モンゴルの空は果てしなく広かった ④
2024/Jul./9 TUE.
朝、緑の丘への散歩
モンゴルの夏は夜が短く、5:00頃からもう明るくて、天窓からの光でゲル内も明るくなってきたため、早く目が覚めてしまった。昨晩も寝付きが悪く、熟睡した感じがしない。鳥の鳴き声と牛と羊の声もして、二度寝も出来ないので、6:40にベッドから起き上がる。

顔を洗いにトイレ・シャワー棟に行く。上空は思いっきり雲っており、南だけ少し青空が覗いている。日差しがないとTシャツだけでは少し肌寒いくらいだ。しかし、時間もあるのでついでだからこのまま散歩に行こう。このゲストハウスの敷地内に家畜が入ってこないようになっている入口のスライド式のシャッターを開けて、外へと出、一昨日も行ったゲストハウス前の丘を登っていく。
まだ、朝早いからか、外に出ている人は私以外に誰もいない。人の声は聞こえず、聞こえてくるのは風の音、鳥の囀り、遠くから聞こえてくる牛や羊の鳴き声だけだ。もう牛や羊の放牧は始まっているらしい。餌となる草は無限にある。と、言うかホントこの丘には緑の草しかない。ここを歩むと草の良い香りがする。

モンゴルは余り雨のイメージがないが、全体的に降水量は少ないものの夏の時期が一番多い。その降水量で夏場の草原が緑に輝く。草原の天気は変わりやすい様で空には暗い部分もあれば、雲の隙間から光が漏れる黄金の天使の階段も見えた。
丘の頂上付近に着き、輝く草原を眺める。ここにはチベットのタルチョみたいな物が巻きつけられたオボーがある。このオボーに願いをしながら3回右回りで回って、石を積み重ねるというのがモンゴルのお作法なので、その通りお参りしようとするが、この辺りに石は転がっていなく、あるのは家畜の糞ばかり。このため、取り敢えず3回まわっておくだけにする。
この辺りからの景色が良いので、一人、丘の上に佇み周囲の景色を眺め、それに満足したら、坂を降りる。前方の街の方を見ると泊まっているゲストハウスの先に、建物が点々と広がり、その横には昨日訪れた世界遺産のチベット仏教寺院エルデネ・ゾーが四角い城壁に囲まれている姿が遠くに見下ろせる。今日も朝からハラホリンは長閑な光景が広がっている。ただ、もうこの古都ともお別れだ。

1時間強の散歩から戻ったら、ゲストハウスの共同棟で朝食。ちゃんと連泊する人を意識してあり、昨日とは違う内容でカレースープ、オムレツ、サラミ、サラダ、トースト、そして、なぜだかクッキーというメニュー。それらを食べ終えたら、歯磨き、そしてトイレ。ここのトイレ・シャワー棟はキレイだし、便座もあるので安心して大ができる。そこに用意されているのは妙に分厚いトイレットペーパーだが、モンゴルでは、基本、紙は便器に流してはいけないので注意が必要だ。
その後、ゲルに戻って荷物の整理を始め、どんどんバックパックに詰めていく。と、開けっ放しのゲルの扉から3歳くらいの女の子がこちらを覗いていた。ここの子なのか、ゲストの子かわからないが、ゲルの中に招いて、持って来ていた折り紙でツルを折ってあげると、すごく喜んでくれた。

そして、全て片付いたらゲルを出る。このゲルの扉が低く、何回頭をブツけたことか。けど、それも最後。1泊26ドル(Agodaによるキャシュバック込み)でこの広いゲルを一人で専有できたのだから良かった。そして、特筆すべきは、ここを営んでいる年配の女性のガヤさんで、英語が堪能であり、とても世話好きで親切で、気さくな女性の存在だと思う。彼女と握手をしてお別れ。私を入れて5人を乗せた送迎車でバスターミナルまで送ってもらう。
ウランバートル行きの長距離バス
砂塵舞う土の広場であるハラホリンのバスターミナルにはヒュンダイ製のバスがもう止まっている。そして、次々、各ゲストハウスからの送迎の車がここに着き、乗客がバスに乗り込んでいく。この便もほとんど満席か。ハラホリン-ウランバートル間のバスは1日1本らしいので仕方ない。

私も宿にチケットを取ってもらったこの10:00発のウランバートル行きのバスに乗車。20番の席は念願の窓際の席だ。基本、一昨日乗ったバスと一緒だが、このバスの窓にはスモークが貼ってあり、窓自体も汚れ気味でキタナイ。
予定より20分も遅れて、このバスは出発。この旧帝都を離れ東ヘと向かう。一昨日通った道を引き返すだけだが、相変わらず何も無い緑の草原で、見た事のある景色か、初の景色かわからない。この緑の上では遊牧生活が営まれているが、今日の上空はグレーの雲ばかりで絵にならない。一昨日見た草原の上のちぎれ雲が素敵だったのだが、せっかく窓際に座れたのに残念だ。

穏やかな丘陵地帯がどこまでも続く。道は良く、車も少ないのでずっと高速走行が続く。ただ、時折、信号でもないのに減速・止まる必要がある。モンゴルでは、食べるため以外で動物を傷つけることは許されておらず、家畜が道路を塞いで悠々と歩いている場合、モンゴルの交通ルールでは動物さん達優先で、止まって待たねばならないのだ。

12:30、行きにランチブレイクした場所で止まる。じゃあ、今日もここで食事休憩だ。ゆっくりしている時間はないのがわかっているので、宿が一緒だった日本人男性と一緒に急いでラムシチューのご飯を食べる。食べている途中、クラクションが鳴ったので慌てて外へと出たが、それは隣に止まっていたバスだった!
じゃあまだ時間があるようなのでトイレに寄っておこう。このレストランの店内はきれいだが、奥の屋外にあったトイレはワイルド仕様で、板壁に囲まれているが、大きな深い穴があり、それに板が渡してあるだけ。穴に向かってするボットンタイプだ。なんだか懐かしい気分になるのは私が昭和生まれだからだろうか??

バスは13:04に再出発。また、草原の中をひた走る。雲も少なくなり青空が増え、日差しも戻ってきた。ホント緑の世界。美しい。これが、数ヶ月後には茶色になり、長い長い白い季節となる。この地で生きていくのは簡単ではないだろう。
何も無い幹線道路でひとり途中下車
乗車しているこのバスはウランバートル行きだが、その手前約100kmのところで、秘策、いや博打に打って出る。ウランバートルまで戻らず、とあるT字路で私一人このバスを途中下車させてもらう。時刻は15:00ちょうど。
このT字路から南に折れ、13km程、未舗装路を進めばホスタイ国立公園(英語:Hustai National Park、モンゴル語:Хустайн цогцолборт газар)の入口に着くはずである。ただ、その間にはバスは通っていないのも知っている。つまりは、そこに行くにはここで車を捕まえねばならないのだが、いくら白タクが多いこのモンゴルと言えども、こんな何も無いところで白タクは拾えるのだろうか?

バスを見送り見渡すが、T字路なのでなんか建物くらいはあるだろうと思っていたが、あるのはホスタイ国立公園を示す看板のみ。この幹線道路を駆け抜ける車は無視して、ここでスピードを落としてこの道を曲がる車か、乗客を拾おうとしている白タク狙いだ。モンゴルのヒッチハイクはグッドサインを掲げるのではなく、手をまっすぐ腰くらいの高さまで上げるだけである。
幹線道路だけあり、交通量は多い。ただ、通り過ぎる車がほとんど。数台、この角を曲がる車があったので呼び止めたが、あっさり断られた。雲が太陽にかかり日が陰っている時はイイが、太陽が出ると暑い。ん、頑張るしかない。

30分くらいし、また1台のプリウスに断られたが、その車が戻ってきた。当然、善意でなくビジネス前提である。車代は、距離的には13km程なので20,000Tg程度が妥当だと思うが、ここは完全に売り手市場。しかも、未走路を走るので、私はあまり強気には出れず、向こうの言い値である30,000Tgで手を打つ事にし、そのプリウスの後部座席に乗り込む。
車は草原の中の未舗装道路を進む。私は取り敢えず車に乗れたことに一安心。ホスタイ国立公園へ向かう道は未舗装路というより、草原に付いた轍を辿ると言った方が正しい。かなりの悪路であり、しかも結構な距離があったが、丈夫なトヨタのプリウスは無事、私をホスタイ国立公園のゲートまで送り届けてくれた。
ホスタイ国立公園のゲートにあるリゾート

さぁ、ここで2つ目の関門。最も重要な難関と言ってもいい。ここには大きめの宿泊施設があり、その敷地内には沢山のゲルや3階建ての宿泊施設があるという情報は入手している。が、オンラインでそれを予約する手段がなかった。さて、今晩、予約無しに飛び込みでここに泊まれるだろうか?受付らしき所がないので、事務所みたいな所に入り、"今晩、泊まれないか?"と聞いてみる。すると一言"ある"という返事。神のお告げである。取り敢えず、泊まれる事が決まってホッとする。が、その代金は思ったより高く260,000Tgもする。が、ここも売り手市場。ここに泊まりたかったら飲むしかない。ただ、その料金には朝夕の食事、そして、ここの国立公園への入場料35,000Tgも含まれているとの事。まぁイイだろう。ここには30基以上のゲルがあるが、アサインされたのは事務所に一番近い1番のゲル。取り敢えず、その中に入り荷物を置く。

幹線道路からここまで来ることが心配事項の1つ目、2つ目がここで泊まれるかだったが、3つ目の心配事項が、この国立公園内を巡る方法。国立公園内は広く50,000ヘクタールもあるそうで、さすがに車無しでココを巡るのは厳しい。事前にネットで調べてもそれに関連する情報は何もなかったのだが、この事務所で聞いた所、乗り合いはなく、チャーターベースであり、コースがあるわけではなく、kmいくらという形らしい。ただし、ここから一番近いパーキングエリアまで往復しても30kmくらいあり、単純計算しても200,000Tg近くはかかるとの事。それは高過ぎる。すると、"安くしたかったら、車1台いくらなので、シェア相手を探すしかない"と言われた。んー、困った。

取り敢えず、この難題を忘れるために、このリゾートのゲート近くにあるインフォメーションセンターを覗く。大きくはないがこの国立公園内で見られる動物や鳥の写真などが数々展示されている他、剥製もある。ただ、高いお金を払って車をチャーターするか否かという事で頭がいっぱいで、気はそぞろ。集中して見れない。
ゲートに戻って、よくよく人の動きを観察してみると、ここにはドライバー付きの4WD車で来ている人が多く、そのまま国立公園内に入って行く。つまりは、ウランバートルからの単純往復ツアーや周遊ツアーの一環として来ているのだ。個人で来ているような奇特な人は私以外見かけない。つまり、相棒を探すのは困難と判断。

で、ここでは乗馬というオプションも考えていたが、西の空はぶ厚い雲で覆われていて、なんだか気が進まない。と。思ったら、空がゴロゴロ鳴り出した。そして、雨の臭いがして降り出す。モンゴルに来て、始めての雨だ。一気に涼しくなったが、周りの雲の形はっきりしており、完全な通り雨で、30分もすれば上がった。
ディナー、シャワー、そして寝る

結局、ここに着いてから何もしないまま時が流れた。もう19:00である。お昼の量が結構あったからか、あまりお腹が減っていないが、19:00から始まっているディナーを食べにこの宿泊施設のレストランへ行く。ツアーでもよく利用されるらしく、立派なレストランである。で、一人なのに、長テーブルのお誕生席に案内された。最初におしぼりが配られる。そして、パンが2つ。そのパンには手を出さないでおく。次は生サラダ。ん、コース料理か。モンゴルに来て、普段より野菜を食べてるぞ。メインはチキンの煮込みに白米。私が夜はライスを食べたいのをよく知っていらっしゃる。チキンはちょいとピリ辛で美味い。ただ、さすが量が多いので残念ながら少し残す。最後にはデザートまである。カップに入ったヨーグルトだが、さすが乳製品の国。美味しい。

食後、レストランがある建物の半地下にあるシャワー室にシャワーを浴びに行く。トイレと横並びだが内部はキレイ。ただし、アメニティは何もなし。さて、今日のサーモスのお湯は果たして右か左かだが、やはりノーマル、左がお湯でした。ここは湯量も十分で、しっかりシャワーを浴びれサッパリして気持ち良かった。
ゲルに戻る途中、見ると西の空には雲があるものの薄日が差している。ただ、上空には雲が多め。これだと23:00頃まで待ってもどうかわからないので、早々に今晩の星景は諦め。

ここのゲルだか、大きさは昨晩までより少し広いくらいだが、ベッドの数は3つ。家具もあり、その装飾はいかにもモンゴルっぽくてイイ感じ。そして、なんと言っても、昨日までとは違うのが、暖炉が付いており、薪も横に置いてある。つまりは、夜はもっと寒くなるのだろうか?これを使うと一酸化炭素中毒が心配だと思ってよくよく見ると、煙突が繋がってない。雨が降ってから半袖だと少し肌寒く感じる様になったが、やはり今は一番暑い時期。さすがに暖炉は不要なのだな。
今日は、賭けに出た一日だったが、ここホスタイ国立公園に来るまでは順調に行ったと言ってイイ。ただ、ここに着き泊まることが決まってからは、時間の使い方がもったいなかった。明日は、せっかくここまで来たんだし、少しばかり、奮発して楽しもう。(今晩のここの宿も奮発してるけど…)さぁ、まだ21:00過ぎだが、とっとと寝よう。
