歴史は「成人向けコンテンツ」である|宮崎市定先生を慕って―「大唐帝国 中国の中世」(序)
__国語、英語、歴史、数学などの諸教科。
__高校生以前、授業で学んだことは、塩なしで作られる料理のよう。
社会人になってから、「無塩」だった理由を理解できたような気がした。
国語(特に古文と漢文)と歴史の真の姿は、「成人向けコンテンツ」である。
だけど、それをお子様に教えるわけにもいかず、無菌室のセンセイでは教えられるはずもない。
結果、試験に出題しやすい、アホでも暗記でどうにかできること__語彙力、文法、悪文読解や制度や文化ばかりが教科書には列挙される。
非常に残念なことである。
宮崎市定先生の著書「大唐帝国 中国の中世」を主なネタ元として、以下のようなインデックスを作ってみた。
後漢=中国版「古代ローマ帝国・終わりの始まり」
若死に皇帝続出のせいで、凋落していく古代帝国。
前漢では庶民の娘を嫁にして、生命力旺盛だった。
政治的配慮なのか、貴族の嫁ばかり迎え、繁殖力が低下。
そのせいなのか、短命皇帝だらけに。
幼稚園児に皇帝は務まらないから、母ちゃんの一族が出しゃばる。
成長した皇帝と取り巻き(宦官)が、母ちゃんの一族とバトル。
両者とも共倒れした。
最後の皇帝は「献帝」。
文字通り、国を魏に「献じた」。
三国=中国版「軍人皇帝時代の開始」
(1)魏
三国志演義の最大の被害者。
関羽や張飛程度の将軍は掃いて捨てるほど居たのに……。
三国志演義ではしょっちゅう万単位で兵士が死んでいる。
なのに、いつの間にか兵士の数が回復している。
恐らく栽培マンであろう。
蜀を併せた二年後、西晋に政権を強奪された。
形式上は、国を西晋に禅譲したことになっている。
(2)蜀
三国志演義の贔屓の引き倒し。
実態は中原を逐われた賊徒の群れである。
自称「漢」だけど、誰も気にしない。
やる気だけはあった。
いや、やる気がなくなると滅ぶからだ。
諸葛亮はそれを知っていたのでしょう。
彼の死後、実際そのようになって、魏に滅ぼされた。
(3)呉
三国志演義の道化。
見せ場は赤壁の戦いだけ。
あとは関羽を殺し、劉備を大破して、蜀賊の力を弱め、結果的に西晋への道を開いた功労者。
三国鼎立を破壊した大戦犯。
西晋=「はかなき統一」
内乱で爆発四散するための天下統一。
__すべては「八王の乱」の前振りだった!
傭兵として、安くこき使っていた異民族から裏切られ、中華文明を泥沼に叩き込んだ。
__そして彼らははるか東の江南、かつて滅ぼした呉の旧領に落ち延び、再び晋の旗を掲げるのだったが……。
五胡十六国=中国版「軍人皇帝時代の本格的な始まり」
西晋が「八王の乱」でボロボロのとき、その内乱の尖兵だった異民族が蜂起!
華北はもう滅茶苦茶!__そうとしか言いようのないカオス。
僭称皇帝、すべからく死すべし!
東晋=中国版「東ローマ帝国①」
キーワードは「ザ・無気力」。
三国時代の蜀賊にも劣る覇気の無さ。
まったく人気のない王朝。
夫人に「年増は要らねえ」と言ったばかりに、女どもから布団で蒸し殺された皇帝が出た。
南朝=中国版「東ローマ帝国」王朝更迭
文明人を気どるが、正直、北朝の皇帝と区別がつかない。
宮崎先生は「三国時代以来の異民族傭兵の成れの果てが、皇帝になったからじゃねえの?」みたいなことを言われていた。
(1)劉宋=中国版「東ローマ帝国②」
東晋の後継国家。
キーワードは「リアル・マクベス前編」。
後半は暴君祭り。
小学生くらいの年齢のプリンスに「二度と王家に生れたくない」と言わしめた。
(2)南斉=中国版「東ローマ帝国③」
(1)の後継王朝。
キーワードは「リアル・マクベス後編」。
後半は狂主祭り。
父親の葬式で、冠を落とした禿頭を見て、ツボにはまり大笑いする皇帝が出た。
コイツは絶世の美少女と、純愛(笑)に狂って暗殺されたとさ。
(3)梁=中国版「東ローマ帝国④」
(2)の後継王朝。
キーワードは「仏教の廃課金皇帝」と「宇宙大将軍」!
実質、初代だけの王朝。
まさしく「命長くて恥多し」を体現した、餓死した初代の老帝でした。
宇宙大将軍とやらにより、南朝最高の繁栄は文字通り灰燼に。
後は帝位をめぐって内乱になって、ドサクサで国の半分近くを西魏に食われた。
(4)陳=中国版「東ローマ帝国⑤」
(3)の後継王朝。
キーワードは「存在の耐えられない軽さ」。
華北と四川を制した北朝から見て、初めから掃討対象扱い。
まるで林檎が地に落ちるように、隋に併合されましたとさ。
北朝=中国版「フランク王国」王朝更迭
儒教倫理に反するからという、その一点だけで野蛮人扱いされた。
……でも、儒教必読の書には、「夏姫」という、もはやポルノじみた妖しき情痴の美女が登場!
彼女ひとり、同じ時期に何人もの男を、まさしく股間に弄す!
……正直、儒徒って言行不一致だよね!
ぶっちゃけ、血脈断絶防止を口実に、男限定で淫乱を奨励してる(笑)。
断絶防止なら母系でもええやろ!
いかん、脱線した。
(1)北魏=中国版「メロヴィング朝のフランク王国」
華北の「五胡十六国」というカオス、それを最終的に収拾した王朝。
劉宋建国から20年経たないうちに、華北を統一した。
父殺し(=夫殺し)、母殺し(=妻殺し)、子殺し、虐殺、酒乱、淫乱と薬物中毒に明け暮れる、野蛮から文明への過渡期に現れる変態国家。
しかし、真実を書いた人が族滅され、本当の有様は記録なし。
……その実態は、北斉の項で明らかになるでしょう。
正直、北斉よりも北魏の方がまだマシです。
暴力の応酬が鮮明だから。
辺境に置き去りにされ、奴隷待遇にまで落とされた軍人が蜂起し、国は崩壊、東西に分裂した。
分裂の結果、東魏(北斉)、西魏(北周)そして南朝による、「第二次三国時代」となった。
(2)東魏・北斉=中国版「ソドムとゴモラ」
北魏の文明化路線を引き継いで、酒乱、淫乱と惑乱に明け暮れた。
__虐殺と粛清の自壊国家。
小説の吸血鬼を彷彿とさせる、酒乱の殺人皇帝は、かつての英雄天子だった……。
川魚、腹より出でる、人の爪。
甥を殺し、兄嫁をレイプし、自分の嫁は不倫に狂う。
登場人物のイケメン率すごいのに。
どうしてこうなった?!
北魏から引き続き変態社会だったからさ!
しかも北魏の皇族が持っていた野蛮さは、文明化によって牙を抜かれてしまった。
颶風のような狂気の前に、怯えながら頭を垂れて耐えて待つのみ……。
「私以外の誰かのところに行ってくれ」と祈りながら。
(3)西魏・北周~蝶が羽化するまでの蛹(さなぎ)
北魏の文明化政策に反発した連中が、民族主義・復古主義を掲げ建国。
イデオロギー先行の胡散臭い国家。
なんか、かつての共産主義国家みたいだ。
中国の「ソドムとゴモラ」を討ち滅ぼし、かつての三国時代の魏と蜀を併せた領域を形成。
すなわち、西晋スタート時の領域を支配。
ここから隋唐帝国が産まれた。
隋=「秦の再来」
天下統一、大土木事業、海外遠征と人民酷使の果て、叛乱の渦に飲まれ、国は崩壊してしまった。
では、隋滅亡の後、漢の再来が来たのか?
唐=中国版「カロリング朝フランク王国」
漢の再来と言うより……西ローマ帝国を復興したフランク王国。
だが、実質的な中華統一は、建国されてから約140年後、安史の乱によって破れ、事実上の分裂状態に……。
フランク王国がヴェルダン条約とメルセン条約で分裂していったように。
「無辜の民 首チョンパして 賊の首」
晩唐の叛乱祭りでは、官軍の手でこれが行われていた。
五代十国=中国版「大空位時代」
中原王朝の命、鴻毛より軽し。
軍人どもは勝手に殺しあえばいい。
たとえ微力だとしても、我々文人が、民を救わねばならぬ。
現実から逃げることなかれ。
お釈迦様でも菩薩でも、侵略者の暴虐を止めることはできない。
それを出来るのは、侵略者の君主だけ。
侵略者に慈悲を乞うことを、躊躇するなかれ。
(1)後梁
黄巣の乱のどさくさに紛れ、唐を内部から食い散らかして乗っ取った。
でもね、それでお仕舞い。
取柄は門閥貴族虐殺だけ(笑)!
「彼の子は英雄、俺の子は犬か豚」
その犬か豚に殺された建国者。
ダメだ、これは。
そして、「英雄」によって滅ぼされた。
(2)後唐
トルコ族①。
跋扈する「鴉軍」__黒コーデの騎兵軍団。
闘いには無類の強さを誇る。
それを指揮する「英雄」__彼マイナス戦いイコール__ゼロ。
もともと、昔の中国の官軍は賊軍よりも悪質だったけど、こいつらはさらに酷い。
まぁ、同士討ちして、少々の小康状態の後、国は速やかに空中分解。
これが後晋、後漢そして後周と繰り返される。
(3)後晋
トルコ族②
元凶たる売国奴。
試験によく出る「燕雲十六州」を、異民族にくれてやったのは、コイツら。
自己の保身のために、国を売った輩共。
……でも、異民族に頭を下げることに耐えられなくなり、舐めた真似をして、返り討ちにあった。
そして、官民諸共、次のような目に遭わされた。
「打草穀(だそうこく)……人を殺すこと、稲を刈るが如し」
(4)後漢
トルコ族③
「あれ?居たの?」
わずか四年で滅亡(笑)。
残党は北に逃れ、「打草穀」の侵略者の手先になった。
(5)後周
トルコ族④?
五代になってからこっち、皇帝は統治の責任を果たさない者だらけ。
その暗闇のなか、出来ることを為してきた文人政治家達。
__遂に曙光が指す。
中国版の織田信長が登場。
そこに「打草穀」の怨敵――契丹(きったん)が襲来。
老いた文人政治家筆頭格の慎重論を斥け、彼は親征し契丹を打ち破った。
そして、脱税し国富をかすめる葬礼屋に、相応の報いを。
「お釈迦様は衆生済度のためならば、惜しみなく我が身を差し出すと聞く。銅でできた仏像など、鋳潰して銭としてこの世の役に立てた方が、お釈迦様の意に適う!」
だが、彼の頭上に統一皇帝の栄冠は輝かなかった。
インデックスの順番を墨守して書き進めると、非常にツラいということを、経験的に知っているので、取っつきやすいところから書いていく。
まずは、R18要素が最も濃厚な東魏・北斉から書いてみようかなと。
とっつきやすい北斉のお話は、田中芳樹氏の著書「蘭陵王」ですね。
