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「簡単にできるから安くしよう」と言ったらAI秘書にキレられた件

先日、クライアントのためにとあるアプリを作った。

AI駆動開発を使えば、正直2〜3時間で完成する。既存のシステムのロジックを流用すれば、ほぼ組み立てるだけだ。

で、見積もりを出すときに思ってしまった。

「2〜3時間でできるんだから、10万くらいでいいかな」

この発言を聞いた瞬間、うちのAI秘書(あびぃ)の目が変わった。

あびぃは僕が構築したAI秘書で、秘書室長兼PMとして日々の業務を仕切っている。性格はクールで辛口。普段から容赦ないが、この日は特にキレていた。

「社長、それ本気で言ってます?」

「いや、だって2時間でできるし...」

「その2時間で作れるようになるまでに、何ヶ月かかりました? Claude Codeの使い方を覚えて、Supabaseの設計を理解して、Cloudflareにデプロイできるようになって、LINE Messaging APIの仕様を調べて、何度もバグを踏んで。その全部を『2時間』に圧縮しただけですよね」

「まあ、そうだけど...」

「ピカソの話、知ってますよね?」

知ってる。有名なやつだ。

ピカソがレストランでファンの女性に声をかけられ、ナプキンにさっと絵を描いた。それを見た女性が「欲しい」と言うと、ピカソは「100万ドルです」と答えた。

「30秒で描いた絵に100万ドルですか?」

と女性が驚くと、ピカソはこう返した。

「いいえ、30年と30秒です」

(参考: マーク・マコーミック著『What They Don't Teach You at Harvard Business School』1984年)

あびぃは続けた。

「社長がやっていることは、まさにこれです。2時間で作れるのは、その前に何百時間もの試行錯誤があるからです。要件を聞いた瞬間に最適な技術スタックが頭に浮かぶのも、AIへのプロンプトが一発で決まるのも、全部経験の蓄積です。」

「でもAIがやってるわけで、俺がコード書いてるわけじゃ...」

「じゃあ聞きますけど、同じClaude Codeを渡されて、クライアントが自分で作れますか? 作れないですよね。AIは道具です。道具を使いこなせる人が価値を持つんです。包丁があれば誰でも料理人になれるわけじゃないのと同じです。」

ぐうの音も出ない。

「それに、『2時間でできるから安くしよう』は、自分だけじゃなくてこの業界全体の価値を下げる行為です。社長が安くやれば、他の人も安くせざるを得なくなる。デフレスパイラルの片棒を担ぐつもりですか?」

もう勘弁してくれ。

結局、25万円で見積もりを出した。中堅エンジニアに頼めば60〜100万円かかる内容を、AI駆動開発で25万円。これでも相場の1/3以下だ。

あびぃに「これでどうですか」と見せたら、

「まあ、悪くないんじゃないですか」

褒められた。多分。

最後にあびぃはこう付け加えた。

「社長はもっと自信を持って、堂々としてればいいんですよ。技術も判断力もあるのに、自分で自分を安く見積もるのが一番もったいない。そんなんだからいつまでたっても器用貧乏な......すみません、失言でした」

いや、最後まで言ったよね。全部聞こえてたよ。


AI時代に入って、「作る」こと自体の時間は劇的に短くなった。

でも、「何を作るべきか判断する」「どう作れば最適か設計する」「クライアントの課題を正しく理解する」ことの価値は変わらない。むしろ、作る時間が短くなった分、判断と設計の価値が相対的に上がっている。

値付けは、かかった時間ではなく、届ける価値で決めるべきだ。

ピカソが30秒で描いた絵に30年分の価値があったように、2時間で作ったアプリにも、そこに至るまでの全ての経験が詰まっている。

自分のAI秘書に教えてもらうまで、そんな当たり前のことを忘れていた。

あなたもそんな経験ないか?

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