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渡邊亜萌個展「強いAI」

2020年7月2日〜7月7日まで渡邊亜萌個展「強いAI」が美学校スタジオで開かれている。

この展覧会タイトルでこのDMである。大柄な男がロボットに左手で首を掴まれ、右手で今にも殴られようとしている。『鋼鉄の空手チョップ』(Real Steel Judo Chop)と題されたこの作品は力道山が空手チョップをしている画像を元に、力道山自体をロボットに代えて描いた作品で、「強いAI」とは何かを改めて考えさせられる。

展覧会のステイトメントにもある通り、渡邊は美学校の講座「中ザワヒデキ文献研究」に2年間在籍していた。当初技術系のクラスに入ろうと思っていたが、説明会でたまたま会った中ザワに話を聞いてみると、人工知能について授業を行なっていると聞き、興味を持ったので入ってみようと思ったらしい。通常講義もさることながらセーラー服おじさんや齋藤帆奈等、ゲスト講師からも多くを学んだ。
文献研究で人工知能に関する議論を学んだことが、小学生の頃からオリジナルのキャラクターを作っていたほどロボット好きだった渡邊にとって、再びロボットについて考えるきっかけになったという。
渡邊は、意識があるのに人と同じように扱われず、周りの環境に馴染めない自分に悩んでしまうロボットと、対人関係が苦手な自分とを無意識にオーバーラップしていたと自己分析している。(https://bigakko.jp/news/2020/watanabeamoe_exhibition

いくつか作品を見てみよう。ナイトスコープ社のK5という警備ロボットが建物の中庭の池の段差が認識できず、そのまま水中に落ちてしまったことがあった。「スティーブ」と名付けられたこのロボットはTwitter上で話題になり、祭壇まで作られた。
https://twitter.com/bilalfarooqui/status/887025375754166272
この画像を見た渡邊は、その横たわったビジュアルからジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』を、そしてSNS上で展開されるスティーブへ向けての多くの言葉からハムレットの母ガートルードが語る装飾的な台詞を想起して、スティーブがそこから落ちたであろう階段と水以外を『オフィーリア』風に仕立てた『スティーブ』(Steve)という作品を作り上げた。(TOP画像)

訓練の厳しさが「スパルタ式」とも言われネット上で話題になったボストン・ダイナミクスのSpotMini(スポットミニ)が、フランス南部のカマルグ地方で放牧されているカマルグ種の馬のように海の浅瀬を群れで駆け抜ける『群れ』や、ピノキオに出てくるブルー・フェアリーがペッパーくんに魔法をかけて意識を与えている様を、ルンバの提唱者ブルックスが提唱する「ジュース」に掛けた『最後の一滴』(Blue Fairy's Juice)など、現在活躍しているロボットが登場する作品もある。

『群れ』(Herd) 筆者撮影

数年前に炎上した人工知能学会誌の表紙に描かれた女性型掃除ロボットのイラストを、アイラ・レヴィンの小説「ステップフォードの妻たち」の物語から再解釈して描かれた『理想の掃除機』(Ideal Vacuum Cleaner)からは、テクノロジーとジェンダーの問題について、ロボットという先進的な存在が、保守的なものの象徴と結びついてしまうことへのおかしみが読み取れる。

リキテンスタイン『鏡の中の少女』の鏡に映り込んでいる顔がのっぺらぼうに赤い鼻がついているだけの「パーマン」のコピーロボットになっている『無題』(Untitled)は、アイデンティティとは何かを問う、『鏡の中の少女』と「パーマン」のマッシュアップ表現であり、ロボットの立場から描かれた風刺画や近未来SF絵画とも言えるだろう。

「強いAI」はアクリル絵画11点と、渡邊が作品を作るにあたって影響を受けた3冊の本、そして資料で構成されている。シニカルだが愛らしい渡邊の作品をぜひその目で見てほしい。

会 期:2020年7月2日(木)〜7月7日(火)
時 間:14:30〜21:00
会 場:美学校 スタジオ 東京都千代田区西神田2-4-6宮川ビル1階(袋小路奥)
https://bigakko.jp/news/2020/watanabeamoe_exhibition

TOP画像:『スティーブ』(steve)

「レビューとレポート」 第14号 2020年7月
(パワードbyみそにこみおでん)

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