正論だけでは、人は動かない。「ソードのエース」
人に何かを勧めるとき、
つい正しいことを言いたくなる。
「こうした方がいいよ。」
「その方が得だよ。」
「今やらないと、あとで困るよ。」
「普通はこうするでしょ。」
言っていることは間違っていない。
むしろ、かなり正しい。
でも、相手が動かないことはある。
昔書いた「ソードのエース」のメモには、
行動をためらっている人がいたら、動くよう促してあげればいい。
ただし、自分の理屈を押し付けてはいけない、と書いてあった。
その人は、自分の理屈に合ったときしか動かない、と。
この部分は、今読んでもかなりわかる。
正論って、意外と人を動かさない。
「運動した方がいい。」
「早く寝た方がいい。」
「転職した方がいい。」
「その仕事はやめた方がいい。」
本人だって、
だいたいわかっている。
わかっているのに、動けない。
そこへさらに正論を重ねても、
「はいはい、わかってます。」
で終わることがある。
言われれば言われるほど、
むしろ動きたくなくなることすらある。
人間、なかなか素直ではない。
昔のメモには、
「行動するためにはストーリーが必要」
とも書いてあった。
今なら、
この「ストーリー」という言葉は、
自分なりの理由、
自分なりの納得、
自分なりの意味、
そんなふうに読みたい。
「みんながそうしているから」ではなく、
「私はこうしたい。」
「だから、これをやる。」
ここまで自分の言葉になったとき、
人は動きやすくなる。
仕事の相談でも、
こちらが答えを出したくなることはある。
経験から見れば、
「こっちの方がいいだろう」と思うこともある。
でも、
その人が動く理由まで、
こちらが作ることはできない。
「正しい助言をすること」と、
「相手が動けること」は、別の話だ。
できるのは、
何を大事にしたいのか。
何が嫌なのか。
本当はどうなりたいのか。
それを聞くこと。
本人が話しているうちに、
「じゃあ、やってみます。」
と、自分で言い始めることがある。
こちらは、
さっきまで言おうとしていたことを飲み込む。
……言わなくてよかった。
ソードのエースは、
考えることや言葉を象徴する剣を掲げたカードとして、昔のメモでは「よく考えて行動を始める」カードと読んでいた。
でも今は、
「正しいことを言う」だけが剣の使い方ではないと思う。
言葉で説得することもできる。
でも、
言葉でその人自身の考えを引き出すこともできる。
同じ剣でも、
使い方はずいぶん違う。
人を動かしたいときほど、
答えを渡す前に、少し聞く。
正論を言う前に、
その人が何を考えているのかを聞く。
もしかしたら、
動くために必要な言葉は、
こちらが用意するものではない。
その人の中に、
もうあるかもしれない。
【今日の問い】
誰かに、
「こうした方がいいのに」
と思っていることはありますか。
答えを伝える代わりに、
一つだけ質問するとしたら、
何を聞いてみますか。
