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クライアントに嫌われるPMの共通点——『あなたとは仕事したくない』と言われた日のこと

✍️ プロローグ|その一言は、会議室の廊下で言われた

「正直に言います。あなたとは、もう仕事したくないんです」

プロジェクトの中盤、会議室を出た廊下でクライアントの担当者からそう言われた。

頭が真っ白になった。プロジェクトは技術的には順調だった。スケジュールも守っていた。品質にも問題はなかった。でも相手は「仕事したくない」と言っていた。

あのとき私は、何かがズレていることは感じていた。でも何がズレているのか、分かっていなかった。

この記事では、その「ズレ」の正体を書く。クライアントに嫌われるPMには、技術力や経験年数とは無関係の、共通したパターンがある。そして、それを変えたときに何が起きたかも。

✍️ 第1章|専門用語で「賢さ」を証明しようとしていた

あのころの私は、会議でよく専門用語を使っていた。

「フィジビリティスタディの結果を踏まえると、アーキテクチャのスケーラビリティに懸念があります。レイテンシの観点からもボトルネックになりうるので、フォールバック戦略を含めたコンティンジェンシープランの策定が急務かと」

クライアントの担当者は、うなずきながら「はあ……」と言っていた。

私は「説明した」つもりだった。でも相手は「置いてきぼりにされた」と感じていた。

後から分かったことがある。私は専門用語を使うことで、無意識に「自分はプロだ」と証明しようとしていた。相手に伝えるためではなく、自分の立場を守るために言葉を使っていた。

言葉は「伝えるための道具」だ。「賢さを示すための武器」ではない。

信頼されるPMは、どんな複雑な技術的課題も、クライアントが理解できる言葉で話す。「中学生に説明できるか」が私の今の基準だ。

✍️ 第2章|相手の感情を、完全に無視していた

「あなたとは仕事したくない」と言われた本当の理由が、後になって分かった。

そのクライアントの担当者は、社内で相当なプレッシャーを受けていた。このプロジェクトを通じて、自分の部署の仕事のやり方を変えなければならなかった。現場からの反発もあった。上司からの期待も重かった。

私はそれを知っていた。でも、気にしていなかった。

毎週の報告で私が伝えていたのは「進捗」と「課題」と「リスク」だけだった。担当者がどれだけストレスを抱えているか、どれだけ社内調整に消耗しているか——そこに一切触れなかった。

ある日、絶大な信頼を得ているPMの報告会議を横で見る機会があった。そのPMは技術的な話をする前に、まずこう言った。「最近、社内調整が大変そうですね。今週はどうでしたか?」

担当者の顔が、ほぐれた。

プロジェクトはビジネスの話だ。でもプロジェクトを動かしているのは人間だ。相手が「分かってもらえている」と感じるかどうかが、信頼の根本にある。

✍️ 第3章|上長が現場を売った——組織の問題が信頼を壊す

これは自分の失敗ではなく、組織の構造が引き起こした信頼崩壊の話だ。

プロジェクトの上長がクライアントの役員と会食を持った。その場で、現場が「まだ合意していない」ことを「進めます」と約束して帰ってきた。

翌朝、私は初めてそれを知った。

現場は混乱した。クライアントの役員は「もう決まった話」だと思っている。でも技術的に実現できるか、まだ検証中だった。工数も見積もっていなかった。

私はクライアントの担当者に「実は……」と説明しなければならなかった。担当者の顔に「あなたたちの会社は、何を言っているのか」という不信感が広がった。

上長が「いい顔をしたい」という理由で現場を売る——これはPM個人の問題ではなく、組織の問題だ。でもクライアントにとっては「その会社全体」への不信になる。

このとき私が学んだのは、「上長の言動も含めてリスク管理する」という視点だ。 上長が何を話しているか、どんな約束をしているかを把握しておくことが、PM自身を守ることになる。

✍️ 第4章|信頼されるPMに変わった、たった一つの転換点

「あなたとは仕事したくない」と言われてから、私は変わろうとした。

最初は「もっと丁寧に報告しよう」「もっと正確な情報を出そう」と考えた。でもそれは違った。

転換点になったのは、あるベテランPMに言われた一言だ。「クライアントはプロジェクトの成功を買っているんじゃない。安心を買っているんだ。

それから私が変えたことは、報告の「内容」ではなく「順番」だった。

以前は「課題→原因→対応策→スケジュールへの影響」の順で話していた。変えた後は「今プロジェクトはコントロール下にあります→懸念点は一つあります→すでに対応中です→来週には見通しが立ちます」の順で話すようにした。

同じ情報だ。でも受け取る側の感情がまるで違う。

最初に「コントロール下にある」と伝えることで、相手はまず安心する。安心した状態で課題を聞けば、「問題が起きた」ではなく「PMが管理している」と受け取れる。

信頼は、情報量では作れない。「この人といれば大丈夫だ」という感覚が、信頼の正体だ。

✍️ エピローグ|技術力より先に、「人として信頼される」

クライアントに嫌われるPMと、信頼されるPMの差は、技術力でも経験年数でもない。

相手の言葉を「その人の立場と感情ごと」受け取れるかどうか。伝えるべきことを「相手が理解できる言葉」で話せるかどうか。悪いニュースを「コントロール下にある安心感」とともに届けられるかどうか。

これらはどれも、明日から変えられることだ。

「あなたとは仕事したくない」と言われた日から、私は変わった。完璧ではない。今でも失敗する。でも「相手が今、何を感じているか」を意識する習慣は、あの日の廊下で始まった。

あの言葉をくれた担当者に、今は感謝している。

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