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真正面の彼

何度もカバンからスマホを取り出す
通知は無い
また、カバンに入れる
少し上を向いて小さなため息をつく

真夏
夜の待ち合わせ
時間と、外の明るさと、暑さとがチグハグ
暑すぎる
明る過ぎる
これじゃ、まるで昼間と一緒だ
嫌だ、嫌だ

大きい道路沿いのお店
なんてことない居酒屋の前
私は居心地が悪くなってきて、少しだけ移動して
またスマホを取り出す
そして、何度目かの同じことをする

隣で待ち合わせをしていた大学生くらいの子は
合流して、お店のドアを開けて入っていく
中からエアコンの涼しい風が頬に当たる
息を吸い込んで
私は、またお店を背中に向けて上を向く
暑い暑い、本当に
手の甲で額の汗を拭う

カバンの中でスマホが細かく揺れる
だけど私は一瞬気づいていない振りをする
何で?
自分で少し笑って
スマホを見る

もう着きます
暑いので先にお店入っていて下さいね


私は、ハンドタオルを出してうちわがわりにあおぐ、あー暑い

もう着くならここで待っていよう
メッセージに返事はせず
スマホを握ったまま、駅の方をやっと見る

私は、手を振る
あー暑い
早く
涼しいお店に入らせて





今日は、濃い紺のスーツの彼と私
カウンターに通されて
私は、とりあえず店の中を見渡す


知っている人いないよね
いたっていいんだけど
いない方がいい
彼は何も気にせず、メニューに真っ直ぐ視線を落とす
なんだ、私何でこんなにキョロキョロしてるのよ
私が選んだ、普通の居酒屋





とりあえず乾杯
かるくグラスを合わせる

ぎこちない乾杯

「何飲みますか?」

敬語の年齢差など無いのに
彼は、同い年だし
職場も違うから
敬語なんていらないのに
ただ、出会うのは2回目
二人きりで会うのは初めて
まぁ、敬語だよな

私は
「なんか、ごめんなさい、お忙しいのに
あの、変なことになっちゃって」

「大丈夫ですよ」と彼はさらっとビールを飲み干す

ジョッキを置きながら

「いや、びっくりしたけど嬉しかったですよ
飲むの好きなんで、時間が合えば全然」

「なら、よかったんですけど」

あーはずかしい
あいつ、ほんま冗談のわかんないヤツ
男友だちの顔を浮かべて、私も一杯目のビールを飲み干す





少し前、2週間ほど前か
別の店で、同僚たちと飲んでいる男友だちにたまたま出会った
私と私の女友達とすこしだけ、合流してすぐまた別れて飲んでいたんだ
その時、男友だちと一緒にいたのが
いま、私の横にいる彼だ
同僚らしいから、身分はしっかりしてると私はそんなことをふと思った

軽くパーマを当てて、日に焼けて、黒いフレームのメガネ
その日はスーツだった
私たちの、年代の中ではいわゆる イケオジって言われてそうな雰囲気のある人だった
お腹も出てないし、変な飲み方もしていない
その時はあまり、話をしなかった
静かに飲んでいた印象だった
何にも考えてなかった、私

あの日は合流してすこし盛り上がって
大人しく解散した
私は、ほとんど元々の知り合いの男友だちとばっか話していた
次の日、ご馳走様になったから、男友だちにお礼のメッセージをした時に

あいつが、かわいいって言ってたよ

そうメッセージに書いてあった

押さえてもニヤけてくる
かわいいって言葉が久しぶりに自分に向けられたかもしれない
私は、あの晩のこと思い出そうとするけど
真正面に座っていた彼とはほとんど話ししてなくて
なんだか、損した気持ちになってきた

何度も考える
私、なに着てたっけ
かわいい…って
このうれしい気持ちを、どこにもだせず私は、やっぱり一人でニヤけるしかなかった

私は


単純な私は


一気に彼のことが気になってしまった



そして、男友だちに
私もかっこいいって思ってたまた飲みたいって伝えて

と、さっきまで思ってもいなかったこと
タップしていたんだ

男友だちは普段は私との約束とか、お願いとか
すぐ忘れる癖に
この思いつきのメッセージだけはなぜか律儀に彼に伝えてくれた
私は、すこし混乱した





金曜日の居酒屋はどんどん賑やかになってくる
窓の外はすこし、暗くてブルーの薄い布を被さられたように染まってきた

3回目の乾杯

話は合う、お互いが合わせられる、それはやっぱりそこそこのお酒の席を知ってきていた知恵で
また
こういう時、同い年っていうだけで
あと、共通の友達がいるだけで
いくらでも、それはビールのあてにもなる

一瞬の間が何度か
料理をとる時たまたま太ももが触れたり
手が触れたり
この前と違って彼は今日は隣にいる
いつもの私の隣にいる人と違うから
距離感が分からないや

私はビールの水滴をなぞりながら、メニューを見る
メニューと、彼の向こう側のポスターと
彼の顔とを

ふと、目が合う




そしてずっときいてなかった事を
彼の指先を見ながらきいてみる
わざと、敬語をやめてみる

「結婚、してないの?」

彼は、残りのビールを飲み込んで



「してた」

と笑う
私は聞かれない、私のことは指を見れば誰もが分かるから



「じゃ、彼女は?」

と、自分できいてから、自分の顔が熱くなるのが
わかって手を振りながら

「別に変な意味じゃないよ、聞いただけ聞いただけ」

って何回も言う
自分でしつこいと思うくらいに


彼は


顔を少し傾けて





「内緒」




と言って席をたつ


ビールをもう一杯頼んで




外はまだ、最後までは暗くならない
私は隠れられない 

私は、ビールにするか
ハイボールにするか


もうウーロン茶にするか


頬杖ついてメニューをもう一回見る







やーこれいいよね?
お、と、な、って感じしませんか?
もう暑くて暑くて
仕事中、ビール飲んだら美味いだろなぁ
と思って書いた
いや、そんなにお酒強くないです
好きなだけ
飲んでふわふわが好き
けど、今夜は
暑いのでビールでなく、お茶とスポドリ

飲みます


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