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=LOVE(イコラブ)が8年で証明したこと——指原莉乃のプロジェクトマネジメント論、第2章

プロローグ|「あなたたちは絶対に売れません」から始まったプロジェクト

2017年9月6日。

デビューシングル「=LOVE」のMVが公開された。

冒頭に流れるのは、プロデューサー・指原莉乃の言葉だ。

「あなたたちは絶対に売れません」

これはメンバーへの否定ではない。アイドル業界という過酷な市場への、リアルな現状認識だ。PMとして言い換えるなら「リスクを正直に共有した上で、それでもやるかを確認したキックオフ宣言」だ。

指原莉乃のプロデュースにより、2017年4月29日に誕生した=LOVE。 あれから8年。2026年現在も10人体制で活動を続け、アリーナツアーを回り、レコード大賞の舞台にも立った。

「絶対に売れない」と言われたグループが、なぜここまで来られたのか。PMの視点で=LOVEの8年間を解剖する。

第1章|グループ名に込めたPMの哲学——「何のためのプロジェクトか」を最初に定義する

「アイドルとはファンに愛されなければいけない。そしてアイドルという仕事も自分が愛さなければいけない」——この想いを込めて、指原が命名したグループ名が「=LOVE」だ。 

PMBOKの「プロジェクト憲章」という概念がある。プロジェクトを始める前に「何のためにこのプロジェクトをやるのか」を一文で定義するドキュメントだ。

指原がやったことはまさにこれだ。グループ名そのものに「プロジェクトの存在意義」を刻んだ。

メンバーが迷ったとき、ファンとの関係が難しくなったとき、グループ名を見れば原点に戻れる。「=LOVE」という名前は、8年間ブレることなくグループの北極星であり続けた。

PMとしての教訓:プロジェクトの目的を「誰もが一言で言えるレベル」まで磨くことが、長期プロジェクトの最初の仕事だ。

第2章|「声優アイドル」という差別化戦略——レッドオーシャンで戦わない設計

2017年当時、アイドル戦国時代は最高潮だった。AKB48グループ、坂道シリーズ、ハロプロ——大手が市場を支配する中で、新人グループが生き残る余地はほぼなかった。

指原が選んだのは「真っ向勝負しない」という戦略だ。

代々木アニメーション学院と共同でオーディションを開催し、声優教育を受けた「声優アイドル」という新しいカテゴリを作った。

「アイドル市場」ではなく「声優アイドル市場」という新しい土俵を定義したのだ。

PMとして言えばこれは「スコープの再定義」だ。競合が多い領域で戦うのではなく、自分たちが有利に戦える領域を新たに作る。

選抜制は採らず全員歌唱を基本とし、王道アイドルソングに留まらずダーク系やフェミニン系楽曲など多彩な持ち歌を披露するという方針も、この差別化戦略の一環だ。「全員主役」という設計が、ファン一人ひとりに「自分だけの推し」を見つけさせる仕組みになっている。

PMとしての教訓:強い競合がいる市場で戦うより、自分たちが有利に戦える「新しい定義」を作ることの方が、長期的な生存につながる。

第3章|センター交代という「人事の勇気」——髙松瞳の決断とプロデューサーの応答

髙松瞳は2019年の一時活動休止期間を除き、デビュー時から10thシングルまでセンターを務めていた。しかし2022年5月発売の11thシングルで、指原プロデューサーに自らセンター降板を願い出た。 

その理由が印象的だ。

「今のイコラブは、私がセンターじゃない方がもっと上を目指せるんじゃないか」「私がセンターじゃないイコラブを見てみたい」 と髙松は語った。

PMとして、この場面に鳥肌が立った。

5年間センターを務めたエースが「自分を外した方がチームは強くなる」と自ら申し出る。これは「自己犠牲」ではなく「プロジェクト全体最適の判断」だ。

そして指原がこの申し出を受け入れたことも重要だ。「エースを外す」という決断は、短期的には批判を受けるリスクがある。それでも「グループの成長」を優先した。

PMBOKで言う「チームのパフォーマンスを最大化するリソース管理」の最高の実例だ。個人の最適より全体の最適を選ぶ——これができる組織は強い。

PMとしての教訓:「誰がやるか」より「チームが最大の成果を出すにはどう配置するか」を優先できるリーダーと、それを受け入れられるメンバーがいるチームは長期的に強い。

第4章|リーダー指名という「権限委譲」——山本杏奈への選択

山本杏奈は2ndシングルの発売記念イベントで、指原さんから指名され=LOVEのリーダーになった。「新規ファンの窓口になる」という理由から、SHOWROOMの配信を2017年8月から2023年2月までの約5年間、毎日配信を行った。 

毎日配信5年間。これはプロジェクトへのコミットメントとして並外れている。

指原がリーダーに山本を選んだ理由と、山本がその期待に5年間応え続けた事実は、PMとして深く考えさせられる。

リーダーに必要なのは「カリスマ性」ではない。「毎日続けられる誠実さ」と「新規ファンへの誠意」だ。指原はその資質を見抜いてリーダーに指名した。

PMとして「誰にリーダーを任せるか」の判断は、プロジェクトの文化を決定する。「実力トップ」を選ぶか、「チームをつなぐ力がある人」を選ぶか——指原の選択は後者だった。

PMとしての教訓:リーダーの条件は「最も優秀であること」ではなく「チームの向かう方向を体現し続けられること」だ。

第5章|8年間で積み上げたもの——「続けること」がブランドになる

2025年12月30日、第67回輝く!日本レコード大賞の舞台に立った。2026年1月29日からは日本テレビでレギュラー番組「イコラブコッコッコー!!」もスタートした。 

「絶対に売れない」と言われたグループが、8年でここまで来た。

PMとして、この軌跡から学べる最大の教訓は「継続こそがブランドになる」ということだ。

短期的な話題性を狙うグループは多い。でも8年間、一定のクオリティを保ちながら活動を続けることは、想像以上に難しい。メンバーの卒業、市場の変化、コロナ禍——様々な逆風の中で、=LOVEは走り続けた。

課題として「乏しいメディア露出」が指摘されていた時期もあった。それでも地道にライブを重ね、ファンとの関係を積み上げ続けた。

PMBOKで「プロジェクトの成功」は「スコープ・コスト・スケジュール通りに完了すること」と定義されることが多い。でも=LOVEが証明したのは「長期的に価値を生み出し続けること」こそが本当の成功だということだ。

PMとしての教訓:短期の数字より、長期の信頼を積み上げることを選んだプロジェクトだけが、8年後も走り続けられる。

エピローグ|指原莉乃が作ろうとしているもの

=LOVEの8年間を振り返って、一つの問いが頭に浮かぶ。

指原莉乃は「売れるアイドル」を作りたかったのだろうか。

私はそうは思わない。

グループ名の定義、声優アイドルという差別化、センター交代の決断、リーダー指名の哲学——これらを見ると、指原が作ろうとしているのは「長く愛されるチーム」だということがわかる。

PMとして20年働いてきて、「成功するプロジェクト」と「失敗するプロジェクト」の違いはここにあると確信している。

「数字を出すプロジェクト」と「長く続くプロジェクト」は、設計の思想が最初から違う。

=LOVEはデビュー初日から「長く続く」ために設計されたプロジェクトだった。

その証拠が、8年後の今も続く活動だ。

©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090

前作:
指原莉乃から学んだマネジメント論——そして=LOVEが国立競技場に辿り着いた理由
→ https://note.com/quiet_emu2080/n/n6f7b6c4c7c67
次回:≠ME(ノイミー)が証明した「2番手の戦略論」——姉妹グループから学ぶPMの組織設計 
→ https://note.com/quiet_emu2080/n/n4e15cbbb4402

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