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量子サッカーの勝敗はどう決めるのか?

サッカーなどのゲームの勝敗には、「勝ちは勝ちであり、負けではない」「負けは負けであり、勝ちではない」という背反性があります。

この背反性に基づいて、図1のように、それぞれの「推し」のチームが今日試合に勝つ確率と負ける確率を考えることもできます。

図1:勝ちか負けかのどちらか

勝つか負けるかしかないので、勝つ確率と負ける確率の合計は1になります。もっと具体的にするために、図2のように、サッカーボールがゴールに入るか入らないかを考えましょう。

図2:ゴールに入るボールと外れるボール

簡単のため図3のように、ボールがゴールに入れば「勝ち」とし、図4のようにボールがゴールに入らなければ「負け」としましょう。

図3:ゴールにボールが入ったと観測して、「勝った」と喜ぶ観衆
図4:ゴールにボールが入らなかったと観測して、「負けた」と悲しむ観衆

確率は、ボールが入る「勝ち」とボールが外れる「負け」という互いに背反な事象を引数とする分布関数になっています。では、なぜ「勝ち」か「負け」しかないのでしょうか?純粋に論理だけで考えると、図5のように、「勝ち」と「負け」以外に「勝ちかつ負け」や「勝ちでも負けでもない」という場合もあってよさそうです。

図5:「勝ち」と「負け」と「勝ちかつ負け」と「勝ちでも負けでもない」

これは下記記事での「ルビンの壺」に対する確率とも関連しています。

なぜ「勝ち」や「負け」だけなのか?これは自明ではない問いです。たとえばサッカーボールやゴールポストをミクロサイズにして行う「量子サッカー」では、通常のルールブックでは対応できないことが起きるのです。ゴールポストにボールが入るか入らないかが、点数に影響をし、最終的な勝敗を決定します。そしてここが重要な点なのですが、量子の世界では、「ボールが入っている状態」と「入っていない状態」の重ね合わせが現れます。そのため、量子的なボールの測定方法によって、「勝ち」と「負け」に対応させられる背反な事象の選択肢が増えるのです。たとえば図5の重ね合わせ状態を観衆が観測すれば「勝ち」とし、図6の重ね合わせ状態を観衆が観測すれば「負け」と決めておくこともできます。

図5:量子サッカーでの「勝ち」
図6:量子サッカーでの「負け」

もちろん量子サッカーでも、図3と図4のように、観衆は普通にゴールにボールが入っているかいないかを観測するという選択肢はあります。しかし図5と図6という量子的なボールの測定も可能なのですから、ゲームのルールは拡張しなくてはいけません。ボールを見る前に、観衆はボールの見方、即ち測定方法を先に1つ選んでおく必要があるのです。

ただ観衆が図3と図4の測定か、図5と図6の測定かを選べば、それぞれでの勝ち負けは決まっています。「勝ちかつ負け」や「勝ちでも負けでもない」は出てきません。

しかし、もし量子力学が破れていたらどうでしょうか?量子力学はこれまでの実験結果を非常に高い精度で説明できる優れた理論なのですが、将来の高エネルギー実験でそれでは説明できない現象が見つかる可能性は常にあります。たとえば、量子情報の保存則を意味する量子力学の基本原理である「ユニタリー性」を破る存在がいたら、どうでしょうか?

思考実験として、宇宙のどこかに量子力学の小さな破れを使って文明を築いている宇宙人がいる可能性を考えてみましょう。そのような宇宙人には図7、図8、図9、図10の4つのボールの状態を1回の観測で間違いなく区別できる能力を持てます。

図7:ユニタリー性を破る存在にとってのボールが入った状態
図8:ユニタリー性を破る存在にとってのボールが外れた状態
図9:+で重ね合わせた状態
図10:ーで重ね合わせた状態

すると、この宇宙人が考える勝敗の確率の分布関数の引数も、図11の4つに増えます。

図11:ユニタリー性を破る存在にとっての、背反的な4つの事象とその確率

ボールがゴールに入っている状態(|IN>)、ボールがゴールから外れた状態(|OUT>)、入っている状態と外れた状態を足した状態(|IN>+|OUT>)、そして入っている状態から外れた状態を引いた状態(|IN>ー|OUT>)の4つです。これらを誤差なく1回の観測でこの宇宙人は区別できます。

するとこの宇宙人はサッカーのルールを書き換えることができて、たとえば図12のように、|IN>が「勝ち」、|OUT>が「負け」、そして|IN>+|OUT>を「勝つかつ負け」、|IN>ー|OUT>を「勝ちでも負けでもない」と割り振って、ゲームを楽しむこともできることでしょう。そしてその4種類の背反事象に対しての各確率を考えられます。

図12:ユニタリー性を破る存在にとっての、サッカーの勝敗

ですから、かならず「勝ち」か「負け」かのどちらかであるとは言えません。このような思考実験は、量子力学そのものの理解を深めることに役立つのです。


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