まだいない猫のはなし。|第8話🐾 三毛のサイベリアンと、揺らいだ私のこだわり
先ほどのお店の重たい余韻を吹き消すように、
私たちはそのまま以前訪れたことのあるペットショップへ向かった。
以前来たときにいた、元気いっぱいのアメリカンカール♂は今回も大暴走!
狭い展示ケースの中を、アクロバティックに走り回っている。
あまりの激しさに友人が、
「下の階の騒音被害、ひどそうやな……」
と吹き出した。
ミヌエット♂は、相変わらず爆睡。
ラグドール♀も、こちらに一切興味を示さない。
優雅に毛をなびかせながら、しっぽをフリフリ通り過ぎていった。
……お尻の毛に、小さな💩をくっつけたまま。
「…………。」
二人で言葉を失い、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
そんな賑やかな面々の中に、見慣れない新入りの子がいた。
先日、アメリカンショートヘアがいた場所にちょこんと座っていたのは、三毛のサイベリアン♀。
その子は、私たちが近づくと何度もチラチラとこちらを見てきた。
目が合うと、
「ミャ〜」
と小さく鳴く。
ガラス越しに指を差し出すと、クンクンと鼻を近づけてくる。
私がそっとPOPの陰に隠れてみると、身を乗り出して「どこ行ったの?」というように探すのだ。
(うわ……完全にコミュニケーション取ろうとしてる……!)
その愛くるしさに、友人も完全にノックアウトされていた。
「あかん、お金があったら私がこの子買ってたわ……」
二人でメロメロになりながらガラス越しに遊んでいた、そのときだった。
「サイベリアン、可愛いですよね。抱っこしてみますか?」
笑顔の店員さんが、そっと声をかけてくれた。
(だ、抱っこ……!?)
胸が跳ね上がった。
抱っこしたい。
ものすごく、抱っこしたい。
でも、私の頭の中で警報がカンカンと鳴り響く。
ダメだ。
今この子を腕に抱いて、あの温もりと重みを感じてしまったら最後――
私は理性を失って、そのままこの子を連れて帰ってしまう……!
「あ、あの……!うち、メインクーンを迎える予定でして……! もうブリーダーさんにお願いしているんです……!!」
断るのに必死すぎるあまり、
頼まれてもいないのに自分の誓いをマシンガンのように熱弁してしまった。
急な熱量に、店員さんも一瞬、
「あ、はい……」
と、少し引いていたかもしれない。
でも、本当にそれくらい危険な可愛さだったのだ。
(後半へつづく🐾)
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