🌸経営未来手帳・第187号金融庁「地域金融力強化プラン」と経営者の成長―銀行が「貸す人」から「企業を育てる人」へ変わる日
🌸経営未来手帳・第187号
金融庁「地域金融力強化プラン」と経営者の成長―銀行が「貸す人」から「企業を育てる人」へ変わる日
(執筆:安村明史/ビジネス能力開発株式会社)
月曜は、経営の本質を問う、骨太な経営者の在り方などを、一緒に読み取っていきます。組織や経営者の在り方を学ぶ時間です。
■はじめに
最近、地方銀行や信用金庫の決算を見ると、金利の上昇もあり、収益は持ち直しているように見えます。企業の資金需要も、足元では増加傾向にあると言われています。
それでも金融庁は、2025年12月に「地域金融力強化プラン」を示しました。なぜ、銀行の業績が改善している時に、金融の役割を変えようとしているのでしょうか。
理由は単純です。いまが良くても、人口と企業数が減れば、地域全体の借入需要は長い目で見て縮小します。銀行も、これまでと同じように融資を続けるだけでは、自らの未来を守れません。
これは銀行だけの話ではありません。地域企業の経営者にとっても、「銀行との付き合い方」が変わる節目に来ています。
■融資の先にある仕事
地域金融力強化プランの方向を一言で表せば、融資を中心とした金融仲介から、融資を土台にした企業価値向上・課題解決支援へ役割を広げることです。
これまで銀行は、決算書を見て、返済能力を判断し、融資の可否を決める役割が中心でした。これからは、その先まで問われます。
・企業の売上をどう伸ばすのか
・人材不足や後継者問題をどう解決するのか
・DX、販路開拓、事業承継、M&Aをどう支援するのか
・経営改善や事業再生を、どの専門家と進めるのか
つまり、銀行は「いくら貸せるか」を判断するだけでなく、「この会社がどうすれば良くなるか」を経営者と一緒に考える立場へ移ろうとしています。
■銀行員に必要になる五つの力
ここで必要になるのは、金融知識だけではありません。経営者への伴走力です。私は、少なくとも次の五つが重要になると考えています。
・財務の変化から、経営の異変を早く察知する力
・対話を通じて、経営者自身も言葉にできていない課題を引き出す力
・人材、組織、後継者問題を見立てる力
・自分だけで抱えず、適切な専門家につなぐ力
・一度の提案で終わらず、支援後も関わり続ける力
銀行員の仕事は、企業を選別する仕事から、企業の成長可能性を共に探す仕事へ近づいていきます。地域の雇用と産業を守ることが、銀行自身の経営戦略になるからです。
■日本企業は「倒産しなければよい」ではない
もう一つ、経営者が見落としてはいけない変化があります。海外資本による日本企業への投資や買収です。
日本企業には、高い技術、長年の顧客基盤、丁寧に育ててきたブランドがあります。一方で、後継者不足、海外展開の遅れ、利益率や資本効率の改善余地も残されています。海外投資家から見れば、「技術はある。しかし、まだ価値を引き出し切れていない会社」に映ることがあります。
資本を入れ、経営陣を替え、事業を再編し、海外市場へ出せば、企業価値を高められる。そう判断されれば、存続している企業であっても、技術やブランド、経営権が自分たちの手から離れることがあります。
倒産だけを心配していればよい時代ではなくなりました。
■経営者に問われる「守る力」
海外資本を拒絶すればよい、という話ではありません。資本や海外ネットワークを活用することで、会社が大きく成長する可能性もあります。
問題は、外部資本を受け入れた時にも、自社の技術、理念、人材、そして経営の主導権を守れるだけの経営力があるかどうかです。
そのためには、経営者自身が自社の価値を言葉にし、将来の成長像を示し、次の経営者を育てなければなりません。銀行に伴走力が必要なのと同じように、経営者にも「伴走される力」が必要です。助言を受け止め、外部の知恵を使いながら、最後は自分で決める力です。
■編集後記
銀行というと、私はどうしても「雨の日に傘を取り上げる」という昔の表現を思い出します。もちろん、実際の現場はそれほど単純ではありません。
これからは、雨が降る前に空を一緒に見上げ、「この雲なら、今のうちに屋根を直しましょう」と言える銀行が選ばれるのだと思います。経営者もまた、晴れている日に屋根を直す覚悟が必要です。
■今日の問いかけ
あなたの会社は、銀行から「融資先」として見られていますか。それとも、「一緒に育てたい企業」として見られていますか。
■ネコのつぶやき
「お金だけでなく、知恵も貸してくれる銀行なら、ネコも口座をつくりたいにゃ」
■おわりに
銀行は「お金を貸す場所」から、「企業が生き残り、成長するための支援拠点」へ変わろうとしています。
しかし、銀行が変わるのを待つだけでは足りません。経営者も、自社の価値を説明し、課題を開示し、外部の支援を使いこなす力を磨く必要があります。
地域金融の転換は、経営者の成長を促す転換でもあります。組織、人材、後継者、事業承継など、財務だけでは解けない課題についても、静かに伴走しています。
■今日の結論
銀行が企業を育てる時代には、経営者も「育てられる力」と「自ら育つ力」を持とう。
第4弾🌸「初めての方へ|目的別に読む3選」
https://note.com/quiet_gnu5848/n/n2dc0707c09b3
🌸経営未来手帳の編集長が選んだ40選はこちら
─経営者が未来を読むための“構造地図”
https://note.com/quiet_gnu5848/n/n3596a857d755
■感想をぜひお寄せください
yasumura@biz-noukai.com まで。必ずお返事いたします。
■次回7月14日予告
「なぜ、海外企業の営業は日本では『速すぎる』と感じられるのか
―早い・遅いではなく、営業文化の前提が違う」
■安村 明史
経営未来手帳
組織・経営の相談役(静かに伴走する役割)
「疲れた経営者が、少し言葉を預けられる場所として。
―経営者の深夜食堂」
#経営者の深夜食堂
■付録

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