?
私は家の中の様子を見ようと歩こうとしたけど、
足がもつれて、
もう一度ぺたんと床に座った。
「パパ……?どこ?」
パパと呼んでいるけれど、
夫のことである。
「パパ?」
返事がない。
「りく?なぎ?」
息子たちの返事もない。
「ねえ!パパ!りく!なぎ!ねえー!」
叫んでみても、気配すらない。
「隠れてないで、出てきてよ……」
さっきまで一緒にいたのに、どこに行ったの?
誰もいないの?
さっきまで一緒にいた声が、
ひとつも返ってこない。
リビングはいつものままなのに、
そこだけが、ぽっかり抜け落ちたみたいだった。
私はもう一度、パパたちの名前を呼ぼうとした。
でも、喉の奥がきゅっと縮んで、
声がうまく出なかった。
だいたい、さっきのは何?
なんで私だけここにいるの?
考えようとしても、頭の中がぐちゃぐちゃで、
私はその場に座り込んだまま、
訳が分からず、泣きじゃくった。
泣きながら身をよじった拍子に、
テーブルの足にぶつかって、
何かがころんと落ちてきた。
「ぷわ…」
スマホにつけていた、小さな人形のぷわうさだった。
白くて、ふわふわで、
ちょっと間の抜けた顔をしている。
いつもなら、ただのかわいいうさぎのマスコット。
でも、そのぷわうさが、
突然むくりと起き上がった。
「戻らなくていいの?」
私は固まった。
「……しゃべった?」
ぷわうさは、ぱたぱたと短い手を動かしながら、首をかしげた。
「ここは平和だね~。あっちはどうかな?」
「あっちって……?」
「さっきまでいた場所。みんな、やられちゃうよ?いいの?」
急に、背中がぞくぞくして、さっきの恐怖が蘇った。
光に飲み込まれる直前、
誰かが私を呼んでいた気がする。
ママ、と。
それなのに、私はここにいる。
私は、家族を置いて
一人で逃げてきたの……?
次回は、6/17(水)20:30ごろ公開予定です。
パパ、りく、なぎは、まだあの場所にいるのか。
どうして家族は、異世界へつながってしまったのか。
次回は、家族パーティーが生まれた
“あの日のリビング”へ戻ります。
続きも読んでいただけたら嬉しいです。
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