1000万円を貯めるまでに、削ったもの
第2話。
1000万円を貯めるまでに、最初にやったことは、増やすことではなかった。
減らすことだった。
収入を増やす前に、支出を減らした。
投資を考える前に、現金を残した。
資産形成を語る前に、生活費を小さくした。
その順番だった。
削ったもの
昼食代を削った。
コンビニで買う回数を減らした。
外で食べる回数を減らした。
飲み物を買う回数を減らした。
1回の金額は小さい。
ただ、毎日出る。
毎日出るお金は、月額になる。
月額になるお金は、固定費に近くなる。
1日500円でも、20日で10,000円。
1日800円なら、20日で16,000円。
昼食代は、気分の支出に見える。
でも、会社員にとっては勤務日の固定費だった。
服を削った
服も削った。
新しい服を買う回数を減らした。
セールで買うことも減らした。
必要かどうかではなく、持っている服で足りるかを見た。
服を買うと、気分は変わる。
ただ、現金も減る。
欲しい服。
必要な服。
仕事で困らない服。
この3つは違う。
当時は、それを分けていなかった。
欲しいものを、必要なものの顔で買っていた。
1000万円を貯める過程では、そこを止めた。
移動を削った
移動も削った。
なんとなく出かける。
なんとなく電車に乗る。
なんとなく店に入る。
その流れを減らした。
移動すると、お金が出る。
交通費。
食事代。
カフェ代。
ついで買い。
出かけること自体が悪いわけではない。
ただ、目的のない移動は、支出を連れてくる。
予定がある日だけ動く。
買うものが決まっている時だけ店に行く。
会う理由がある時だけ外に出る。
そうすると、支出は減った。
飲み会を削った
飲み会も削った。
全部を断ったわけではない。
ただ、行く理由を見た。
行きたい飲み会。
行った方がよい飲み会。
断りづらいだけの飲み会。
この3つは違う。
会社員は、断りづらい支出がある。
職場。
人間関係。
空気。
付き合い。
でも、全部に払うと、現金は残らない。
1回5,000円。
月4回で20,000円。
年間で240,000円。
数字にすると、ただの気分ではなくなる。
飲み会を減らすと、人間関係も少し薄くなる。
それでも、当時は現金を残す方を選んだ。
見栄を削った
いちばん大きかったのは、見栄だった。
持っていた方がよく見えるもの。
行った方が話せる場所。
知っていた方が恥ずかしくない店。
払えないと思われたくない支出。
そういうものを削った。
見栄は、固定費ではない。
でも、放置すると固定費のように残る。
毎月同じように出ていく。
理由は毎回違う。
でも、根っこは同じ。
見られ方だった。
1000万円を貯めるまでは、見られ方より残る現金を見た。
予定を削った
予定も削った。
休日を埋めることをやめた。
毎週何かを入れることをやめた。
空白を予定として扱った。
予定があると、お金が出る。
移動する。
食べる。
買う。
払う。
予定を減らすと、支出が減る。
同時に、生活は静かになる。
静かになった生活は、最初はつまらなく感じる。
でも、現金は残る。
現金が残ると、焦りが少し減る。
その順番だった。
欲しいと思ったものを削った
欲しいと思ったものも削った。
すぐ買わない。
一晩置く。
1週間置く。
それでも必要なら買う。
この順番にした。
欲しいものは、その場では強い。
でも、時間を置くと弱くなるものが多い。
買わなくても困らないもの。
すでに代用できるもの。
ただ見たから欲しくなったもの。
そういう支出が減った。
買わないことは、我慢ではなく、確認だった。
削ると現金は残る
削ると、現金は残る。
これは事実だった。
昼食代を削る。
服を削る。
移動を削る。
飲み会を削る。
見栄を削る。
予定を削る。
欲しいと思ったものを削る。
すると、月末の現金は増える。
月末の現金が増えると、通帳の残高が増える。
残高が増えると、安心が少し増える。
その繰り返しで、1000万円に近づいた。
特別なことはしていない。
先に出ていくお金を小さくしただけだった。
削りすぎると、生活の輪郭も薄くなる
ただ、削ればいいわけではなかった。
削りすぎると、生活の輪郭も薄くなる。
人に会わなくなる。
新しい場所に行かなくなる。
服を選ばなくなる。
食事が作業になる。
休日が回復だけになる。
現金は残る。
でも、生活が細くなる。
当時は、それに気づくのが遅かった。
1000万円に近づくほど、数字は増えた。
でも、生活の中に残るものは減っていた。
削ってよかったもの
削ってよかったものもある。
見栄。
断りづらいだけの飲み会。
目的のない買い物。
惰性の外食。
なんとなくの移動。
これは削ってよかった。
削っても、生活は壊れなかった。
むしろ、支出の形が見えた。
何に払っていたのか。
なぜ払っていたのか。
払わなくても困らないものは何か。
それが見えた。
削りすぎたもの
削りすぎたものもある。
休む時間。
人に会う時間。
体を整える時間。
気分を戻すための支出。
経験に使うお金。
ここまで削ると、生活が固くなる。
お金は残る。
でも、回復しにくくなる。
会社員は、働き続けることで収入を得る。
働き続けるには、体力と気分も必要になる。
生活費を削ることと、生活を削ることは違う。
ここを混ぜると、あとで苦しくなる。
1000万円は、我慢だけでは残らない
1000万円は、我慢だけで残したわけではない。
我慢もあった。
削ったものも多かった。
でも、それだけでは続かない。
続いた理由は、数字で見たからだった。
毎月いくら入るか。
毎月いくら出るか。
月末にいくら残るか。
年間でいくら残るか。
何かあった時に何か月止まらないか。
この確認を続けた。
感情で削ると、反動が来る。
数字で削ると、戻す場所も分かる。
貯める前に、残る形を作る
1000万円を貯める前に必要だったのは、収入を増やすことだけではなかった。
残る形を作ることだった。
給料が入る。
固定費が出る。
生活費が出る。
予定外の支出が出る。
それでも月末に現金が残る。
この形。
収入が高くても、残る形がなければ増えない。
収入が普通でも、残る形があれば少しずつ増える。
当時は、その単純なことを、削りながら覚えた。
いま振り返って思うこと
1000万円を貯めるまでに、いろいろ削った。
削ってよかったものもある。
削りすぎたものもある。
でも、ひとつだけ残った。
お金は、増やす前に、漏れを止める必要がある。
ただし、生活まで削ってはいけない。
削るのは、見栄。
削るのは、惰性。
削るのは、毎月なんとなく出ていくお金。
残すのは、体力。
残すのは、生活。
残すのは、働き続ける余白。
1000万円は、数字だった。
でも、その数字の裏には、削った生活があった。
記録。
次回予告
次回は、第3話。
会社員収入だけを信じられなくなった日
会社員の給料は強い。
毎月入る。
社会保険もある。
信用もある。
ただ、会社員の立場は固定ではない。
評価。
異動。
体調。
部署。
期待。
人間関係。
収入があるのに、不安が消えなかった理由を記録する。
第1話から読む場合は、1000万円が0になった日。
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